PAYDAY2に見るアンロック要素の功罪

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PAYDAY2、あっという間に60時間遊んでしまった。

PAYDAY2は「こぢんまりとしたマップに配置されたアイテムをゲットして逃げよう!」という、4人Coopの強盗ゲームである。このゲームはアイテムの隠された金庫や、その扉を開くコンピュータのハッキングに平気で4分も5分もかかるので、その場に留まらねばならない。このゲームのプレイスタイルは「ステルス」と「アサルト」の2つに分かれ、「アサルト」の部分ではWave制の籠城戦となる。

さて本作。Coopゲーにしてレベル制である。レベルが上がると著名ミリタリータイトルよろしく使える物が増えるのだが、これはゲーム寿命を伸ばすと共にある種の強烈なフラストレーションのわき上がる物になってしまっている。しかもそれは武器性能にまで及んでしまっているのだから尚更だ。


初心者は人質の手首を縛ることすら出来ない

PAYDAY2のアンロックシステムは2種類に分けられる。「キャラ能力強化」スキルと「ガジェット」スキルである。キャラ能力強化は「走る時の速度・持続力アップ」や「味方の回復能力強化」などなど。主に「アサルト」の方面で役立つものだ。「ガジェット」は「ドリルの音が無音になる」「爆薬でドアや金庫を吹き飛ばすことが出来るようになる」など、主に「ステルス」「時間短縮」の方面で役に立つものだ。

さて、ミッション自体の話をしよう。このゲームでの「アサルト」は、殆ど「ステルス」の失敗の結果移行する第2フェイズと言って良い。そしてアサルトでやったところで、クリアが可能なだけで旨味は無い。経験値でも金でもそうだ。ハッキリ言ってアサルトをしないに越したことは無いのである。

ではアサルトに移行しないとはどういうことか。「敵に音で気付かれない」だとか「通行人に犯行の様子を見られない」だとか、とにかく視覚と音に絡む物が多い。ここで役に立つのが「殺した敵がうめき声を上げないスキル」だとか「移動中に気付かれにくくするスキル」だとか……まあ、実例を挙げると限りが無い。

問題はこれらが無い場合だ。つまり、スキルが無ければドリルで気付かれるし、スキルが無ければサイレンサー装備で人を殺しても気付かれるし、スキルが無ければ爆弾でドアや金庫を吹き飛ばすことも出来ず、スキルが無ければ電ノコで鉄格子や金庫も開けられないし、スキルが無ければセキュリティルーム突破のためにキーカードを探すか、諦めて戦わねばならない。

即ち、低レベル帯であればあるほどシステムによりミスを許容されず、チームプレイ時にやれる事が少なくなってしまう。低レベルなせいで金庫一つに3分も5分も待たされるし、その間戦わねばならない。面クリア型ゲームで、システム上は可能な事が「プレイ時間が足りない」の一言でやらせて貰えないのである。遊ぶ時間が足りないせいで、「やれるはずの事」が出来ないのだ。

最初からアサルトのステージでも問題だ。爆弾も電ノコも無い場合、爆弾でドアを吹き飛ばせずドリルで3分待ち。銃弾の飛び交う中で輸送車内の金庫を20秒ほどかけてカチャカチャと開ける羽目になる。そんな事をやっていて儲けられるほどこのゲームは甘くは無い。

しかもこのスキル振り直しには多額の金がかかる。(正確に言えば、振り直す際には今までスキル修得に費やした金が半分しか返ってこない) プレイするパーティの所持スキルに合わせてサッと組み替えられるようには出来ていない。確かにゲーム寿命は延びるだろうが、それは正に「延命策」と言うにふさわしい物だ。「今まで出来ず、他人に見せつけられてきた事をようやく自分もやれるようになる」という事でモチベーションを保たせている。

せめて、初期状態でタイが6とか、メイン武器を手放すというペナルティを負っているんだから電ノコが最初から使えるとか、移動スピードペナルティを負っているんだから最初から重めのアーマーを着られるようにするとか、爆弾3個でもいいからドアや金庫に使えるようにするとか、そういう配慮が欲しかった。「遊びこむと高難度も安心」ぐらいの作りにして欲しかった。今の作りでは、低レベルプレイヤーは完全に「下っ端」の事しか出来ない。


 

どうして一番弱い状態で武器を渡そうとするんだろう。

このゲームは武器のカスタマイズが可能だ。武器にパーツを取り付ければ低反動で、マガジン容量たっぷりで、レーザーポインターで味方からも何を狙っているかが見えやすく、敵を捉えやすいサイトを覗いて撃つことが出来る。

これは大体EAとActivisionから出ているゲームがそうだからとしか言いようが無く、従ってその2社から出ている著名なミリタリーFPSタイトルにも言える同じ事なのだが、このアンロックシステムは裏を返せば「初期状態はどっち付かずの弱武器」という事になる。

ステルス寄りにするにしても折りたたみストックを解除しないと見つかりにくくなる事も出来ない。アサルト寄りにするにしても各種武器MODをつけなければ、どう考えても付いていない状態より弱い。更には武器パーツはミッション後の抽選で手に入れなければ、つけたくてもつけることが出来ない。

これもまた、「ゲームシステム上では出来るはずの事」が「プレイ時間が足りないがために出来ない」というアンロックシステムの罪の部分である。せめて最初からある程度のMODが用意されていて、それをつけっぱなしにしておくか取り外すかぐらいの選択肢は与えられなかったのだろうか。

そしてタチの悪い話がある。The Gage Mod Courier JobというDLCを購入しておけば、抽選を待たなくとも大変強力なパーツがあらかた使えるようになるのだ。ゲーム本来のアンロック要素にDLCじゃないと使えない武器および武器パーツのコンボ、正直キツい。


 

確かにゲーム寿命は延びるのだが

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PAYDAY2はもともと「DLCで儲けていくよ」というスタイルを打ち出しており、ゲームが好評なのでDLCのリリース期間が予定から更に延長される事になった。アンロックを楽にするプレステージモードも実装し、遊べば遊ぶほど楽しい楽しいレベル上げが捗るようになっている。

確かにゲーム寿命は延びるのだが、「遊ぶと更にいろいろ出来るようになる!」というのは「遊ばないとあれもこれも全く出来ない」と表裏一体だ。やるにしても、変なところでフラストレーションの溜まらないような作りにしてくれたらなあと思ったところである。