フロストパンクでお前はマイナス20度を暖かい日と思う道民と化す

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 火山の噴火で全地球凍結が発生し、人々は超巨大な石炭暖房[ジェネレータ]の周りで生活を余儀なくされた。人々が向かったのは、石炭埋蔵量の比較的多い北極圏。たった80人で辿り着いたこの場所で、あなたは避難民のキャプテンとして生き延びなければならない。

 が、それも失敗した。-150℃の大嵐の迫る中、人々を助けたい一心で難民を何百人と受け入れた結果この街は様々なリソースが足りなくなった。

 食料が足りなくなった。薄いスープで何とかもたせていたものの、急な来客の為の用意など無かった。この寒さの中では温室も機能せず、倉庫の食料は空になった。

 住居が足りなくなった。きちんとした断熱をした住宅の建設には時間も資材も足りなかった。人が10人眠るための住宅を30棟、数日で仕上げられる筈もなかった。暖かさを求めてやってきた人々はジェネレータの前で凍え死んでいった。

 石炭が足りなくなった。人々を死なせないためにジェネレータは轟々と煙を上げて稼働したが、人々の住む場所を隅から隅まで温めるには性能が貧弱だった。それでもとあなたは蒸気ハブを増設したが、そもそも住宅の断熱構造の改良が足りなかった。嵐が来てから改良した所でもう手遅れだった。

 

 「キャプテン、報告です。生活区画で一棟の住民が全滅しているのが発見されました。」

 

 そんな事、分かっている。誰も彼もを生かそうとして、誰も彼もを死なせてしまう結末が近づいている。朝起きたら隣の家の人々が全員冷たくなっているような町で、安心して生きられる訳がない。市民の不満は爆発し、あなたは死刑に処される事となった。

 

 ジェネレータの前に引きずり出され、手足が拘束される。レバーがゴトリと音を立て、人を殺すのに十分な温度の蒸気があなたを包んだ。違うんだ。精一杯やったんだ。崩落した炭鉱だって稼働させ続けるために、子供含め30人を最下層に行くよう指示したのだって、爆発寸前のジェネレータの修理に子供を行かせて還らぬ命にしたのだって、胸が傷まなかった訳がないだろ。そんな叫びは誰にも届かず、喉も肺も全て蒸気に焼かれ…

 というわけでフロストパンクの紹介です。

 

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Frostpunk - PS4

Frostpunk - PS4

  • 発売日: 2020/02/27
  • メディア: Video Game
 

 

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 フロストパンクは前述の通り、この町のキャプテンとなり生き延びるゲームです。非常に勘違いされやすいですがこれは「シムシティ」や「シティーズ」ではなく、リアルタイムストラテジーゲームの「基地強化」を楽しむゲームです。よって「まちづくりをしよう!」だとか「家のローンを払おう!」だとか「蜘蛛や魚を売ってベルを稼ごう!」というゲームでもありません。

 フロストパンクに敵は居ません。ですが、「熱」を保つための石炭はみるみるうちに減り、人がいれば「住む場所」が必要ですし「食べ物」だって必要です。80人では余りに人手が足りず、一週間生き延びる事すら難しいでしょう。そのためにほかの生存者を「探す」必要があります。

 放置すれば2日で全滅する町の為、手元は常に忙しいです。言わば「住む!FTL」と言っても良い。石炭に15人向かえ!仕事の手を休め道路を敷け!さあ凍りついた木々も俺たちの家にしてしまえ!

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 で、生活改善に必要なのがこの「研究」です。研究でジェネレータを強化したり、いっぱいご飯作れるようにしたり、炭鉱や製鉄の施設を作れるようにします。この研究にも「木材」「鉄」が必要。設備を建てるのにも「木材」「鉄」が必要。研究には時間が必要なので資材があるからってポンと改善できるわけじゃありません。

 

f:id:crs2:20200508234315p:plain そしてこのゲームは「時間経過でより寒くなる」という、言わばウェーブ制が採られています。家は最初ボロテントしか建てられません。ボロテントのままだと人々はあっという間に凍死します。なので「発展しなければならない」という外的ストレスが常にプレイヤーにはかけ続けられます。

 暖房も無しに進めれば作業場は凍りついて仕事が出来なくなり、ジェネレータが貧弱なままでは住宅を温めることも出来ずに人が死ぬ。このゲームは常にプレイヤーへ選択を迫ります。

 

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 その選択の最たるものが「法律」「内政」でしょう。

 始まりは「24時間労働の強制」だとか、「児童労働の許可」です。ごめんね、お父さんお母さんが働いている間は石炭拾いの手伝いとか皆のごはん作りしてね。本当に申し訳ない。寒波が到来する前に何とか住宅の改築を済ませ切りたいんだ。寝る間を惜しんでこの製材所を動かしてくれ。

 何?食料が足りない?ちゃんとしたメシなど食わせてられるか。薄いスープで腹を満たせでもしておけ。重病人が出た?介護施設なんて要らないだろう。家で寝かせておけばいい。墓場なんて作ってられない。町の端に死体を埋めろ。病人で診療所が一杯など知ったことか。廊下に寝かせれば倍は入る。そもそも順序もつけていないのがおかしい。助かる見込みのあるものだけ助けろ。死人が出ても難民を拾ってくれば補充はできる。

 選択には必ず結果が伴います。

 安全な場所以外で子供を働かせれば命を落とし、おがくずを混ぜたスープでは病人が増え、働くことが出来なくなった重病人は絶望し自ら命を絶つ。無理な労働を命じれば心臓発作を起こし人が死ぬ。町外れに山積みの死体の手を取り、こんな筈では無かったと泣く家族。不満の解消に決闘を許可すれば、殴り合いでやっぱり人は死ぬ。

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 偵察隊が難民を見つけた。だけどそれに構っては居られない。だから町の場所だけ教えて別の場所へ向かった。町に来る前に15人死んだ。追放者が暮らす集落が在った。手出しはしない事を伝えて資材だけ積み込んだ。きっとこの追放者も全員死ぬだろう。ジェネレータを捨てて逃げてきた難民が100人。健康そうな者は10人しか居ない。だから90人の病人は受け入れられなかった。90人は全員雪の中で死んでいった。

 

 プレイヤーが目的のために最適化していけばしていくほど、命は簡単に消えていく。

 

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 大寒波の後、街は生き延びた。
 しかし、それだけの価値はあったのか?

