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エースコンバット:アサルトホライゾンが駄作だった。

Game

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もがれる翼の断末魔!というキャッチコピーの時点で何だか嫌な予感しかしなかったエースコンバット:アサルトホライゾン(以下ACAH)をプレイした。PS3と360の両機種同時リリースで、PS3版は17万本の大健闘らしい。が、正直落胆したとしか言いようがない。今回の記事では過去シリーズとの比較を行いつつどこがどうガッカリなのかを述べる。

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ACAHは空のACではX2に次ぐ二番目の「現実世界を舞台にしたエースコンバットだ。今回の売りはドッグファイトモード」で、敵の後部に付いて発動すると迫力のドッグファイトが楽しめる。という物。攻撃ヘリブラックホークのチェインガン、AC-130による支援ミッションがあるのも特徴らしい。


<ストーリー>物語の不在

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ACでは時に傭兵として、時に祖国を奪われた兵士として、時に軍事大国の侵略に対抗する独立国家連合軍の兵士としての戦いが描かれて来た。3では同僚、上官との公私入り混じったメッセージのやり取りを行えた。04では中立国家サンサルバシオンの少年から見た「敵国兵士との交流」が描かれ、管制指揮スカイ・アイの「こっちのエースはやつらより速い!交戦を許可する!」に代表される通信によるストーリーの補強が行われた。5の「諦めるな!チョッパー!」というセリフを覚えている人も多いだろう。

だがACAHの芯となる物語は余りに魅力がなく、キャラクターにも何の魅力もない。「アフリカ全土で反政府軍が暴れ、NATO軍がそれの鎮圧を行っていた。突如ロシア軍籍の戦闘機がNATO軍機へ牙を剥き、飛行場は謎の新型爆弾”トリニティ”によって壊滅状態に陥る。時を同じくしてロシアで新ロシア連邦なる組織のクーデターが起こったので、こいつらを叩き潰すことになった。クライマックスはモスクワ大爆発!最終決戦はワシントンDC上空だ!」という物。トムクランシーの名を冠したアクションや某大作FPSなんかで良く見る筋書きだ。またロシアか感満載。今回はスペツナヅを撃たずに済むだけマシと思えという事か。

新型爆弾トリニティも影が薄い。そもそもトリニティにどういう特性があるのかがサッパリだ。作中でドバイへの脅迫にそれが使われるのだが、そもそも核やEMPが実際に爆発しているゲームが有り触れているので何の脅威にも感じない。序盤にトリニティの恐ろしさを思い知らせるイベントとして「光と爆風に圧倒されながらパイロットが手の隙間から爆発を直視する」というのがあるのだが、生身の人間が近くでそうやって見ることのできる程度の爆弾としか思えない。

何やら序盤でUFO挙動してきたSu-35のパイロットがアメリカに恨みを持っているらしいのだが、主人公側が序盤に一回機体を半壊させられるぐらいしか関わりが無いし、NATO軍はクーデターのロシア軍をぺちぺち叩くことを目的に動いてるので互いの思惑が全く交わらない。ロシア側の思惑が何も見えないので、アグレッサー部隊や黄色中隊を知っていると物足りないにもほどがある。

ブリーフィング(出撃にあたっての任務の説明)、デブリーフィング(帰還報告と任務の結果どうなったか)が無い。一応イベントデモはあるのだが、地図の前でジジイが「徹底的にやれば勝てる」と叫び、主人公らしき男と相棒らしき男が「勝つぞ」「勝つぞ」とはしゃぐ程度の物。本来ならイベントデモでロシア大統領が身柄を拘束されたり、ICBM発射基地に不穏な動きがあると衛星で捉えたりするであろう所が全て描写されない。何の為に自分が出向き、どこで、何を攻撃・防衛しに行くのかがさっぱりだ。大統領が身柄を拘束されるどころか大統領になって頭をブチ抜かれる所まで描いた作品に土下座してほしい。

