TROY無双が怒れる男の一騎当千だったって話。

イロモノ扱いされているTROY無双をプレイする機会があったので一周した。世界ふしぎ発見等の歴史ミステリー番組や古代文明の本が好きだった事もあり特に抵抗なく始められた。気づけば一周を終え、心地よい余韻に包まれている。

はっきり言おう。
TROY無双はめちゃくちゃ面白い。

今回はTROY無双と従来の無双シリーズ、更には影響をうけたであろう作品に触れながら「3Dベルトアクション」というジャンルの作品についてお送りする。

3Dベルトアクション というジャンル

TROY無双本編の話をする前に、3Dベルトアクションの話をしたい。

  • 数あるステージを選択し、ゲームを開始する
    シナリオモードかフリーミッションかは問わない
  • 広いフィールドなり、一本道のフィールドに放り出される。
    プレイヤーは指示された目的地へ移動する
  • 特定のエリアに入ると雑魚敵がわんさか出てくる。
    大抵の場合敵を倒しきらないと先に進めない。
  • ステージの最後にはボスが出てくる。大抵は一騎打ち。

真・三國無双デビルメイクライお姉チャンバラエルシャダイダイナマイト刑事、OTOGI、ガンダムバトルシリーズ等々。成長要素のある無しに関わらず、こういうゲームを私は3Dベルトアクションと呼んでいる。ステルスアクションでも、フリーランニングでもなく、FPSでもTPSでもない。そういうゲームたちだ。「3Dアクションゲーム」という括りでは何もかもが広すぎるので、ここではそう呼ばせてほしい。

それらのゲームの中で問題になるのは、敵の数、種類、そして行動の単調さである。耐久力を低くし過ぎると走っては一発吹き飛ばすだけのゲームになる。同じ種類の敵ばかり相手にしていても面白みがない。かといってボスが100発殴っても死なないようじゃサンドバッグ相手にコンボを決めていた方がマシだとなる。敵の大軍勢と聞いて駆けつけてみれば10人足らずでは肩すかしにも程がある。

TROY無双の基本システムを確認

従来の無双と大きく違うのはシールドバッシュの存在だろう。今作では身の丈ほどの大きさの盾を持った敵がわんさか出てくる。それ故に通常攻撃もチャージ攻撃も通じない。刃物による攻撃でなく、盾でブン殴って相手をよろけさせる技だ。シールドバッシュでも通常攻撃でも、相手の盾がだんだんボロボロになっていくのも見どころの一つである。

防御の新要素が弾き返しだ。これはいわゆるジャストガード・直ガと呼ばれる格闘ゲームのシステムと似ている。攻撃される直前にガードボタンを押すことで、相手の攻撃を弾き返し、こちらの攻撃のチャンスを作る技だ。単に弾き返すのでなく、最高のタイミングで弾き返すとジャスト弾き返しになり反撃の一閃が発動する。カキン!シャキーン!なんてアクションが可能なわけだ。

そして弾き返し、シールドバッシュでよろけさせた相手に使えるのが必殺攻撃だ。これはアサシンクリードシリーズの影響を受けたと思われるシステムで、よろけているキャラや倒れているキャラ、そして敗走を始めたキャラを一撃死できる技である。体力が幾らあってもお構いなし。

なお、今作の成長システムは全キャラ共通の装備を使って行う。大幅にストレスが軽減された。武器システムも無し。ステージをクリアしてポイントを得て、装備を購入。ストーリーモードが毎ステージ違うキャラを使っての全21面構成なので、1キャラを長く使うという事が無い。

無双乱舞は廃止され、Fury(怒り)というシステムになった。ゲージを溜めて発動すると、キャラが咆哮。スローモーションの世界の中敵兵を血しぶきあげさせてガシガシ切る事が出来る。攻撃力アップな上に防御無視なのでここぞという所で使いたい。

体力は肉まんではなく、敵から離れる・戦闘終了時に自動回復になった。

TROY無双では、敵がビビる

ステージ構成の話に移ろう。今作では敵が必ず編成を組んでやってくる。5~10人の小隊には必ず小隊長がいて、そいつは一般兵よりちょっと硬い。小隊長がいると兵が積極的に攻撃してくるので厄介だ。なので真っ先に叩くのは小隊長、という事になる。切り結び小隊長へ必殺攻撃を加えて串刺しにすると、一般兵がビビる。盾や槍を落とし叫び声をあげる。この圧倒感。そのまま掃討を続けると一般兵は情けない声を上げて逃げ始める。ので、敵の死体から剣や槍を拾おう。ブン投げて敵の背に刺せる。お助け―!逃がすか!グザッ!ギャー!といった具合だ。何故か拾った武器強化装備や投げ強化装備まであるのもうれしい。

前線を支える盾兵、後方から槍を投げてくる槍兵、そして弓矢兵など一般兵もバリエーション豊かだ。盾+槍のファランクスなんかガードを割るだけでも一苦労。槍兵数名に囲まれれば四方八方から差しに来るし、弓兵なんか二段構えで絶え間なく矢を放ってくるので油断ならない。後方の弓兵が撃つときに前方の弓兵がしゃがんで射線を確保したり、弓兵に近づくと一斉に剣に持ち変えたりと芸が細かいので注目だ。

更に至る所に中ボスがいる。二刀流のアサシン、二本槍のハンター、棘盾に棍棒のスパイクと言った感じ。特筆すべきはこれらの中ボスに先の一般兵も合わせて50人とかそういう規模で来られると、簡単に死ねるという点だろう。従来の無双のように敵は全く遠慮がちではない。本当に殺しにやってくる。ここで重要になるのが先のシールドバッシュ・必殺攻撃・弾き返しだ。シールドバッシュで切り込み、先兵に必殺攻撃を当てる。コンボをうまく決めると攻撃後に地面をキャラが思い切りストンプし、衝撃波が発生。震脚で敵の体勢を崩して切り込んで、攻撃が来たところでジャスト弾き返し。この流れがTROY無双では重要になる。

従来のように□→□→□→△なんてゲームではない。そんなことをしても通じないし、そんなことをしていたら相手に弾き返されて死ぬだけだ。相手の攻撃を弾き、体勢を崩し、ばったばったを倒していく。草刈りゲーと揶揄された無双はもうそこにはない。文字通り地平線を埋め尽くす敵を前に、勇者は怒り叫ぶのだ。

怒れる男の一騎当千

操作可能なキャラは8人だが、決してバラエティに乏しいとは思わなかった。そもそも揃いもそろってマッチョなオッサンである。その中に一人アマゾネスの女王が居るが、彼女も小学生が聞いたら泣くような雄叫びを上げながら巨大な戦斧を振りまわすので華もなにもあったもんじゃない。そんな英雄たちと二つの国家の存亡が、戦場とイベントデモで描かれる。
イベントデモではトロイの木馬ぐらいしか知らない人にも分かり易く、語り部による「お話」がお行われるので古代文明知識が無くても安心だ。傍らにwikipediaなんかあるともっといいかもしれない。

侵略側であるギリシャサイドの4人、侵略される側のトロイサイドの4人の視点を切り替えながら物語が紡がれる。互いに軍の英雄なので、ボスキャラが先ほどまで自分の動かしていたキャラという事もあったりして面白い。ギリシャの英雄アキレウスとトロイの英雄ヘクトルの決戦はこのゲームの一つの山場だ。弾き返しを更に弾き返してくる。二人の英雄が火花を散らして幾合と打ち合う姿、男に生まれたら滾らぬわけがない。

単純に3Dベルトアクションとしても、英雄譚としても濃厚な進化を遂げたTROY無双。是非楽しんでいただきたい。