 

 フロストパンクはそんな、選択のゲームです。
病気で死ぬか、経済で死ぬか。増えていく病人を切り捨てて、今の人々を生かすのか。2020年の今時期だからこそ遊んで欲しいですね。

 フロストパンクはSteamで大好評配信中です。
 ゲームの中でぐらい、あなたが世界を救ってください。

ジャストコーズ4:GTA5から5年目の、空っぽなオープンワールドについて

 

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Epicで無料配信していたのでジャストコーズ4をプレイした。プレイ時間は14時間。

 

 

JUST CAUSE ~ビバ・レボリューション~ - Xbox360

JUST CAUSE ~ビバ・レボリューション~ - Xbox360

  • 発売日: 2007/11/08
  • メディア: Video Game
 

  さて、ジャストコーズというシリーズを知っているだろうか?元々は2006年にリリースされたオープンワールドゲームで、07年に国内でXbox360版がリリースされている。広大なマップ、市街地でなく島一つの中を拠点だとか要塞だとか、そういうところをゲリラの強力な助っ人として暴れちらして「革命」していくゲームだ。

 ギャングのシマの取り合いだとか、そういう規模ではない。このゲームの相手は「現政権」であり、主人公が身を投じるのは「戦争」である。だからといって湿っぽいものではない。ロクでなしでぶっ飛んだゲリラの仲間とともに、「革命万歳(ビバレボリューション!)」と旗をぶっ立てまくるゲームである。

 このゲームの特徴は「集団戦」である所で、拠点開放戦では敵味方入り乱れての銃撃戦となる。それも馬鹿にド派手な爆発が起きまくる中を突っ走ってバリゲードを突破し、拠点をぶっ潰すそれはBGMも相まって大変な爽快感があった。カーチェイスでも敵のタイヤを撃ち抜けばぐるんぐるん車が回転し大爆発を起こすのでいわゆる砲台ステージでもさっぱり飽きが来ない。最終ステージでやることと言えば戦闘機で逃げる大統領機への乗り移りなんだから最高だ。

 

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 極めて良いメインテーマだ。良い…

 

 さて、ここからジャストコーズは3作出ている。マレー諸島で3勢力の手伝いをしながら戦う「ジャストコーズ2」、トンデモ科学を要する地中海の独裁国家メディチを舞台にした「ジャストコーズ3」、そして今回は南米ソリスを舞台にした「ジャストコーズ4」だ。今回はその最新作である4の話をする。

 

シリーズ12年目にしてオープンワールドの意味を喪失。f:id:crs2:20200426212658p:plain

 オープンワールドで大事なのは、その通りかかる場所がゲーム内で「生きているか」である。というのは何度も書いてきたとおりだ。ジャストコーズ2や3では画像のような小さな施設も立派な「拠点」であり、通りがかったなら一つ残らず爆破して旗を掲げるべき場所であった。

 だが、4は違う。4はエリアの制圧に「ストライクミッション」というちょっとしたクエストさえやってしまえばいい。軍事基地に出向いてスイッチをとにかく起動して、人か施設を護衛して終わりだ。そう、終わりなのだ。何が駄目ってカタルシスもカオスも無い。既存シリーズは大爆発と激闘の末に制圧!!!!このエリア全部貰った!!!というのがあったのに、無い。スイッチ押して全体マップで制圧ボタンを押して終わりだ。旗すら掲げられない。

 「ストライクミッション」と制圧ボタンで終わる、という事はエリア内の小さな施設にも町にも価値はない。散策する意味もない。散策する意味が無いということはオープンワールドである意味が無いって事だ。早い話がジャストコーズ4はオープンワールドである意味を12年かけて失ってしまったって事だ。

 一応、町ごとにチャレンジがある。ムササビスーツでリングを潜れとかそういうのだ。だがそれに意味もあまりない。3のように各能力強化にするのは愚策だが、4はそれに輪をかけてあまり意味のない「フック強化」と「スキン獲得」、それと「乗り物や武器デリバリー」に振ってしまったのだ。

 それはまるでGTAで警察を無限に相手して笑う子供のように。

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 ふうせんフックを解除したので吊ってあそべるぞ!

 

 ジャストコーズは2からグラップルというワイヤー射出装置を使えるようになり、ムササビスーツやパラシュートで優雅な空中移動するだけでなく、ヘリで石像の首を吊ったり、敵のヘリをコンテナにくっつけて地面に叩きつけたりと遊ぶ幅が増えた。

 が、4はよりによってこの「グラップル」の強化に全力を注いでいる。「ふうせん」「超ひっぱり」「フックからブースト」をサブクエストをやって解除しよう!解除して敵の死体を良いように弄んじゃおう!というのが3からの新要素としてフィーチャーされている。実はこれクリアどころかゲームプレイに何も関係ない。しいて言うと乗り物を落とすのが楽ってところだが、そもそも乗り物自体ワイヤーで取り付いて運転手蹴落としてそのまま捨てれば良しなのであんまり関係がない。どころか「超ひっぱり」部門を弄るとワイヤーが勝手に切れるのでゲーム中で非常によく出てくる発電機のフタが取れずに大変なことになる。

 そもそもオープンワールド部分で「ただ壊すだけじゃつまんないからちょっとふざけようか」と遊べた要素が敵からの攻撃が苛烈なストライクミッションにまとめてしまったので、ここらへんのグラップル強化は本当になんの意味も無くなった。ついでに言えば「ここは○○の施設だからここをブン取ると○○が使えるようになる!」というミッション導入さえなんの意味もない。何せこのストライクミッション自体が「主人公が無双する事によってエリア侵攻が可能になるぞ!」という単独任務であるとゲーム内で位置づけられているので、ゲリラ側の戦力増強を目にすることはまず無いのだ。

 まあ、自陣と敵陣の間では昼夜問わず戦闘が行われている事はある。が、介入した所でやっぱり何も意味はない。とりあえず設定されたHEAT(いわゆる手配度)に合わせて敵は山程やってくるし、なんならたった一人の為に戦闘機まで飛んでくる。そりゃあ飛んでくるが、この戦い自体に何の意味も無いので倒す意味もないのだ。

 そして戦車砲でかんたんに乗り物が(戦車含めて)吹っ飛ぶのなら、そもそも乗り物の手配にも意味はない。第一地上でどんだけ速かろうが、雑にその辺のヘリを盗んだほうが手っ取り早い。武器だって銃は何を使おうがヘッドショットが非常に簡単……といいたいところだが、なんとこのゲーム3までの無限爆薬が撤廃され楽しく爆破が出来なくなっている。しぶしぶロケットランチャーを取り寄せる事もあるかもしれないが、基本的に軍事基地に余るほどグレネードランチャーとロケットランチャー、及びそのサブ機能のついた武器が落ちてるのであんまり使うこともないだろう。

 …上記の取り寄せ要素、実はアンロック要素である。つかいもしない物が報酬だ。ジャストコーズ4はなんというか、グランドセフトオートで手配度を高くして警察がワラワラやってくるだけで楽しい人向けのゲームになってしまった。

 

 世界に影響が与えられないのなら世界なんて要らない。

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 雷、竜巻、吹雪、砂嵐…と自然の脅威が事前に宣伝されていたが、フタを開けると「気象兵器○号を攻略しろ!」というメインミッションのお題だった。というか普通に移動しててこの手の気象変化に出くわしたことねえ。

 さて、ジャストコーズだが3の非常に秀でた要素として「ラジオ」というのがあった。これは拠点の制圧後に、なんかこう…将軍様万歳的なやーつが流れるのであるが… 

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 こんな感じで「くたばれメディチ!」なんてラジオ放送が拠点を潰すごとに流れちゃうのである。序盤はほんとただの万歳放送だが制圧度が増すごとに面白くなるのでぜひ聞いてみてもらいたい。

 

 Fallout3以降のプレイヤーならまずご存知とは思うが、「クエストの結果に応じたラジオ」というのが追加されるだけでゲームの奥行きはぐっと増すし、何ならそのラジオだけでもクエストの報酬にすらなり得る。が、4じゃそれは削除されてしまった。結果、ジャストコーズ4はシリーズの中でも圧倒的に空っぽのオープンワールドとなっている。

 

 このゲームの最終章は、プロローグでも訪れた山頂の軍事基地への反攻作戦だ。それもメインミッションで出てくる気象兵器戦で出てきた自軍のトンデモ要素、及びトンデモ登場人物が勢揃いで、それはそれで面白い。しかし何を思ったかプレイアブルなのは敵の親玉がいたビルへの突入までで、その後は退屈なカットシーンで終わってしまう。

 そのカットシーンはこうだ。全ての気象兵器を組み合わせた単体にして最強の気象兵器UFOを、主人公はついに制圧する。しかし敵の親玉はもう逃げており、追いかけようにも間に合いそうにない。だが主人公はその気象兵器UFOを操作し敵の親玉にぶつける事で悪の現政権を撃滅したのであった、はあどっとおはらい。

 

 1では逃げる大統領の戦闘機に乗り移る所まで含めてプレイヤーが遊べたのに!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?????????????????????????なんでたかがUFO一つ操作出来ないわけ????????????????????!!!!!!!!!!!!!??????????????????????????