敵の兵力・構成も全く説明されず、突然デモ終了後に機体選択画面が現れ「対地ミッション」などと表示されるだけだ。その癖マルチロール機や攻撃機を持って行っても地上オブジェクトなど出てこず持ってきた爆弾が無駄になるという事まであるので、全く表示が信用ならない。ミッション終了後も自分が何を何機撃墜し、今回のミッションの評価が何なのか。ミッションをやり遂げたことで何が起き、これから敵がどうなりそうなのかという話も全くない。

何やらゲームが始まったので話を聞いてみれば「ロシア大統領が攫われたので護衛の大艦隊を沈めにいこう」等と言う壮大なミッションだったりするので油断ならない。そんなミッションにF-117やA-10を持ってきた暁にはもうメタメタだ。何の面白みもない。

そして極めつけに「無線がNATO軍のものしか聞こえない」という物がある。敵の生意気なセリフも民間人の阿鼻叫喚も何もなし。聞こえるのは耳障りな「はよ助けろはよ助けろ」という地上部隊の叫びばっかりだ。これでは黄色中隊の再現は無理だろう。やっとアクの強いスペツナズのおしゃべりが聞こえたと思ったらシールズが「マイク切れこのロシア野郎」発言である。無線が楽しみの一つだったのに自ら切り捨てに行くとは予想外だった。


<ゲームプレイ>やらされている、という感覚

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このゲームは狙わなくてもいい白ターゲット(以下TGT)と赤TGTがある。旧来のACならTGTだろうが赤TGTだろうが問題なく遠距離から撃墜できたのだが、ACAHは違う。赤TGTはドッグファイトモードで挑まなければほとんど落ちてはくれない。もしミサイルを撃ったとしても、それはUFO挙動で回避されるか、ミサイルの諦めが急によくなるかのどちらかで命中はしてくれない。

ドッグファイトモードは敵の後ろにつかないと発動できない。つまり従来のシリーズならのんびり飛んでいるのを遠距離から特殊兵装を叩きこんで一気に沈められるところを、わざわざ機銃のレンジまで近づいてモードを発動させなければならないという事だ。発動させると自機と敵機がUFO挙動を開始し、さながらジェットコースターのような光景が繰り広げられる。

ビルの間を縫って飛んだり、橋の下をくぐったりするアレだ。それが毎度毎度だ。撃墜するたびにスローモーションで敵機の爆発を見せられる。カメラにべちゃべちゃと張り付くオイル演出も野暮ったい。赤TGTに近づく、モード発動、ミサイルゲージを溜め、撃って敵が爆発するのを見る。この繰り返し。

そしてあろうことかコレを敵も行ってくる。というかTGTがワープしてケツについてくる。レーダーでも確認できるので間違いない。赤TGTに近づくだけでもうんざりなのにTGTが延々とミサイル警報を鳴らしてくる。味方は全く頼りにならない。スターフォックス64のように宙返りで敵の後ろにつくこともできるが、何故か「延々と追い回されているにもかかわらず、一度機体を水平にしてからでないとモードを発動できない」とあって鬱憤を溜めるのに持ってこいのシステムだ。

つまり、「システムを使わせるが為に状況がガチガチにセットされ、プレイ上何の爽快感の足しにもなっていない」という事である。ゲームシステム症候群にかかりっぱなしでゲームデザインという物に無関心な日本ゲーム業界を象徴するようなゲームだ。

元々酷かった対地攻撃はさらに悪化した。司令部から「この場所からこう攻撃しろ」とラインが表示され、そこでドッグファイトモードを発動させるとありとあらゆる戦闘機があたかもA-10かのように時速400kmで飛行し無限にバルカンを撃てるようになる。しかも銃撃爆撃にかかわらずいちいち爆発物にカメラがクローズアップしスローモーションでそれを捉える。プレイヤーのやる気を削ぐことに余念がない。

多くのゲームがスローモーションを排し、様々なオブジェクトの破壊演出によって画面上の情報量を飽和させプレイヤーを圧倒するようにしているのに、ACAHは開発にマトリックスを初めて知った中学生でも携わっていたのかと思う頻度でスローモーションが入る。鬱陶しい。あと何度爆弾が基地を爆破する画面を見ればいいんだ。

