提督の咆哮 その一 あるいは艦これイベント「決戦!鉄底海峡を抜けて!」で何故海が荒れたのか

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もう散々語られているから僕自身からの意見はやめようと思ったのだが、あんまりに各所で紛糾している問題なので僕自身の意見を述べようと思う。

と、その前に記事を3つほどがっつり読んできて欲しい。ただしコメントは読まなくていい。

艦これイベントについての感想 - Togetter
http://togetter.com/li/590386

武蔵GET済み提督のアイアンボトムサウンド感想 - Togetter
http://togetter.com/li/592632

艦これのイベントについて僕も考えてみた - 蕎麦屋
http://tororosoba.hatenablog.com/entry/2013/11/20/001639

まず整理しておこう。

艦これ自体は前に述べたとおり、準備を楽しむゲームである。準備とはレベル上げそのものであり、装備開発であり、編成であり、武器のセットである。それを楽しむゲームだ。そして兵站のゲームでもある。これはインタビューでもそう語られているし、今更言うもんでも無いだろう。

そしてレベルを上げて物理で殴るゲームであり、攻撃は唯一の防御。敵の頭数を減らすか、レベルを上げ回避の値を上昇させる事により直撃のリスクを減らすことが出来る。それの連戦。連戦。連戦。これも今更言うもんでも無いだろう。

そして準備もレベルも、果てがある。底が浅い。ゲームクリアは無いゲームだが飽和はする。確実に。3つの記事にあったとおり、艦これには難易度の軸が不足しているため、このゲームの最終形態は「一方的に砲撃して終わり」「敵の攻撃のダメージが入ったとしても至近弾のみ」になる。当たり前の話だ。艦これはそうなるまでを楽しむゲームだったからだ。中盤がクライマックスだったからだ。、

何故、2-4も、4-4も、3-4すらも乗り超えた人々がアイアンボトムサウンドを越えられず、そして越えてもなお「面白くなかった」といったのか。それについての話をしたい。

 


一つ目、ボス撃破のみが目的の海域だったから。

イベント海域はボス撃破のみが目的である。経験値はクソ低い

基本ルールはそうではない。ボス撃破と同時に様々なクエストを達成させ、経験値を得てキャラクターを育てることが目的である。羅針盤はいいとこ「ボス撃破クエスト」「補給艦クエスト」の妨害要素でしかない。確かに海域突破にとりかかり始めれば「余計な所に連れて行かれる」のはストレスではあるものの、その出撃は無駄ではない。何故ならばたっぷりと経験値がもらえるからだ。

イベント海域は違う。ボスを殺す、ただそのためだけに出撃が行われる。ボスを殺せない出撃。つまり大破撤退、羅針盤によるお仕置き部屋、ボス到達からの撃破ならず、全て無駄だ。無駄極まりない。経験値も手に入らなければドロップだって旨味がない。それなのに資源ばかり燃えていく。面白く無くて当然とすら思う。リターンがあまりに少なすぎるのだ。

しかもその目的の「ボス撃破」にはゲージがあり、ゲージ回復がある。ゲージ回復があるということは、折角費やした資源も、せっかく積み重ねた勝利も、目の前で無駄にされていくということである。

 

これは海域経験値の上昇、レア艦娘のドロップの2つを改善するだけでかなりの不満を減らすことが出来る。それこそ「高難度」を謳うのであれば、それ相応の基礎Exp500ぐらい景気良く上げればいいのだ。他のゲームで言う「週末経験値2倍キャンペーン」のようなものである。

経験値が高ければ通常海域で詰まっている人にも、「イベントで使うが育てるのを怠っていた艦娘」の育成をしたい人も幸せだ。「とっくに育て終わっている人」が文句の一つでも言うかも知れないが、それはハッキリ言って無視でいいだろ。うん。

 

レア艦娘のドロップは、それこそ「2-4に於ける島風」「3-3に於ける舞風」ぐらいのドロップのさせ方でいいだろうと私は思っている。ボスに行けなきゃ無駄、ボスに行っても目当ての艦娘が落ちなきゃ無駄。この無駄無駄の組み合わせは確実に人々の精神を蝕んだ。

モンスターハンターに例えよう。「ボスに行けなきゃ無駄」は3乙してのクエスト失敗。「ボスに行っても落ちなきゃ無駄」は討伐はしたが逆鱗が出なかったというやつだ。後者はまだしも、前者は時間と消費アイテムだけ無くなってストレスしか溜まらない。道中に希望があるならまだやっていられる。

 