 

 まあ、そんな感じでジャストコーズ4でした。Epicで無料だったら遊んでもいいんじゃないですか。うん。

 

 

 

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  あ、今からジャストコーズシリーズを遊ぶのなら断然3の全部入りがおすすめです。前述の通り強化要素がよりによって退屈なサブクエになっているので、最初っから部終わってるセーブデータ(強くてニューゲーム的な物)を探してPCで遊ぶのが一番いいと思います。ビバメディチ

FPSで「俺の許可無く死ぬな!」って何度も言った友達が芋焼酎遺して逝った話。

 そいつは、トルティーヤでワカモーレな、ダイナマイト九州男児だった。

 私は2000年代後半を大学生活とXbox360のネット対戦に費やした。コールオブデューティは2のアジア版を秋葉原から取り寄せたし、バトルフィールドだってモダンコンバットから遊んでいた。大ヒットとなったCoD4では対戦を通じて仲良くなった人々とチームを組んで毎晩遊び、Xbox360Twitter対応を機に始めたTwitterでもどんどん仲間を増やしていった。

 当時、Discordはまだなく、通話は専らSkypeXbox360のグループチャット機能を用いていた。Skypeの集団通話機能を駆使し、一時期30人程度だれかがずっとオンラインになっている通称「大部屋」が作られた。見ず知らずの人でもSNSでなると*1を飛ばしあい、ゲームで銃口を向け合えば友達だった。

 2010年、コールオブデューティブラックオプスが発売される。私はボイスチャットをしながら遊ぶ楽しさと、お互いにゲームについての理解を深め合いながらオブジェクティブ*2を遊ぶ楽しさを日々広めるべく「BOカエル隊」という活動をしていた。BOはブラックオプスの頭文字。カエルは私がSNSで使っていたアイコンと、そのアイコンからついたニックネームに由来する。

 毎晩SNSで「やるぞ」と声をかければ、様々な人が参戦してくる。最初に声をかけた人とつながりが無くとも、誰かが「こいつにスパゲティを食わしてやりたいんですがかまいませんね!!」と連れてくれば、もうそれで遊び友達だった。

 そんな感じで出会ったのがダイナマイト九州男児エル・フォルテP。
 通称「ふぉるぴー」である。

www.nicovideo.jp

 名前は格闘ゲームストリートファイター4』のキャラ「エル・フォルテ」に由来する。それでアイマスPの一人だったからエル・フォルテP。後に何か罰ゲームで負けただか何かで名前が「腋男爵」になってた。なんなんだあいつ。

 

togetter.com

 どういう奴だったのかについては、まあ当時のトゥギャッターでも参考にしろ。

 

 で、ふぉるぴーはとにかく格闘ゲームのオタクだったのでコールオブデューティが下手だった。ゲームが下手というよりはとにかく走り回ってその後の反射神経で倒そうとするが索敵だとか接敵後に敵を捌けない。「どうしたらいいのかなあ」「死んじまうなあ!」と遊べば遊ぶほど凹んでいく。「BOカエル隊」を主催している私としては放っておけない。

 だから、彼の練習に付き合った。とにかく、格ゲーに例えた。私も下手の横好きながら、格ゲーは遊んでないわけじゃなかった。「角待ちとか待ちってのは、つまりガイルなんだ」「このゲームにブロッキングは無いんだ」「とは言え相手もガードは無いんだ」「精密に狙えなくていい。FPSよりよっぽど過酷な所で戦ってきたんだからここぞと言う所で雑に撃つ方を優先させればいい」「FPSはぶっぱでいいんだ」…… 彼のFPSの腕はメキメキ上昇した。と言っても神エイムってわけじゃない。元から格闘ゲームを遊び抜いていたからこそ、彼の「読み」の才能は圧倒的ですらあった。

 

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 鍵は「飛び道具」だった。アバネロダッシュの如く敵との間合いを調整し、各手榴弾で相手を動けなくさせ、仕留める。そして彼が1デスに付き2発撃てる波動拳として極めたのが「RPG」だった。爆発物は範囲攻撃である。そして地面や壁、天井に当たれば直撃じゃなくとも即死が見込める。足音を聞いて走り込んでくる敵にドン、窓から狙っている相手の天井にドン、なんなら撃ち合いが始まったら自爆しつつ道連れにドン。通称、RPGおじさんの誕生である。

 

cr.hatenablog.com

  北海道-九州間でゲームの貸し借りをしたり、毎日のようにSkypeで話したり、ふぉるぴーとは友達になった。彼をはじめとする人々がプレイしていたからこそ、私もPSO2を始め何百時間とプレイした。

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 当時のチーム、「Xenon Licht」のメンバー。

 

 

 さて、そんなゲーム生活にも人生長くやってれば変化が訪れる。私は北海道から上京して環境が一変したし、ふぉるぴーもふぉるぴーでいろいろ仕事が忙しくなった。そもそも学生たちが中心だったコミュニティも時間が経って社会人が多くなった。PSO2へのログイン頻度は減り、FPSも新ハードの買う買わないPCで良い良くない等で集まらなくなった。Skype大部屋自体も機能しなくなり、私はいつのまにかメンバーから消えていた。

 それでもTwitterでは交流があったし、またいつもどおり遊べるだろうと思っていた。そんな矢先、そのふぉるぴーの姉から訃報が届いた。「ふぉるぴーが帰らぬ人になった」と。

 

 私はいつも冗談めかして言っていたんだ。「俺の許可なく死ぬな!」って。FPSは無限にリスポーン(復活)が出来るが、死んだら死んだでそこから形勢が逆転する。バトルフィールドのように前線を形成する作品ならなおさらだ。私がくたばったふぉるぴーをショックパドル(蘇生アイテム)やムーンアトマイザー(これはPSO2の蘇生アイテム)で起こした回数は数え切れない。ゲームの中なら笑って済ませられるが、現実で死なれると蘇生なんて出来やしない。そして何より、笑えない。

 彼とは「会おう」「会おう」と何度も連絡を取っていた。私も上京したし、彼が九州から遊びに来た時に是非顔を合わせて、酒を飲んでみたり出来たらと思っていた。何年もゲームで遊んだり通話した仲だが、結局私はふぉるぴーと一度も顔を合わせることが出来なかった。

 顔を合わせた事もない人を友達と言うのは変だろうか。本名じゃなくハンドルネームで呼びあった時間が何千時間とあっても、それは友達じゃないんだろうか。現実では会ったこともない人の死に衝撃を受け、涙を流すのはおかしい事なんだろうか。私はそうは思わない。ふぉるぴーは私の友達だった。

 

