3DS『サバクのネズミ団!』レビュー。この1本のために3DSを買ってでも遊ぶべき作品だ。

 

見渡す限りの砂漠が広がる、とある惑星。
そこにはネズミと、ネコと、チキュウジンと、厄介な怪物が暮らしているのでした。

 

銀河のさいはて サバクの惑星に生きるネズミたち
移動要塞サバクフネにのりこんで めざせ! まぼろしの黄金郷!!
――灼熱のサバクをわたり
風の吹きすさぶ荒野をこえ
荒廃した廃墟の向こうへ
鋼鉄のフネにのり、砂の海をゆけ! ネズミ団!!

  公式サイトより

 さて、『サバクのネズミ団!』の記事です。どうやら特定タイトルについてのゲーム記事って実に1年振りらしいですよ。さっさと本題にとりかかろうと思います。皆様、おまたせいたしました。

 

クラフト×アップグレード×リソース振り分け=ネズミ

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 『サバクのネズミ団』が何をするゲームなのか簡単に説明すると、「拾ったアイテムを加工してフネを強化し、最終目的地である【黄金郷】へ突っ走るゲーム」です。

ゲームの流れをざっくり説明すると

  1. マップ画面から隣接した目的地(街や集落)を選ぶ
  2. サバクフネが走り出す(自動走行)
  3. 走ってると色んなアイテムを拾う
  4. 走ってる時間でアイテムをフネの設備で加工する
  5. 加工したアイテムで設備を強化・建設する
  6. 到着した目的地でアイテムを売買し、次の目的地へ向かう

という作りになっています。

 クラフトに必要なアイテムは「自動走行中に自動で入手」であり、ツルハシやスコップを振る必要はない。地域によって入手可能なアイテムが異なり、このアイテムの違いがそのままゲームの進行度に直結しています。新たな目的地のアンロックにはカネが必要とされるため、アップグレード用のアイテムだけでなく取引用のアイテムの製造も重要ですね。

 クラフトするために設備の加工画面を見ていると、明らかに「今の段階ではお目にかかれないアイテム」が立ち塞がります。この先に何があるんだろう。これを作ったらどうなるんだろう。まだ見ぬ未知の世界を求めて、ネズミと共にプレイヤーは旅することになります。

 加工の為には設備の稼働をさせなければならない。そして設備を稼働させるためにはネズミを1匹割り当てなければならない。ネズミは疲れるし腹が減る。だからキッチンと寝床を作ってやらなきゃいけない。それも清潔なシーツとフカフカなマットレスの寝床だ。キッチンだって合成ミルクと合成チーズの食事じゃ腹持ちが悪いから、サボテンを加工してワインとパンを食べさせよう。

 

わちゃわちゃします。

フネの中はゲームの最初っから最後までわちゃわちゃします。

 

 働いた後は「チカレタ…」と眠りにつき、「ハラヘッタ」と食事を取り、アイテムを入手すれば「ヤッター」「モウケモン!」と大喜び。食堂の料理には「ウマイ!」と舌鼓をうち、そして敵が現れたときには「キャー」とフネ中大騒ぎ。このゲームはクラフトのコツコツ感もそうですが、このネズミたちのセリフ選びやアニメーションも絶品です。見ているだけで楽しくなりますよ。

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 そしてクラフトです。クラフトも一筋縄では行かず、スクラップ→鉄板→鉄パイプや歯車やらなんやら…といった形で、アイテムツリーがゲーム内に存在します。作りたいたったひとつの装置のために、設備はいつもフル稼働。『サバクのネズミ団!』のやることと言えば、「次は何を作るか」を設備に設定するぐらいなのですが、この素晴らしきワチャワチャ感の中で割り振るのが楽しくて仕方ありません。気付けばあなたは数時間、夢中でネズミたちと旅していることでしょう。

 

それはネズミに与えられるべき罰なのだろうか?