マップをボス撃破のみ以外にするのも良い。マップの行き止まりに燃料貯蔵庫や弾薬庫を用意し、そこの護衛艦隊を撃破することで美味しいドロップや資源を得たり、ボスゲージの回復を鈍らせたり、何度か破壊することで完全に回復を停止させたりするギミックを組み込めば一つのマップに出撃し続ける退屈さを減らせるはずだ。現行のお仕置き部屋の仕組みはゴミとしか言い様がない。例えそれが史実再現の名の元にいくら擁護されようともだ。

 

何にせよ、「ボスを撃破して成功」のマップは「ボスに行かなきゃ全て無駄」の徒労感を蓄積させる事はまず間違いない。現行の「ボス撃破だけが目的」とは、そういうもんである。


二つ目、「ソシャゲ」にしたから。

ちょっと強い言葉を使った。先にイベントの難度について要素を2つに分けよう。

1つは「挑戦権」、これは今までどれだけ遊んだかの数字だ。具体的に言うと艦娘のレベルと装備の充実度である。今回で言えばE-3が平均50レベルとか、大和砲や三式弾があるかとか、そういう話だ。

これを見誤る、つまり挑戦権のない身分にもかかわらず海域に突撃して死んで「運ゲー」「クソゲー」と叫ぶのは、まあ自分の身の程を見極められない提督の断末魔なので暖かく見守っておこう。

必要とされる装備の数が揃っているか、変に弱い艦娘はおらず十分にレベルが上がっているか、最適解ではないにしろ、突破しうるだけの編成と装備を整えているのであれば、「超えられる」ようにはなる。

もう1つが「試行回数」、これは単純に出撃する数である。

艦これは本来、無限に時間があるので無限に試して良い。という「無限回試行」の上に成り立っている。だから羅針盤で弾かれても良いし、道中でフラッグシップ戦艦に砲撃を食らって帰ってもいい。何故なら試す回数と期間に制限がないからだ。やってりゃいずれ通れる。

だがイベントではそうも行かない。イベントはまずイベント期間という大枠で有限。そして何より攻撃開始から回復しきるまでの有限な時間に囚われる。これが時間制限

これに出撃、修理、キラキラ付けなどもろもろの出撃回数制限が加わる。
またの名を、スタミナという。

今までのことを無駄にしないために、何度も、何度も、大破させては修理させ、また出撃するだけのゾンビアタック。この出撃は4時間から一週間以上にも及ぶこともある。先に述べたとおり「ボスに到着し撃破する出撃以外は無駄」である。つまりプレイヤーのやることは……

ボス撃破という「あたり」を引くまで、出撃という名の抽選を行い続けるだけ。

これだけだ。スタミナの限り、出撃、修理、補給、出撃。例え大破してもプレイヤーに落ち度は無い。それは11連ガチャを引いてコモンカードが出てくる事にプレイヤーの落ち度が無いのと全く同じそしてスタミナが切れたらカネでスタミナを買えよと言われるのも全く同じ。プレイヤー側がゲームに対してやれることはなく、祈るぐらいである。

 

つまり「手に入りにくいレアキャラクター」相手に「張り付いて、走らせた」のである。
艦これのイベントは、「ソシャゲ」だったのだ。

 

これには反発する提督が出た。艦これは兵站(リソース管理)と準備(育成・装備&編成)のゲームである。文字通り「勝敗は戦いの前にもう決まっている」、故に「勝つ、勝てる」ものに対して、あとは出撃し続けるぐらいしかやることがないのだ。「クリア出来る、出来ないの問題ではない」とはこういう事事前に燃料を溜めていれば金はかからないとかそういう問題でもない。ここで荒れたのは「課金してナンボじゃないか」なんて所じゃないから注意しろ。

 

1それを普段は「今日は運試しでここに行ってみようかな」「今回はこれぐらい減らせたからまた明日」と遊んでいたわけで、それこそが艦これの「気軽さ」「良さ」「緩さ」だった事は最早言うまでもないんだろう。それがこのように一変し、「誰でもマイペースに」等というものを運営から否定され、「張り付き、走る」ことを強制させられたのだから、荒れて当然だと僕は思う。


「難しさ」が「運ゲー」になった日。

ここで身も蓋もないことを言うと、E-4以降はエンドコンテンツである。
廃人向けの延命措置。だから難しくて当然です。わー。

 

最初に紹介した記事にあったとおり、艦これには難易度を弄る軸がない。突破できる確率を上げて、上げるだけ上げて、上げ終わったらおしまいだ。もちろん上げる為にどうこうやるのが面白いのがこのゲームなわけだが、その試行錯誤だって余白を塗りつぶしたら終わりなのである。