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 一つ、北海道から東京に来る時に持ってきた物がある。いつかふぉるぴーが「誕生日プレゼントを贈りました。一緒に飲みましょう」と送ってくれた芋焼酎だ。なんてことはない芋焼酎だが、形見になってしまった。一緒に飲む日を楽しみにしていたのに、飲める日はもう絶対に来ない酒になってしまったのだ。

 

 彼が逝って、もうすぐ5年になる。
 向こうでも元気でやってんのかな。ストリートファイターは5も出たんだぞ。今度またプレイステーションXboxの新しい奴が出るんだって。PSO2は俺ももうやってないけど、レベルが95まで上がるようになったんだってさ。いろいろ話したいことがあるよ。また一緒にゲームやろうなって言ったのにさ、本当に俺の許可無く死ぬ奴がいるかよ。

 なあ、ふぉるぴー。お前、本当に良いやつだったよな。

*1:Reply、ユーザー宛投稿の事。アットマークが食べ物のなるとに見えることから

*2:地点を争奪したり相手チームの復活ポイント真っ只中にある旗を持ち帰ったりするルール。ただ倒し合うチームデスマッチよりも連携が必要となる

「人を殴るQTE」の果てに、桐生一馬がプレイヤーの手から離れる瞬間の話をしたい。

 

龍が如く0 誓いの場所 新価格版 - PS4

龍が如く0 誓いの場所 新価格版 - PS4

  • 発売日: 2016/03/17
  • メディア: Video Game
 

  「QTE」だとか「最後だけの特殊操作」だとかで、話を盛り上げるゲームは星の数ほどある。しかし「QTE」の後に、プレイヤーが主人公を制御できなくなる作品はそう無い。

 『龍が如く0』の話をしたい。

 『龍が如く』シリーズは御存知の通り元ヤクザを操作して徒手空拳で敵を倒していくゲームである。そしてこの主人公、桐生一馬は「不殺」の人である。そも『0』は金の取り立てで債務者を空き地でボコっただけなのに、何故か死んでたものだから「誓って殺しはやってません!」と濡れ衣を晴らす所から始まっている。

 ダブル主人公のもう片方、真島吾朗についてもそうだ。カチコミの為に銃こそ手配しても、結果として友だけを行かせる形になり結局人を殺すことはなかった。蒼天堀から出る為に「見知らぬ誰か」を殺す依頼を請けても、標的であるマキムラマコトを殺すなんて出来なかった。

 敵対する事になる東城会や近江連合はと言うと、平気で人殺しをしている。暴力の世界の住人なのだから当然といえば当然だ。作中ではコレを「黒」だとか「闇」だとか表現しており、カタギの日常的な世界を「白」と表現している。龍が如く0の最終章が「白と黒」なのは、その一線を隔てた人々の在り方そのものだ。

 

 最終章。惚れた女を撃った殺し屋を、真島は殺せなかった。幾ら怒りを露わにしても、彼は人殺しをすることがなかった。エピローグでも当初の標的であるマキムラマコトへ、「あのときの人を殺せない殺し屋は自分なんだよ」だと伝える事無く、去っていく。

 変わって、桐生一馬編の最終戦。相手は「箔」だとか「貫禄」だとか、流れた血を「看板」として使うために立ちはだかる男。渋澤だ。それに対し「くだらねえ」と吐き捨て、だが「付き合ってやるよ、そのくだらねえ戦いに!」と背中の龍の入墨をさらけ出し、殴り合いが始まる。

 

 さて、その最終戦の終局だ。敵の体力ゲージを減らし、始まるQTE。そこに表示されるのは反射神経を試すような変なボタンじゃない。今までゲームをプレイして何千回と叩いてきた「殴る」ボタンだ。当然、殴る。カメラがプレイヤーの手を離れ、目まぐるしく回る。だがやる事は簡単だ。今までやってきたように目の前の敵を打ち倒す。そのために「殴る」ボタンを押す。夜景をバックに鮮やかに渋澤が吹き飛び、バトルは終了する。

 バトルが終了しても、渋澤はまだ生きている。渋澤を桐生一馬は殴る。何度も殴る。この戦いで流れていった血と涙を思いながら、殴る。それに対しプレイヤーは何も出来ない。先程まで「殴る」ボタンで桐生と一体になっていたのに、桐生一馬はプレイヤーの手から離れて殴り続けている。

 「そうだよなあ、もう殺すしかねえよなあ?殺れや、桐生。」と囃す渋澤に、桐生一馬は腕を振り上げる。プレイヤーはもう桐生一馬を操作する事が出来ない。殺意に飲まれた主人公に対し、画面の前のプレイヤーはもう何もしてやれる事なんて出来なかった。

 

 そこで駆けつけるのが桐生一馬の兄弟分、錦山彰だ。

 錦山は桐生を力ずくで止め、そして説得する。「その一線越えちまったら、戻ってこれなくなる。勝手に先走んじゃねえよ、兄弟。いつか最後の一線を越えなきゃならねえときが来たら、そん時は俺も一緒に越えてやる。だから…!」

 

龍が如く0 誓いの場所 新価格版 - PS4

龍が如く0 誓いの場所 新価格版 - PS4

  • 発売日: 2016/03/17
  • メディア: Video Game
 

  プレイヤーの手を離れた主人公を止めるのは、切っても切れない兄弟の縁。これが意図された演出であろうがなかろうが、この一連のパートが『龍が如く0』を大傑作へと押し上げたと言っても過言ではない。もしまだプレイしていないなら、是非この結末にたどり着くためにプレイして欲しい。

 

 

 

 

龍が如く 極 新価格版 - PS4

龍が如く 極 新価格版 - PS4

  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: Video Game
 

  ……そして、0しかプレイしていないのであれば是非『龍が如く極』もプレイしていただきたい。桐生の居ない所で独りで「一線」を越え、しかもその罪を桐生に負わせてしまい、桐生の帰ってくる場所であるために戦っていた錦山がどうなったかを見届けてくれ。

 

 次回は『龍が如く極2』の予定ですが、また何ヶ月も空く可能性もあります。まあ待っとけや。

龍が如く極と0やったんだけど世界一のオープンワールドでは?

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 Steamで『Yakuza』のタイトルで龍が如く0、極、極2が配信している。ここ最近のHumble Choiceでもらったのもあるが、何より直近のアウターワールドが非常に淡白だったので極→0の順で遊んでみた。

 龍が如くはここまでサッパリ触れてきていなかったがめちゃめちゃ7の評判がいいのと、何より 

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 推しが推してるから遊ぼうと思ったんですよね。

 

 

龍が如く極と神室町

 さて、ストーリーの素晴らしさについては既に15年語られているのでそんなにガッツリ触れない。そして原作である『龍が如く1』は遊んでいないので極で追加された要素かどうかも分からん。昔からあることと極の追加要素をごっちゃにして書くので「今更ァ!」って事も書くだろう。寧ろ「今更ァ!」って事に感心するってことは、15年前から龍が如くって凄いんだなと思っていただきたい。

 龍が如くのメインストーリーは「盗まれた100億円の鍵を握る少女の母親探し」であり、「歩きまわって手がかりを探す」が基本である。歩きまわると収集アイテムが落ちているし、誰かがチンピラに絡まれているし、サブクエスト(頼まれごと)が発生する。その「頼まれごと」はメインストーリーとリンクした「裏話」であったり、過去からの因縁であったり、何のことはない人助けだったりとバリエーション豊かだ。

 

 

