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ラブライブ!サンシャイン‼9話。「君の青春を僕にくれ」と言えなかった不器用な彼女たちの話をしよう。

高坂穂乃果はあの日、南ことりを抱きとめる事ができた。

「ことりちゃん。私、スクールアイドルやりたいの。ことりちゃんと一緒にやりたいの。いつか、別の夢に向かう時が来るとしても。」

そう言って、南ことりを抱きとめることが出来た。それは言ってしまえば、留学してもっと伸びて羽ばたいていけた筈の友の未来を、奪うことでもある。しかし、高坂穂乃果は友の人生を左右する言葉を言えてしまったのだ。そして南ことりは第二回ラブライブ!出場を決めた神田明神のあの場で「穂乃果ちゃんが選ぶ道なら、どこへでも」と返す。それが彼女たちの青春だった。

 

さて、彼女たちμ'sの姿に憧れた、黒澤ダイヤはどうだったろう。廃校を阻止するためにスクールアイドルプロジェクトをスタートし、ライブを成功させ、そしていよいよ呼ばれた東京で……理由はどうであれ、いい結果にはならなかった。学校は救えなかった。そしてスクールアイドルとして成功することも出来ず、幼馴染へ「一緒にいて欲しい」と言うことが出来なかった。

誰よりもμ'sに憧れた少女は二年前のあの時、高坂穂乃果に成れなかった。

 松浦果南は、小原鞠莉を誰よりも思っていたからこそ、スクールアイドルを続けるわけには行かなかった。鞠莉の足ではステージに立てない。無理に踊ればもっと酷いケガをしたり、将来に悪影響があるかもしれない。これ以上は続けられない。だから果南は歌わなかった。鞠莉を誘って自分が始めたことだから、自分が鞠莉を巻き込んだことだから、自分が終わらせなきゃと決意した。鞠莉には留学をはじめ、開かれた未来があった。様々な可能性があったから。

「一緒にいよう」と、彼女たちはそう言えなかったし、そうしなかった。互いを一番に思っていたからこそ、ダイヤと果南は鞠莉を送り出した。ダイヤは果南と鞠莉が大事で、果南は鞠莉の将来が大事だったから。

 

 

ラブライブ!サンシャイン!!(以下ラッシャイ)9話はそんなあまりに真っ直ぐな思いがすれ違って、ようやく出会った頃のように抱き合えるようになるまでの物語だった。しかも、ラブライブ!本編最大の爆弾であった「南ことりの留学騒動」を裏返しにして視聴者の頬をビンタしにきたのである。

 もっと言えば、「無理な状態でも強行しようとする」という鞠莉の姿勢。それは本編11話のNo brand girls高坂穂乃果と同じだった。本編では穂乃果が風邪である事を隠して雨の中のライブを強行し、その結果倒れてしまう。無理を通した結果、ラブライブ!への出場は辞退に。3年生にとって最初で最後のチャンスも潰す結果となった。ラッシャイではそこを逆手に取り、「やめる」事により起きたすれ違いの物語が描かれた。

 

ダイヤモンドは砕けなかった。

黒澤ダイヤはスクールアイドルをやめた後、スクールアイドルそのものから距離を置こうとした。それが「片付けて。それ、見たくない」である。ここで姉妹の仲がピリっとする。ルビィちゃんかわいそう。ほんとかわいそう。まあ図書室で本読んでて花丸ちゃんに出会えたわけだしそれはそれでいいのだろうか。閑話休題

さて、ここからラッシャイ本編時間への2年間。それぞれの間で拗れに拗れる。自ら始め、しかもそれが悲しい結果に終わった事を考えればダイヤにとってのスクールアイドルというのはおいそれと他人に軽はずみには触れてほしくないぶっぶっぶーな物になったのは容易に予想がつく。知ってる。そうやって妖怪になった音ノ木坂のツインテール、俺知ってる。

始めるにしても自分で曲を作ってみろやオォン?と言うのもその1つだった。が、ダイヤにとっても思わぬことが起きる。千歌が梨子と出会い、スクールアイドルプロジェクトが動き出してしまったのだ。更に鞠莉が帰還し、発破をかけたのだからもうぶっぶっぶーなどと言ってはいられない。ここで選ぶのは2つに1つ。これまで通り反対し続けるか、それとも千歌達の手助けをそれとなく行いAqoursが「ハンパかどうか」を見定めてみるかどうかだ。

スクールアイドルが大好きなダイヤが、そんな意地悪く夢を潰し続けるだろうか?しかもAqoursには、かつて同じ夢を見た鞠莉がついている。ダイヤは「ダイスキがあればダイジョウブさ!」と歌う千歌達の背中を、陰ながら押すことに決めた。妹がスクールアイドルを始める事だって止めなかった。

そりゃあ堕天使アイドルだなんて色物に走ろうもんなら怒る。でも彼女らがPVを作るというのなら妹のため両親に話を通す役になる。だとしても一緒にスクールアイドルになることは出来ない。出来るのは、あくまで後押しだ。親友二人のすれ違いが解消されていない以上、自分だけやりたい事を通せる訳がない。