艦これの「難しい」とは何だろうか。
私は「挑戦権を得る為に要求されるもの」が多ければ多いほど、複雑であれば複雑であるほど難しいと思う。

「このマップは戦艦がレベル70行ってないと厳しい」
「大和砲と三式弾が欲しい」
「電探も32号が2つずつは欲しい」

そういう話であれば納得だ。ここはプレイヤーの頑張りどころだからだ。支援部隊はどうしたらいいとか、重雷装巡洋艦は何を装備すべきだとか話すのは楽しいし、戦艦のレベルを90まで上げてくれば快進出来るというのなら喜んで航空戦艦であろうがレベルをあげよう。…ああでも、要求されるレベルが平均90とか言われても流石に困るなあ。

 

だが「膨大な試行回数が必要」、言い換えてみれば「プレイヤー側で上げられる確率が著しく低い」というのは、難しいとは思わない。それは「難しい」のではなく「理不尽」でしか無いからだ。フラ戦のカットインを食らって撤退させられるのも、折角キラキラ付けをしたのにお仕置き部屋に送られるのも、プレイヤーに落ち度が無い。改善のしようがない。確率だからだ。運だ。

しかもE-4は夜戦だ。夜戦ということは先制雷撃も、航空戦も、大和砲による先制砲撃も、何もない。プレイヤー側でできる事など、数えるほどしか無い。究極を言えば、重巡1にモブ駆逐5を出撃させ続けていれば、いつか重巡の三式弾の連撃が刺さって終わるようなマップだった。

つまり、やたらと便利に振り回される「難しさ」という言葉は次のように言い換えられる。

「かけられる時間を確保できるか」の難しさ。
「はずれを見ながら抽選し続けることに耐えられるか」の難しさ。
「何時間も抽選作業のためにマウスクリックするだけのつまらなさを乗り越えられるか」の難しさ。

こんな所だ。「過程は退屈である」と擁護側ですら認めるところである。

だから人々は叫んだ。「祈るしか無い運ゲーじゃないか」
クリア者ですら、報奨を得た上で、それでも「徒労感」の方が勝ったから「もうやりたくねえ」と言ったわけだ。クリアしたからそれでいいで済むならSNSも掲示板も荒れちゃいないし、矢矧関連で荒れてもいない。クリアしてもう海域の事を考えなくて良くなったはずが、また終わりの見えない「ボス撃破以外は全て無駄」のレースに突っ込まれたのだから。

「膨大な回数、長時間の出撃」に根負けした人から、脱落していくのがアイアンボトムサウンドだった。


 

想定されていたプレイヤー

さて、じゃあ運営の想定していたプレイヤーとは何だったのか。

結論だけ言えば以下のようなプレイヤーである。

  • 3-4ボスドロップのみのレアユニット、初風を得るためにボス撃破のためだけの出撃も厭わないようなプレイスタイルの人
  • 今更レベル上げなんてものに精を出す必要もない人
  • 家具コインも必要ない人
  • 何十回という出撃にも一喜一憂出来るほど、戦闘を楽しめる人
  • 羅針盤に「ボードゲームのサイコロと同じだよ、文句言う奴が居るか?」と言える人
  • お仕置き部屋を「史実再現としては正しい」と楽しめる人
  • 長時間張り付くのを当然だと言い切れる人
  • 試行回数ばかりを要求されることを「歯ごたえがある」と言い切れる人
  • それどころか「何十時間も苦しめられてこそレア艦娘が手に入るべき」と言える人

こんな所だ。

ぶっちゃけ、こういう人向けにイベント海域は作られているし、それ以外の声は無視された。「一週間だけ激レア軽巡が手に入るよ!喜んでプレイしてね!」の「濃厚なラインナップだよ!」の時点でそれも明らかだろう。


「やめればいいじゃん」で何故やめられなかったのか

今回のイベントは過酷であった。実に過酷。艦これを嫌いになり、止める人をたくさん見てきた。それでもプレイを止めない人達もたくさん居た。5万も10万も、現にアイアンボトムサウンドを抜けた者達がいるのだ。

「クリアは出来る。だが精神面で辛い。」
「クリアは出来そう。だけどつまらん。」

そういう事をつぶやくプレイヤーだっていた。そんな彼らに決まって投げつけられたのがこの言葉だ。

「どうせ先行実装なんだよ?やめればいいじゃん。」

ああ、正しい。とても正しい言葉だ。とても正しいのだが……

 

その2でこの話をしよう。