 「誰かのために歩き回っているとまたサブクエストが発生し…」とサブクエストが連鎖し、メインクエストも相まって「元ヤクザ探偵」の様相を呈していく。サブクエストはいちいちヒネってあり、読み物としても非常によろしい。作品世界への理解と共に、この「神室町で生きていく」ロールプレイとしては最上級の体験を提供している。

cr.hatenablog.com

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 オープンワールドに必要なのは「ロケーションの数」や「広さ」でなく、ゲーム内でフレーバー面でもシステム面でも「生きている」ことだと思う。というのは過去の記事でも書いたことだ。舞台である神室町は道端の自転車(武器になる)や看板(武器になる)、道行く人々(バトル時に観客になる)まで含めてこの街は生きている。間違いなく。

 

  中でも真島の兄さんが襲いかかってくる「どこでも真島」システムが良く出来ており、「10年前の全盛期の主人公の強さを取り戻し、更に強くなってもらうべく戦いを挑んでくる」のだがこれがシステム上の経験値、プレイヤー自身のスキルもガシガシ上げてくるのが楽しい。何より一般の敵とやりあっていても「お前は真島の兄さんより…弱い!!」となるのが良い。真島の兄さんを倒すと経験値が貯まり、更に強い真島の兄さんを倒せる。メインストーリーを滞らせても真島の兄さんを軸にサブクエストを潰せるので、停滞しにくく飽きにくいサイクルが出来ている。

 また、経験値を使った「強化」は単にパラメータだけでなく各種アクションも増えるので戦闘にも飽きが来にくい。とは言え前述の「どこでも真島」がこの手の救済措置の部分も担っており、サブクエストと真島の兄さんさえやっていれば「雑魚戦に価値がない」という状態が容易に起きてしまう。これは後述する「龍が如く0」でも同じで、0ではより一層顕著になる。

 しかし龍が如くが偉いのは「投げ技ありの喧嘩な所」で、銃であれば手榴弾とロケットランチャーで終わりな所に「強化」があるのでそれこそバットマンアーカムシリーズ以上に殴り合いが楽しく出来るところだ。マーベルスパイダーマンにも負けていない。超人オープンワールドでも無いのに戦闘部分が面白いのは貴重だ。いや、主人公の桐生ちゃんは超人な気がする。超人か?

 

 が、もちろん良くないところもある。基本的に「回り込んで後ろから殴る」か「敵のラッシュを見届けてから殴る」作品なので、プラチナゲームズのタイトルやソウル系のゲームの「見切り」以後に遊ぶと横にズルっとスウェーが若干やぼったい。加えてスーパーアーマーの敵(ボスキャラだと嶋野が該当)が相手だとダルい事になる。

 

 こいついいかげんにしろよ。

 救済措置というかバトルの本命というか、古武術修行イベントで敵の動きに合わせたカウンター攻撃がようやく手に入ると刺し違えてでもブン殴れるようになる。これを早く欲しかった…!

  「無双」の面でも「タイマン」の面でも本当にゲーム性が一変するため、堂島の龍スタイルは強化していきたい。本当に良い。最高。

  そしてその喧嘩もメインストーリー上で死ぬほど盛り上げてくれる。文句なし。初代の頃がどうだったかは知らないが、画面上に敵が10人以上現れるのを全員ボコボコに出来るのは爽快の一言だ。

 

 龍が如く0とリニアなストーリーとの乖離

 さて、初代のリメイク作品の『極』を終えてから遊んだのが『極』から見て前作。そして『極』の時間軸から見ても17年前の『龍が如く0』である。

 ストーリーは『極』の若干ゆったりとした探偵状態からガラリと変わり、非常にリニアな物になった。『0』はダブル主人公なのだが、どちらも殺人の濡れ衣を晴らすだの標的を殺せだの非常に物騒な事になっている。それは良いしメインストーリーは死ぬほど面白いのだが、そこから抜け落ちてしまったのがサブクエスト達だ。

 「明日までにどうにかしろ」だとか、「誰かが呼んでる、早く行かなければ」という状態の時に他人をかまっている暇が無いのである。やれ新興宗教に娘が連れて行かれただの、彼女が下着売ってるからどうにかしてくれだの、話は非常に面白いんだ。ハッキリ言ってFallout4だのアウターワールドだのに勝るとも劣らない。その量が質を保ったまま膨大なので相当なボリュームとなっている。読みたい。が、状況がそれを許していない

 なので私は『0』をプレイする時に、様々な要素を置き去りにしてしまった。装備もそうだしなんなら強化も「師匠に挑んでの技解除イベント」をほぼやっていないし、ミニゲームの不動産やキャバクラも面白いとは思うがあまり触れていない。だって街中には堂島組がうろうろしてるし倉庫ではマコトが待っとるやないかい!マコトほっぽってそないなことしてられるかいな!

 加えて、買い物も強化も何もかも「金」に一本化した弊害が出ている。『極』ではまだ序盤に敵を殴る価値があったのだが『0』ではもう序盤から殴る価値がない。なんならサブクエストでも経験値がもらえたから良かったが、『0』はそこも金にしてしまっているためサブクエストも読み物になってしまっている。一応、そのサブクエスト登場キャラクター達が前述の不動産やキャバクラに参戦してくれるのでフレーバーの面で盛り上げてくれるのだが、問題はシステムの方だ。

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 「カツアゲ君」という、非常に雑な金巻き上げキャラがいる。強さの面でもキャラの作りでも雑だ。こいつを倒せば金がバカスカ手に入る。しかもそのカネの量を増加させるアンロック要素まである。そして回復アイテムはインフレしている金の入手量に対して非常に安いため、ゴリ押しで済んでしまう。というかカツアゲ君の攻撃力も体力も異様に高すぎる上にスーパーアーマー付きのため、ボーナスキャラやご褒美という感じがなく、向こうがシステムをガン無視するならこちらも更にシステムをフル活用してさっさと潰す気にしかならない。

 結果どうなのかは各種攻略情報なり動画なりを見てくれれば一発でわかることだが、カツアゲ君の行動をキャンセルし割り込んでボコる必殺技を回復アイテムガブ飲みで出して終わり。他にも良いボコリ方がたくさんである。

 で、このゲームの最強は(隠しボスを除いて)カツアゲ君である。そして倒すと死ぬほど金が手に入る。倒す相手がカツアゲ君しか居ないのにカツアゲ君を倒して金を手に入れる。カツアゲ君との戦闘経験は別の敵にあんまり使い回せない。カツアゲ君の額を寄越さない敵とは戦う意味がない。

 「バランスブレイカー」だとか「救済措置」だとかって言葉で終わらせるのは簡単だが、この雑なキャラのお陰で『0』は誰も倒す価値がなくなり、サブクエストもただ読むためだけに読む事になってしまった。シナリオクリア時の報酬ですらそうだ。

 

 おそらくだが、このカツアゲ君の駄目さが次作である『極』でのどこでも真島に生きたのだろう。師匠による技のアンロックもそうだ。上限解放などもそうだ。ミニゲームも進めることでフレーバーであるストーリー進行と共にシステム面での報酬である金の有り難みがあるならやるが、残念なことに『0』は金銭感覚が時代抜きにしても狂ってしまっている。

 

 それはそうとして、話は死ぬほど面白い。登場する野郎が皆ギラギラしている。特に気に入ってるのはバイクで事故ってもまだ生きてる久瀬と、ラスボスを務めた渋澤だ。

  この龍を背負う者同士の決戦、死ぬほど好き。

 

 …惜しむらくは、壊し屋スタイルのこれさえなければ。

 

 様々な男たちが駆け抜けそして死んで行く『0』の物語は、『極』にも勝るとも劣らぬ極上のものである。僕以外にそんな人がいるとは思わないが、もしやってないならはよやれ。こんな記事読んでる場合か。

 

 

 既に多くの人々がストーリーを語っているので、今回はシステム面に絞って書いた。龍が如くシリーズは話が面白いとは聞いていたが、それ以上にシステム面も非常に良く出来ている。「アサシン」や「勇者」や「ギャング」に飽きたら是非遊んでいただきたい。神室町で「極道」が待っている。

 

 ああでも、これだけは言わせてくれ。

  錦ィ…錦よォ…

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錦よおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!

