CoD:AWをノーマルで一周した記事。

Call of Duty : Advanced Warfareをノーマルで一周した。

 今回は2060年前後を舞台にした近未来が舞台であり、アトラス社という巨大企業とEXO(エグゾ)と呼ばれる強化外骨格が鍵の物語である。

 グラフィック面では旧世代機を遂に切り捨てたからか、舞い上がる火の粉のパーティクル表現からトロットロに蕩ける被写体深度(ボケ)まで演出面もかなり強化されている。HUDが極力排除され、画面の右下の銃に残弾やグレネードの残数が表示されるHALOのライフルのような形式に変更された。

 また、歩いたり走ったり匍匐前進する時に従来の作品よりかなりキツく揺らしてくる。これは賛否両論在るかもしれないが、私にとってはかなりの没入感をもたらした。ADSでの射撃時には思わずモニタの前で前のめりになって画面中央を覗き込んでしまったほどだ。

 そして今作はCoD:BO同様にZ指定の作品である。ガラスを口に含ませてからブン殴る拷問よりも、今作のCoDではもっとおどろおどろしい世界が待っていたのだ。

 

 

「最先端技術」による蹂躙と、「最先端の戦場」

 主人公は序盤、混迷を極める朝鮮での戦闘で戦友と片腕を失う。その後、亡き戦友の父親からの誘いも有りインフラから軍事力まで提供する企業「アトラス」に入社し傭兵として戦うことになるのだが、ここでのパワーの差の描き方が素晴らしい。

 まず主人公とプレイヤーが体験するのはとある山荘に拉致された大統領の救出任務。あと一歩で救い出せるところで主人公の義手が麻痺してしまい、敵対組織に倒されてしまう…画面の左上には「作戦失敗」の文字。ゲームオーバーか?と思いきやそれは実際の景色と見間違うほどの「仮想空間」での訓練だった…というところから始まる。投げるだけで効果範囲内の人間を全て浮かび上がらせるスレットグレネードや超小型EMPグレネード、一定時間周囲に全く音が聞こえなくなるミュートチャージ(無音爆弾とでも良いのだろうか)など、従来描かれてきた近未来とは少し違う戦いを見せてくれる。

 そんな風にアトラス社の最先端技術を観た後は、ナイジェリア・ラゴスにて本物の大統領救出作戦が始まる。相手はいわゆるテロリストなのだが、そんなテロ屋の戦争のやり方と主人公達の戦い方の差は歴然だ。ドローンやスキャンを用い事前に屋内の敵の配置を完全に把握して抹殺し、無音爆弾により音もなく壁を発破し潜入し、更には体感する時間の流れを遅くさせ超人的な速度での射撃を可能にするオーバードライブ機能まで強化外骨格にて可能にする傭兵達の姿がそこにある。テロ屋が車で技術者達を拉致しようが、主人公たちは車の上をヒョイヒョイ飛んで追いかけてくるのだ。装甲車で妨害しようが強化外骨格のパワーで装甲をひっぺがして来るので手のうちようがない。

 もうこの時点で「アドバンスドウォーフェア」を体現している。到底「現代戦」ではあり得ないアトラクションを早々とプレイヤーに体験させてくるのだ。

 

砲台ステージとの決別。そして更なるアトラクションへ。

 FPSに有りがちな事として、移動を封じられたまま自動で動きつつ色々なものをうつだけの「砲台ステージ」とでも呼ぶべきパートが存在する。今作はそこも飽きさせないようにバリエーション豊かだ。恐怖の殺人ドローン、ボート、戦車、戦闘機、空母の巨大レールガン、そして超大型パワードスーツ。どれもゲームプレイのアクセントとして素晴らしい物ばかりだ。特に素晴らしかったのが作中でASTと呼ばれる超巨大パワードスーツ。ガトリング砲とマルチロックオン可能な対人ミサイル、そして無誘導のロケットを搭載したパワードスーツに乗り込み、並み居る敵を一網打尽にするパートは同年にリリースされたタイタンフォールに勝るとも劣らない爽快感だったと言えよう。

 どれも確かにリプレイ性はそんなに無い。もしこれが一人でも敵を撃ち漏らしたらあっと言う間に殺されるような作りならどんどんうんざりしていっただろう。だが今作ではそこを「ヒヤヒヤする逃避行パート」「一気にやり返す無双パート」と割り切っているお陰でまさに「駆け抜ける」事ができた。これはアトラクションとして正しい判断だったといえる。

 戦闘も「あの場所へいけ、前進しろ。目の前の敵とだらだらかくれんぼしながら戦え」というものだけでなく、ちょいちょいステルスごっこを挟んできたり、メルトダウンを起こす寸前の原子力発電所から全力で逃げたり、恒例となったドア破壊からを潜入をしたりと乗り物以外でも飽きさせることがなかった。ケチを付けるとすれば「主人公が爆風等で吹っ飛んで昏倒する」「落ちそうなところでは必ず主人公達が落ちる」というのが話の進行を若干停滞させるのが歯がゆいぐらいだろうか?

 

ホワイトハウスすら戦場にしたシリーズは、遂に世界そのものを敵に回す

 シナリオ終盤、愚かな戦いを続ける世界そのものを終わらせる為にアトラス社の社長は生物兵器と最先端技術を以って世界に宣戦布告する。ゴールデンゲートブリッジは爆破され艦隊の船は次々と沈み、かつてアメリカが破壊し復興を遂げたバグダッド生物兵器の標的となり死の都となる。そこで捕まった主人公たちが見たのは、生物兵器の被験体となってしまった人々の死体の真空パック詰めが吊り下げられずらりと並ぶ狂った光景だった。なるほど、これじゃZ指定になるのも無理はない。

 「間違った大義の為に、善い人々が戦って死んでいく世界を終わらせたい。」それはアメリカから遙か遠く朝鮮の地で息子を失ったアトラス社の社長としては当然の思いだ。「息子は間違った大義の犠牲者だ」と口にしながら全世界を敵に回してでも戦争を終わらせるための戦争布告を行う社長を、僕にはどうも責める気にはなれなかった。

 しかしそのために無辜の人々が大勢犠牲になるのは間違っている。全世界へ細菌兵器をばらまくミサイルの発射まで秒読み段階となった基地へ、主人公と相棒がパワードスーツで潜入して敵を蹴散らし、ついに見つけたミサイルへ文字通りの「全弾発射」を行うシーンはともすれば2010年台前半のアクションゲームのベストと言っても良いぐらいの出来だった。戦争を終わらせるためのトリガーを正に引き、ブルブルと震えるコントローラを握りしめる。これぞゲームだと言われたら否定しようがない濃密な時間だったと言えよう。

 

 …とは言え、中古1500円でPS4版を買えたから良いのであって、仕事の片手間に買って3日でサクっと終わってしまう程度のボリュームだったのは確かだ。既にオンライン対戦は過疎も過疎であり、一回も対戦ができないまま二束三文でGEOに売り払ってしまいそうだ。次はIWか。それともBO3か。何にせよせっかく買ったPS4Proを使い倒してみようと思う。