そして後押しといっても東京に行かせるとなれば話は別だ。自分たちの問題が未だ片付いていないというのに、半ば悪役のような表情をしながら因縁の地へ後輩を向かわせる鞠莉がダイヤにはいよいよ分からなくなってくる。鞠莉にとっては「果南が歌えなくなった場所」であり、「自分たちがバラバラになる理由になった場所」の筈なのに。

東京から帰ってきた千歌達にダイヤに語るのは「周囲がこうだからしょうがない」と「私達も結果は残せなかった」と、どこか上滑りした言葉だ。「結果が残せなかった」……そこで誰かがどうだったから、だなんて言うのは明かす必要が無い。本当は誰が誰を庇ったかなんていうのは2年前の過程でしかないからだ。2年前に始まって、2年前の同じ頃に終わったグループがいた。……そういうただの昔話だからだ。

真実なんて、ダイヤと果南の中だけにしまっておけばいい。Aqours。あの日の自分たちと同じ名前のスクールアイドルたちが、自分たちの出来なかった事を成せたならそれでいい。東京の後も続いていけたなら。花火大会でも歌えたなら。

 

と、思っていたら果南の復学初日にアレである。

 

「鞠莉には他にやるべきことが沢山あるでしょ!?」

さて、「足の怪我」と「留学」という鞠莉の未来を案じた果南がとった行動。それがスクールアイドル活動の終了だった。スクールアイドルを続けたい鞠莉は「果南は失敗から早く立ち直るべき。逃げてる」と愚痴るが、果南の真意を知っているダイヤは当然良しとしない。ルビィが聞いた「だから、果南さんの事を”逃げた”だなんて言わないで」はここで、結局3人はこの事についてはわかり合うことなく終わる。とは言え、送り出すときには笑い合えている事からも分かる通り、不仲におわったわけではない。

 

「離れ離れになってもさ、私は鞠莉のこと忘れないから」

 

……で、送り出した2年後。2年ブゥリに鞠莉が帰ってきてしまうのだ。おい。1年の時のアレどうすんだよ。せっかく鞠莉の為を思ってスクールアイドルやめたのに。ダイヤだってやめたのに。しかも戻ってくるなり「スクールアイドルやるのよ!浦の星で!」なんて言い出すから大変だ。というか戻ってきてはいけなかった筈なのに、それでも視界が滲むんだから困った。本当のことを言えるわけがないので、避け続ける日々が始まってしまったのだ。

鞠莉も鞠莉で問題があり、後輩である千歌達の急成長を望む上で更にダイヤと果南の加入を煽るもその時に使う言葉が「逃げてる、逃げるな」なのが非常に悪い。鞠莉としては過去の失敗は失敗だから何度でも立ち上がろうよという話ではある。が、何せ「そもそも失敗による終わり」ではなく、鞠莉が帰ってきてしまった事そのものが今までのこと全てを現在進行形で致命的な失敗にしてしまっている訳だし。

「後輩たちは、出来たよ」という事実をもってして説得に当たっても、鞠莉は果南を取り戻せなかった。「スクールアイドル活動を止めてでも、君に幸せになって欲しかった」だなんて、事態が大きくなればなるほど言えるわけが無くなっていく。何だこの松浦果南とかいう良い女……「こいつは俺なんて男と一緒にいるべきじゃねえ。もっといい男と幸せになれるはずなんだ」って幼馴染に言う女そうそういないぞ……突き放し方が不器用すぎる……

で、ようやく始まる大喧嘩。全校に響き渡る「いいかげんにしろーっ!」の柑橘系ボイスと、明らかになる2年前の真実。誰よりも鞠莉の事を想って、幸せになって欲しかったからこそ別れを選んだ女の子と。別れゆく二人の事を想うからこそ、本当のことを言えなかった女の子と。転校してきた自分と友だちになって、一緒にスクールアイドルをやろうと誘ってくれた二人が大好きだった女の子。大好きだから言えなかった、3人の「大好き」のすれ違い。

 

言葉だけじゃ足りない
そう言葉すら足りない
故にすれ違って 離れてしまったことが
悲しかったの ずっと気になってた

 

止まっていた時間が、やっと動き出す。3人のために作られた衣装から9人のために作られた衣装へと着替えて、Aqourが夢の海へ泳いてゆく。未熟Dreamerは2年経ってもホワイトボードに残っていた想いが、やっと花を咲かせたようなステージだった。

 

ようやく9人になれたAqours。次の回は一休みのワチャワチャ回になりそうだが、果たしてどうなるのだろう。ワンダーゾーンみたくならなきゃ良いのだが、問題としては†心の闇†の話をしてないのが渡辺曜ただ一人なんですよね。あと4話でひとまず彼女たちがどこへ向かうのか、私も楽しみにしています。

 

 

 

 

 

喧嘩の時も一歩引いてあわあわすることしか出来ないダイヤお姉ちゃん、ほーんとルビィの姉なんだよなあ……