 

龍が如く0 誓いの場所 新価格版 - PS4

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  • 発売日: 2016/03/17
  • メディア: Video Game
 

 

 

龍が如く 極 新価格版 - PS4

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  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: Video Game
 

 

 

龍が如く7 光と闇の行方 - PS4

龍が如く7 光と闇の行方 - PS4

  • 発売日: 2020/01/16
  • メディア: Video Game
 

 

お前はアウターワールドでハルシオンに夢を見て、そして現実に打ちのめされろ。

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【PS4】アウター・ワールド

【PS4】アウター・ワールド

 

 Obsidian Entertainmentと聞いてもどこのメーカーか分からないだろうが、「あのFallout:New Vegasのチームの新作だよ」と聞いてビクっとしない人は居ないだろう。NV後に4や76で「もう本家に期待するのも違うかも知れない」と思った人ならなおさらだ。

 The Outer Worlds(邦題:アウターワールド)は18年末に突如発表され、そして19年のホリデーシーズンにリリースされたObsidianの新作オープンワールドRPGである。

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 ハルシオン星系への移民船「ホープに乗り込んだ主人公は10年後に目覚める事を夢見て冷凍睡眠につく。が、突然フィニアス博士を名乗るジジイに叩き起こされて見れば80年の時が過ぎており、しかも他の人は誰一人起きていない。良くわからんままジジイに導かれハルシオン星系の首都惑星にポッドで落とされて、これから俺どうなっちゃうの~!?

 あ、現地で手助けしてくれるはずのガイドさんはポッドの下敷きに。
 本当に俺、これからどうなっちゃうんだろう…

というのがアウターワールドの始まり。

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 ん?知らんジジイに導かれるまま…ポッドで…?

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 冷凍睡眠から目覚めたら一人で…?

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 知らん惑星で野生生物やわんぱくなお友達と戯れる…?

 

 

 

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 アウターワールドを始めたプレイヤーは、まるでRaptureに導かれた時のワクワクと、Vaultから出た時の僅かな不安と、そしてPandoraでの戦いの日々のような胸騒ぎにかられるだろう。事実、アウターワールドは00年代のHD機でプレイしたあの頃の要素で出来ている。あの頃よりもっと画作りはサイケで、まるでReShadeか何かを入れ間違えたようなギトギトでビカビカだけれども。

 

ハルシオン星系に見た夢

 ハルシオン星系に降り立ったプレイヤーが感じるのは、自由度と冒険の予感だ。

  • ビーコンが中央の街を示しているが、無限にロケーションがありそう!
  • 武器や防具にレベルとか属性がある!ハクスラなのかな?
  • 何やら色んなアイテムが手に入るぞ?もしかしてクラフトとか改造要素ある
  • 開けられないドアや箱が一杯だ!きっと後から来たら凄いに違いない…!
  • パソコンでメモやメールが読める!色んな場所にドラマがありそう!

 事実、最初のエリアであるエメラルドヴェールを1時間ほど歩き回っている時はそんな感じで楽しい。どの場所に行っても山程クエストが発生するし、今起きてるトラブルの対応のバリエーションが非常に豊かだ。「ああ」「そうだ」「うん」と返すだけじゃない、主人公の発言にニコニコ出来るRPGが帰ってきた。

 が、エメラルドヴェールのメインクエストで自分の船に必要な部品を手に入れた辺りで少しずつ、少しずつだがゲームの底が見えてくる。

  • ビーコンが中央の街を示しているが、無限にロケーションがありそう!
    Falloutの大型DLCで追加されるマップ程度の広さのエリアが複数あるだけ。クエストで訪れる場所でも無い限り、NVの道端の小屋程度の意味合いしか無い。

  • 武器や防具にレベルとか属性がある!ハクスラなのかな?
    →ではない。武器や防具のレベルは入手するお金を使うための焼却炉。ユニーク武器はユニークであって強力な訳でもない。何よりこのゲームの最強火器のひとつは中盤にザコ敵から拾えるマシンガンである。

  • 何やら色んなアイテムが手に入るぞ?もしかしてクラフトとか改造要素ある?
    →あるのは拾ったMODを店売り武器に取り付けるNVめいた改造だけ。拾える様々な小物はただの売り物でしかない。食べ物も飲み物も最高難度以外ただの重しでしかない上に買取価格も安い。

  • 開けられないドアや箱が一杯だ!きっと後から来たら凄いに違いない…!
    →違う。今ハッキングやピッキング能力が無いから今消耗品を入手できなかっただけ。中身は大したこと無い。ただ、ドアだけは開けるとミニクエストが生じたりクエストの進行方向がガラっと変わることがある。

  • パソコンでメモやメールが読める!色んな場所にドラマがありそう!
    →残念な事にこのゲームはFalloutではない。

 こんな所だ。「ハルシオン星系に胸をときめかせてやってきた主人公」と「凄いゲームなんじゃなかろうかと胸をときめかせたプレイヤー」の熱の下がり方も重なる。

 そう、アウターワールドRPGだ。それもFallout3よりももっと時計の針を戻した、RPGなのである。なので環境ストーリーテリングに期待してはならない。いや、それは言いすぎだ。「この施設が放棄されていく過程」だとか「研究が狂っていく過程」だとかは書かれている。書かれているが死体は新鮮で、施設はいつもどおり凶暴な野生生物でぎっしりだ。

 しかし「ベッドの裏の金庫」「ベッドの上で寄り添い合う白骨死体」「ベビーベッドの中のテディベア」などなどを期待してはならない。ここは終戦争から200年後のウェイストランドではない。

 

ハルシオン星系」であるということ。

 タムリエルで無いと言っても良いが、ラプチャーやウェイストランドでは無いという事はどういう事かをもう少し噛み砕いて説明しよう。

 アウターワールドの舞台は「うまく行くはずだった”外界”の開拓の失敗した星系」である。2隻の移民船のうち1隻だけが到着し、そこで目覚めた人々が惑星テラ1を開拓しようとして物の見事に失敗。2つ目の惑星であるテラ2の開拓こそなんとか出来たものの、すべての人に居場所のある生涯雇用システムなんてものはロクに機能せず…という所に主人公が「2隻目の移民船から来た唯一の人間」として現れるわけだ。70年遅れで。

 つまりだ。ハルシオン星系にはそもそも歴史がない。そも地球の歴史から切り離されているので中国だアメリカだという事もない。ということは「かつてそこで生きていた人々」の話もなく、廃墟はただただ放棄された企業の建物でしかない。「かつては何かだったもの」が「今を生きる人々には別の使われ方をしている」という事もない。狂人が各々のセクターでとんでもない事を人々に施しているわけでもない。

 

 「開拓の失敗した星系で、企業連合はそこかしこでブラックな労働を強いている。しかしその企業の言い分には一理あり、とは言えそこの反旗を翻した人々の言い分にも筋が通っている。この硬直した状況で、主人公は何をするのか?