 さて、そんなネズミ達の旅ですが、進めていると3度乗り換えのタイミングがやってきます。乗り換えなくとも、手狭になったフネで設備をリプレイスしたくなるでしょう。ここで『サバクのネズミ団!』最大の問題というか、数少ないマイナス点が出てきます。それは「設備を解体するとアイテム全てが素材に還元されるわけではない」というシステムです。

 これがRTSや別のシミュレーションゲームで、成長の度合いを競うゲームであれば潰す際のリターンと今のまま運用するリターンのどちらの方が良いかを考える事もゲーム性の一つとなります。しかしこのゲームは極論を言ってしまえば「プレイ時間をゲーム内のアイテムに加工していくのを楽しむゲーム」であり、その中でやれることが増えるわけでもないのにアイテムが失われると言うのは何の面白みにも寄与しません。

 どんどん建設して設備を入れ替えていく、というのは「作りたい物」がどんどん変化していく『サバクのネズミ団!』の面白さのひとつに成り得た要素であり、この「全ては戻らない」というシステムのせいで「この位置にこの設備を建設するのは間違ってはいないだろうか」と若干の億劫さを孕んでしまうことになりました。

 なにより、我が団のネズミは自分で建設した部屋ならカンペキに解体して再利用できるはず(断言)であり、ネズミ達が頑張って加工した素材を使って強化した部屋が無駄になってしまうというのはネズミに、ひいてはプレイヤーに与えられる罰になってしまいます。

 次回作があるのであれば、ここをもう少し上手く作ってくれることを望みます。

 

完全にフレーバーと合致したクラフトアイテム、そして愛おしき日々

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 『サバクのネズミ団!』には、サラっとCivilizationの要素も含まれています。最初は何で動いているのか分からないサバクフネに乗り、集落を回ってお使いをこなすだけだったネズミたち。彼らはいつしかスクラップからレンガを作り、竈を手に入れます。そして手先が器用なネズミ達はスクラップから歯車装置を、希少な鉱石からマグネットを加工し、モーターを入手することによってついに「マシンガン」「バーナー」「ロボットアーム」といった高度な文明を復活させます。

 そしてそのアイテムを手に入れる頃には、酒場で人々の口から語られる言葉によって「大昔、地球人がこの惑星に移民を試みた」「大量のスクラップは、衛星軌道上に浮かぶ宇宙船の残骸である」などの情報を得られていることでしょう。

ま、ひたすらに「黄金郷」を目指しているネズミ達にはあんまり関係ないんだけど。

 新たな目的地に辿り着くたびに明かされていく世界の全貌。鉄板を起点として効率的に様々な物を作り出していくファクトリー。そしてラボやロボティクスによる「電子工学」を手に入れたネズミたちは、「現代」に到達します。

 最終目的地である「黄金郷」のアンロック条件、それは「大昔からこのサバクの星を見ている機械」と通信し、位置を割り出すこと。ネズミたちは旅の果てに「人工衛星へのハッキング」を試みるのです。今までモノやカネの為にフル回転してきたサバクフネの設備が、ついに「黄金郷」のために稼働する。物語はクライマックスを迎えます。

 

 もう、ですね、ここらへんの盛り上げ方がたかが800円のゲームの作りじゃないんですよ。テキストもアイテム周りもものすごく丁寧。よくぞこのゲームを日本で作ってくれたと心からの賞賛を贈ります。

 

 私のクリア時間は20時間。「黄金郷」へは「ヌシ」の撃退によって辿り着きました。終盤に「ウシの骨」起点のアルカリや、そもそも「ラボ」へ偏りすぎてしまうアイテムツリー構成で生産がおっつかなくなるなど、惜しい点はちらほら見受けられますが、本当に素晴らしいゲームです。

 「ザ・タワー」「アジト」「アクトレイザー」「FTL」あたりがピンと来る人には、グサーっとささる一本になることでしょう。あなたも是非、この惑星でネズミ達と旅してください。

www.nintendo.co.jp

 『サバクのネズミ団!』は、ニンテンドー3DS専用ソフトとして800円で配信中です。

 

 

Newニンテンドー3DS LL ピンク×ホワイト

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  あなたにも、銀河に広がる例のアレの加護がありますように。