売りの非戦闘機ミッションは正直言ってコールオブデューティ4:モダンウォーフェアから何年も経った後のゲームにも関わらず、まだコールオブデューティの方がマシだとハッキリ言える程面白くない。10分も15分も地上部隊がワーワー喚くのを聞きながら、何の手ごたえもなく敵勢力をブリブリと機銃で撃つだけのミッションだ。これならキルストリークでも発動してチョッパーガンナーをやっている方がよっぽど暇つぶしにはなる。まさかアパッチで100発ほど撃ってもハインドが沈まないとは思わなかった。

なお前作までの売りだった特殊兵装の補給は出来ないので爆撃ミッションは爆弾が切れた後ミサイルで行うことになる。というか空中給油ミッションもない。「給油機の位置を教えてくれ!」というセリフまで用意してあるのに、だ。

機体のチョイスも怪しい。NATO軍の話なのに最初に乗れるのがMiG-21とF-16である。と思ったらスーパーホーネットF-2が出てくる。何故F-2が出てくるんだ。一応作中最強の機体はF-22かSu-47らしい。敵が最新鋭のPAK-FAに乗ってくるんなら、ワシントンDCの空を守るために主人公が乗るのはせめてF-35あたりじゃないのか。F-35N型とか、それぐらいでっち上げてくれた方がまだ気持ちがいい。思い出したように最終ミッションあたりでSu-47が出てくるのも気持ち悪い話ではあるのだが。

最終ステージは敵エースの駆るPAK FAを延々と追いかけるイベントバトルである。ペンタゴンやナショナルモールをカメラでガンガンクローズアップしながら、空中の見えないレールの上をジェットコースターで滑り続けるだけのバトルだ。ためしに機体を水平にするとアホほどヨーイングしているのが分かるので興醒めにも程がある。

また、「ポトマック川からホワイトハウスに向けてトリニティ爆弾を死ぬ間際に投下する」という演出の為に、イベントバトルの最中に殺し切ることは出来ない。こんなもの戦闘でなく、「今からこいつを倒しますが倒すべき時間じゃないのでちょっと待ってね」という儀式でしかない。しかもPAK FAにどうやってもミサイルが当たらないのならまだ諦めもつくが、サイドワインダーを10発も20発も当てているのに落ちないのだ。というか、黒煙を上げていたはずのPAK-FAが自然治癒している。ロシアはナノマシン技術を実用化でもさせていたのか。

ただでさえ退屈なバトルなのに、開発側は更に余計な茶々を入れてくる。マクロスプラスのYF-21よろしく、PAK FAは4発同時にQAAM(ロックオンせずに発射可能で、撃った後に超機動でホーミングしてくる架空のミサイル)を放ってくる。このままジェットコースターのレールに乗っていては回避不可能なので、一度ドッグファイトモードを解除しなければならない。「ほら!演出だから一度コースターから降りろ!」と命令されているようだ。こっちはメガリスなりアークバードなりと戦えれば文句はないというのに。


翼をもがれて断末魔をあげたのは

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ブリーフィングも、無線も、爽快感も、緊迫感も、空中給油も、リボン付きも、ストーンヘンジも、キャラクターもストーリーも本当に何もない。THQや2K辺りが拾ってきた欧州の中小デベロッパーの作品かと本気で疑ったぐらいだ。5年前のAC6では「天使とダンスが鬱陶しい」「地上オブジェクト増えすぎだろ」と言われながら一定の評価は得ていたエースコンバットが、まさかこのような駄作化を果たすとは思わなかった。テイルズやアイマス、リッジにクロノアなど自らの信用と信頼を損ねることに余念の無いバンナムの下衆さは、エースコンバットの翼を完全にもぎ取ってしまったと言える。本編クリア時に獲得される称号「garuda」の表示が虚しい。

ソラノカケラもエレクトロスフィアも、もう見れそうにない。