 これがアウターワールドのキモだ。アウターワールドは狂った海底都市の崩壊の物語でもなければ、最終戦争で時計の止まった荒野を旅して今の答えを見つける物語でもない。主人公はトレジャーハンターでも無いし、悪徳企業をぶっ潰すって話でもなく超能力者も出てこない。核にあるのは滅び行くハルシオン星系で懸命に生きている人々の今と、そして選択である。

 

 最初に到着した移民船の名はグラウンドブレイカー、先駆者だとか開拓者という意味だ。そして70年遅れで見つかった第二の移民船の名はホープ。何十万人という人々が目覚めを待つ船の名は、希望を意味する。

 

膨大なスクリプトに裏打ちされた、鮮やかな現実に挑め。

www.nintendo.co.jp

 

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 突然だが、バハムートラグーンというゲームをご存知だろうか。1996年にスクウェアが発売した傑作SRPGだ。このゲームは30人を超える仲間達と戦艦ファーレンハイトで空に浮かぶ島々「ラグーン」を渡り、戦っていく作品である。

 このゲームの素晴らしい所の一つが、その30人を超える仲間達全てと1ステージ毎に会話が可能である事だ。先のステージまでの話を汲んだ会話もあれば、ステージを経るごとにファーレンハイト内で仲間達がいがみ合ったり、仲良くなったり、両片思いになったり、そんな人間ドラマが展開される。私はこのファーレンハイト内の会話劇が大好きだった。

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 サモンナイトシリーズはどうだろう。これもSRPGで、仲間とチャプター毎に会話をすることが出来る。キャラクターと直に会話をすることでキャラクターにもストーリーにも深みが増すのが「夜会話」というシステムだった。

 2のハサハが好きです。

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 スターオーシャンの中でもセカンドストーリーで大きく強化されたのが「プライベートアクション」で、これは街に入る時にボタンを押すことで仲間が街中に散らばり、それはもう様々なイベントが発生するものだった。仲間同士の組み合わせでのみ見られるイベント等もあり、また「仲間同士が恋愛関係になる」というエンディングも用意されていた。

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 さて、アウターワールドに話を戻す。アウターワールドは辺境の町エメラルドヴェールの田舎娘メカニック「パールヴァティー」と、堅物だが何かを探し求める神父「マックス」を仲間にし、コロニー船「グラウンドブレイカー」に乗り込んでから一気に毛色が変わる。

 というのも、シナリオ上必須なNPCとの会話に口を挟んだり場所について会話し合ったり、「ちょっと外で話そう…さっきの事なんだけどさ」と仲間から話しかけてきたり。仲間がハチャメチャに喋りまくる。何なら仲間が話しすぎるから主人公が制止したりするぐらいだ。ソレに対しNPCも「随分とお喋りな奴を連れてるんだな?あ?」と怒りを顕にしたり、はたまた「そっちのお仲間さんは分かってるようじゃねえか」と言ってきたり。前述のゲーム達に負けず劣らずの「会話劇」を繰り広げてくれるのだ。

 更にはこの田舎娘メカニックがグラウンドブレイカーの女船長とのメールに始まりデートの約束を取り付け、石鹸を買いに行きお菓子を買いに行き更には都会に服を買いに行き、最高のデートをプロデュースする中で不安になる彼女を酒場につれていき、もうひとりの仲間(これも勿論誰を連れて行っても良い!)と初恋について語らうクエストまで用意されている。アウターワールドは百合。

 このゲームで会話をご破産にするのは簡単だ。銃を抜いて全キャラ殺してしまえばいい。仲間に一度したとしてもそのままクビにして蹴り出してしまえばいい。そういうロールプレイもありだろう。だがアウターワールドを遊ぶのであれば、お勧めしたいのは会話による「選択」を楽しむ遊び方だ。

  

 実に膨大な選択肢がある。しかし言っておきたいのは「同じ話を何度も聞き直し、全ての選択肢をその場で選び直す」という事は出来ないって事だ。発言には取り返しがつかない。後戻りできない選択肢には勿論<攻撃>だとかわかりやすいアイコンがついているが、それだけでなくクエストの途中の何気ない選択肢でニヒルな発言をしても、興味がないような発言をしても、その会話は二度と見られないのだ。

 選んだ選択肢以外の会話は見られないし、その先の旅で二度と同じ話をすることはない。銃を抜かずとも、一度放ってしまった言葉はもう戻らない。その積み重ねがサブクエストを終え、メインクエストを進めていく度に増えていく。それらはプレイヤーの中に、たしかに「主人公像」を形成していくのだ。

 

  そのロールプレイの中で出会うのも曲者揃い。結果として大災害を引き起こしたダイエット歯磨き粉作りのおじさんも、人間の死体を肥料に植物園を営むババアも、アウトローの女社長かと思えばエイリアン陰謀説を唱えだしたりとバリエーション豊かだ。街から街へ移動する度に、ネームドキャラと話すのが面白くて仕方ない。

 

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 終盤、いよいよ主人公たちは何十万という人が今も眠る「ホープ」に再度訪れる。

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 さてお待ちかね、ターミナルによる「22000日前の真実」もようやく語られることになる。ここで「あの時居た人々」の物語が明かされるのだが、それもまた絶品だ。懸命にホープを目的地に向かわせる船員の記録は、思わぬ結末を迎えるのだ。

 

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 かつて叶わなかったハルシオン星系への到達。果たしてコロニーはどんな物語の結末を迎えるのか、それは正に「プレイヤーの手にかかって」いる。

 

「話す」事で変わっていく「現実」に打ちのめされてくれ。

 アウターワールドはフレーバーとシステムで言えば、非常に淡白なシステムを圧倒的なフレーバーが覆っている。クエストも整理してみればダンジョンの奥に行ってボタンを押したり装置を拾ってきて、また次の話をするだけだ。とは言えそれからまた話が転がりだすわけで、私は飽きずに15時間の旅を楽しむことが出来た。

 惜しむらくは戦闘やシステム側があまりに淡白であった事だ。冒頭に書いたとおり、このゲームは最強武器のマシンガンをバーっと撒いているだけで終わるし、武器に属性もサクっと付けられるので武器を選ぶという事もあまりない。派閥と仲良くなれば弾薬は激安になるのであまりリソース管理という部分もない。最高難度ならいざしらず、装備の耐久度周りはただ煩雑なだけだったし、サバイバル要素を楽しまない場合飲食物は取る意味すら無かった。いつものごとく重量制についても余計だったように思える。

 戦闘が淡白なのでパークによる強化も魅力的にならない。なので事前に宣伝された「デメリットを受け入れることで強化も!」という部分も大したことにはならなかった。というかデメリットで会話や解錠が下がると、単純にイベントがやりにくくなるのもよろしくない。

 が、逆に言えばそれは難度がかなり抑えられており、万人に「会話劇」と「軽めの探索・冒険」を提供できるという事にほかならないと私は考える。まだ遊んでいないのにもしこのレビューを読んだなら、是非アウターワールドを遊んで欲しい。

 アウターワールドバイオショックよりバイオショックをしているが、ボイスログもサイコも居ないがゆえにバイオショックではない。アウターワールドボーダーランズよりボーダーランズしているが、ハクスラでも無ければバッドアスも相手にしないのでボーダーランズではない。アウターワールドはフォールアウトよりフォールアウトしているが、探索も遺跡も各種ログもそんなになく、決して「真のフォールアウト」ではない。

