ゲームコントローラクロニクル。あるいはくたばれデュアルショックというメッセージ。

コントローラの振動は今や無くてはならないものになった。
マウスとキーボードに幾千の利点があれど、パッドの振動だけはどう足掻いても利用できない。なので、PCに箱コン繋げて遊ぶのが1番。箱コンネイティブ対応のゲームが物凄い増えたのも理由である。PCのゲームなのにXbox360コントローラを繋げたら「Aで取る」と画面に出る、バイオショックもスカイリムもそうなので、昔のそっけないPCゲーも今や昔、である。

Gears of War、Lost Planet、Splinter CellRainbow sixはキーボードでやっても何も面白くないだろうし、トリガー引きながらどうとか、Aで何でもできるっていうのはパッドでのシューターがパッドでなくてはならない理由を提示している。これがQやShift押しながらWASDじゃまだるっこしくてやってはいられない。「トリガーを引きながら何かをする」というのは家庭用アクションゲーム、もっと言うならパッド前提のゲームの特権なのだ。

セガサターンのマルコン、ニンテンドー64のコントローラのZ注目、GCコントローラの深みのあるLR、ドリームキャストのコントローラ、そしてXbox及びXbox360のコントローラを見ても、「時代のメインはスティック操作で、人差し指はトリガーを引きっぱなしにする。十字キーはあくまでショートカットキーとする」というのは明らかだった。2012年現在、世界はそういうゲームが王者として君臨している。

トリガーを引きっぱなしにすることにより「走る・防御」などの激しい運動が出来るようになったり、「精密射撃モード」に移行出来たり、フリーモードから「ロックオン状態」に移行出来たり、車や飛行機を加減速させることが出来る。右スティックはカメラや照準の為に機能する。それが、この10年のゲームの進化・変化という物である。

wiiのコントローラもリモコンを縦持ち横持ちだとはやらせるものの、ヌンチャクはスティックとトリガーのセットであり、これを左手に持たせるのがアクションゲームのつくりである。Z注目を世に広めた任天堂は、10余年経った今もこのスタイルを崩していない。

だが、どうしようもなく異質で、いつまでもこの風潮に順応できていないコントローラがある。それが、プレイステーションのコントローラだ。

初代のコントローラはスーパーファミコンのレイアウトにL2R2を継ぎ足した物だ。このL2R2ボタンはロクに利用されることなく、一部のゲームで機能のオンオフをメニュー画面を介さずに使えるというショートカットキーのような扱いだった。メタルギアソリッドでも武器メニューが開ける程度のもので、「LRをチョン押しで装備解除、長押しでメニューが開く」のような代替が出来る程度の使われ方でしかなかった。

このスーパーファミコンのレイアウトに無理やりスティックを付けたのがデュアルショックであり、それが標準コントローラとして採用されたのがプレイステーション2だ。このコントローラはほぼすべてのボタンに「押す強さで入力できる数値が変わる」という機能が付いたものであったが、アクセルワークが重要なグランツーリスモも何も出来たものではなかった。ドリームキャストセガGTやデイトナセガラリーが出ていた時代に、プレイステーション2では×ボタンアクセルだったのである。

コントローラレイアウトの歪みはエースコンバットで崩壊する。エースコンバットはLRボタンで飛行機のバーナーを柔軟に調整できるという売りだったのだが、入力を最大にしないとアフターバーナーが点火しないという事態が発生し、人差し指が痺れるほど力を入れっぱなしにしなくてはならなくなった。マップの拡大縮小も押す強さで変わるのでグニャグニャになった。十字キーで兵装が変更できるのだが、メインはスティックなので、親指がスティック人差し指がL1L2という割と手に負担のかかる格好になった。このエースコンバットが6でXboxのコントローラにとても馴染む操作系となったのはまた別の話である。

PS3が出ると噂になった辺りには、世界にはFPS/TPS旋風が吹き荒れていた。
そしてその立役者となったのがHALOであり、MicrosoftXboxである。

1999年時点でFPS時代の到来を予見していたMicrosoftは、セガサターンのマルコンをベースに右スティックを追加し、右手側にサブボタン2つを用意したXboxコントローラを完成させた。左手はスティックメインで、両手人差し指のためにトリガーを用意した。スティックは短めかつ真ん中が凹んでおり、そんなところもマルコンそっくりである。セレクトとスタートも完備なのでオールドタイプなゲームも安心。自社発売したHALOは007ゴールデンアイパーフェクトダーク同様飛ぶように売れ、家庭用FPSの金字塔となった。トリガーとスティック2つのレイアウトはPC向けゲームの移植にも適し、ハーフライフやシリアスサムもXboxに登場した。PS2でもメダルオブオナーがリリースされてはいたが、遊びやすさはXboxに遠く及ばなかった。

もはやゲームにスティックメイントリガーが無くてはならない時代だった。ゲームキューブのコントローラもスティックメインであった。それにもかかわらず、ソニーPS3で採用したのは、SIXAXIS……振動機能の問題からそれをオミットし、相変わらず無理やりなレイアウトのデュアルショックもどきだったのだ。

これには改良でなく、改悪が施されている。L2R2は大きくなり、トリガーのように押し込めるようになっている。押し込めるようになっているが、形はトリガーではなく丸くて大きなボタンである。指がつるつる滑って非常に押しにくい。引きにくい。本来ならテーパーがついて、指に引っかかりやすくなるのが道理だろうに。しかも床に直接置かれることを考慮していないのか、L2R2は床に置かれると暴発する。はっきり言おう、SIXAXISデュアルショック3も、欠陥品である。

結果、PS3のコントローラは全世界に見放された。FPS/TPSで銃の引き金や構えに使われるのは、せっかく作ったL2R2ではなく、まだマシな方とされるL1R1である。真ん中寄りのスティック2本、コントローラ上面のLRでプレイヤーは遊ぶことを強いられた。1年先行してリリースされたXbox360のコントローラの遊びやすさとは雲泥の差である。

Xbox360のコントローラは旧来の右側のサブボタンであった白黒が、LRの位置になることにより従来のゲームとの互換性をさらに高めることに成功した。LBRBのクリック感、スティックの形状の見直し、更に握りやすくなったグリップも相まって、Xbox360のコントローラはマルコンと64コントローラから始まったスティック+トリガーレイアウトの完成系と言ってもいい。現在十字キーを含め全てのボタンのスイッチ類が見直されたSE(セカンドエディションの略か)へアップデートされ、新型Xbox360には標準で付属している。発売当初は十字キー誤爆が問題となったが、最早それすら無くなったXbox360のコントローラは正に「完成」したと言えるだろう。

と言うわけで、さっさとソニーには自社のデュアルショックが欠陥品であることを認め、ブーメランコントローラでも何でもいいので「スティックメイン+トリガー」のレイアウトの新型コントローラを早急に出していただきたいのだ。ソニーだけがどうしようもなく異常で、時代の流れにそぐわぬものをばらまき続けているのだから。