 貴方はアウターワールドに何の思い出を見るだろうか、是非その答えを聞かせて欲しい。

 

 

あ、一つ伝え忘れてた。

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アウターワールドにも「アンデール」要素、あります。

天気の子について書いたら監督に読まれた上にアンサー貰った話と、あの日とあるオタクに何が起こっていたのか。

blog.hatenablog.com

 私の記事がはてなのベストセレクション2019に選ばれました。

 

cr.hatenablog.com

  選ばれたのはもちろんこの記事。『PS2版天気の子を俺たちは遊んだことが有る気がしてならないんだ。』です。

 

 大反響でした。
 あまりにも、大反響でした。

 

 その記事はminori作品(新海さんが作品のアニメーションを制作していました)の主題歌を担当していた原田ひとみさんに届き――

  また、メモリーズオフシリーズやカオスヘッドシュタインズゲートのライターの一人である林直孝さんに届き―― 

 

 

そして。

www.animatetimes.com

 

新海:僕は、冲方丁さんのは怖くてまだ読めてないです(笑)。ブックマークだけはしています。

「2000年代美少女ゲームが原作である」みたいなみんなのネタもネットで見ました。

例えば、夏美ルートにいってしまう場合、ここのイベントは発生しない、いろいろあってトゥルーエンドがこの映画とか。

なるほどねと。確かにそんな解釈もできるかもねと思ったりしましたね。

それで盛り上がってる事自体はすごく嬉しいんですよ。今の若い子とかで「え? これ美少女ゲーム原作だったの?」って真に受ける人がいたりして(笑)。違うって否定して回るのも大人気ないから黙っているんですけど。

 

kai-you.net

 

movie.walkerplus.com

中には「2000年代の美少女ゲームのようだ」と言っている方々いて(笑)。僕は昔、美少女ゲームのOP映像を制作したこともあったのですが、当時を知っている30〜40代、あるいは50代くらいの方が『天気の子』を楽しんでくれていることに同じ時代を生きてるんだなという嬉しさを感じます。

その方々の感想で「本当は夏美ルートと陽菜ルートとが存在して…映画版はトゥルーエンドだ」といった意見もSNSで見かけるのですが、その気持ちも分からなくはないんですよね。選択の分岐が見えるみたいな(笑)。面白いこと言ってるな、と思いながら読ませていただいてます。

 なんと、新海さんに届いてしまったのです。

 

 

 

  私の感想とも、妄想ともつかない叫びがついに届いてしまったのです。

 

 ブロードバンド網が引かれ始め、WindowsXP搭載パソコンが出回りだしたあの時。間違いなくアドベンチャーゲームは、ビジュアルノベルは、私の「最先端の娯楽」でした。音楽と、音声と、様々なイラストやエフェクトで彩られた物語をプレイし、エンディングを迎えて夜明けの空を見上げた日々が、私の青春の一部でした。

 教室の隅で一人本を読むよりも、もっと深く。専用の機器を必要とするような物語を読み耽る。それは恋についての話だったり、過ちに改めて向き合う話だったり、サイバーパンクだったり、吸血鬼であったり、ロボットアクションであったり、日本によく似た別の国だったり、枯れない桜の島の話だったりしました。

 でもそれは少し考えてみなくても、論理的に破綻していたり、ありふれた展開であったり、山場を作るために人が死んだり消滅したり。既存の物語よろしく陳腐な要素はもちろん内包していましたし、そもそも結ばれた2人の”そういう行為”まで描くからこそ「エロゲー」だとか、「ギャルゲー」だとか呼ばれていたわけで。理由は人それぞれあれど、どこか公言するのは憚られるものがあったのは事実でした。

 

 しかし。

 

www.youtube.com

日陰者みたいな気分で彼らは語っていますけど、彼らのような人々にリーチする力のある人物が自分の世界や想像性を共有して、それが広がってきてるような気がするんです。

僕は昨日、新宿を歩いていたら、小学生の女の子を連れたお母さんに声をかけられて、「今、バルト9で見たんです!」って言われたんです。「この人監督よ! 握手してもらいなさい!」って。

小さな女の子に、僕のことが分かったのかな? と思いながら、「ありがとう」って握手したんです。

2000年代に僕らが見ていたものが続いてきて、『天気の子』になって、20代の母親が小学生の女の子を連れて行って見るような映画になっているんです。

だからもっと誇りに思っていいと思うんですよね。自分が好きなものを。

  

 作品のそこかしこを「私の好きだった何かのようだ!」等と拾っていった言葉を全て消し飛ばすのではなく、そう言ってきた私達に。そして過去に様々な物語に触れていたあの日の私達に。新海さんは「もっと誇りに思っていいと思うんですよね」と言ってくれたのでした。

 

 

 

 

 そんな事が2019年の夏にあったんだよって。誰かに話したかったんです。

 

 

天気の子 complete version (完全生産限定BOX)(CD+DVD+ARTBOOK付)

天気の子 complete version (完全生産限定BOX)(CD+DVD+ARTBOOK付)

  • アーティスト:RADWIMPS
  • 出版社/メーカー: Universal Music =music=
  • 発売日: 2019/11/27
  • メディア: CD
 

 

 

小説 天気の子 (角川文庫)

小説 天気の子 (角川文庫)

  • 作者:新海 誠
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/07/18
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

 ここから、あの映画とあの記事に至るちょっと前の話をします。

 あの映画が劇場で公開される少し前、京都で大きな火事があり、沢山の人が亡くなりました。その時に僕の学生時代の友人が亡くなっています。

 何年も前に「アニメーションの制作会社で働くことになった」と話したのが最後の会話でした。 彼と「オメガブーストが如何にヤバいか」「ANUBISというゲームが如何に素晴らしいか」を語らった時間は、間違いなく今の自分を形作っています。

w.atwiki.jp

 

 『こみっくパーティー』だとか『サモンナイト』シリーズだとか『うたわれるもの』だとか、『テイルズオブ』シリーズだとか、『スターオーシャン』シリーズだとか、あの頃の話題はそんなゲーム達でした。

 そんな彼が公には「安否不明」なまま。せめて何か創作にでも触れないと精神が潰れるぞと身体を無理やり奮い立たせ劇場に足を運んだのが『天気の子』です。

 

 『天気の子』に原作ゲームがあった!なんてのは、もちろん嘘です。だけど私が「まるであの頃のようだった」「そしてその先を見せてくれたよ」と思ったのは確かな事で、どうしても私の中の熱を書き出したくてしょうがなかったのでした。そして出来上がったのがあの記事です。

 

 結果、その「嘘」で多くの人を笑わせたり、驚かせたりすることが出来ました。最後にちょっとだけ本当の話を織り交ぜたあの記事は、本当にたくさんの人に読まれました。15年以上に渡り、こういう文章書きをやってきたのは、きっとあの記事を書くためだったのかも知れません。

 「また今度」と別れた彼とは、もう二度と会えません。僕にとっての青春がまた一つ終わった時でした。しかし、あの日々から続いて、始まっていくものが確かに劇場にあった。ドリキャスだとか、PS2だとか、そんな事を書いたのは……単にサブカルチャーや新海さんの辿ってきた道の話でなく、僕自身の人生の「あの頃」と、繋がった「今」の話をしたかったんです。

www.youtube.com

  これで2010年代の記事はおしまいです。

 また2020年代にお会いしましょう。