3信者から見たFallout New Vegasレビュー

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fallout new vegas(FONV)をイエスマンルートとNCRルートでクリアした。三周目に入る前に、この作品に対する感想を書きたいと思う。

本作はfallout3の2年後にリリースされた。
開発したObsidian Entertainmentには「fallout1,2開発陣」が多く在籍しており、この「3」のエンジンを使った新作は「本家によるfallout新作」であり、作品の内容も、成功が約束されていた。

 

はずだった。

JRPGじみた洗礼とAP弾

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ゲーム開始早々、北に向かうとプレイヤーはカサドレスとデスクローに襲われる。ゲームデザインによる「まだこちらに来る時期ではない」という警告であり、「自由」を取り上げる行為だ。それはfallout3にあった「何処にでも行ける」というものを真正面から否定してしまった。

これは正に、ワールドマップと街とシナリオの流れをガチガチに固めた、旧式でJRPGじみたやり方だ。目につくどこに行ってもいいわけじゃなく、「とりあえず俺の言うルートで観光して来いよ」と言う、旧式のやり方だ。プレイヤーの体験じゃなく、キャラクターの台詞によって世界を説明するやりかただ。

3の魅力はまさに「何処から楽しんでも良い」だったのに……始まりから嫌な予感がした。

また、FONVではVATSが非常に頼りない。命中精度も低ければダメージのカット率も下がっていて、単なる「接近戦での補助」に成り下がっている。その癖、武器の攻撃力も低く敵のアーマーを貫通出来ないので、ダメージを覚悟しながら接近して頭を確実に抜いていくほかない。弾薬も、スティムパックも、凄まじい量が消費されていった。戦うための「稼ぎ」が、要求された。

通常弾はあっという間に不要物になった。頭だろうが胴体だろうが、まずはAP弾を撃ち込まねばならない。AP弾の撃てる武器を使わねばならない。AP弾を使わねば、敵の四肢を破壊する事すらままならないからだ。NCRの前線基地に滞在し、次の拠点に向かうための十分な量の弾薬を確保することが必要になった。

行動も装備もガチガチに決められている。ノバックにつくころには、私はすっかりゲームに疲れ果てていた。これは、fallout3の続編として期待されていたものではなかった

 

 

「運び屋」の「おつかい」

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今回、新要素として「派閥」の要素が実装された。派閥からの好感度が高いと組織に認められて特定のクエストが受けられたり、アイテムを一つもらえたりする。というか、派閥に敵対すると、その派閥が襲い掛かってきたり出来ないことが増える。の方が正しい。

「運び屋」は派閥の部外者で、派閥に気に入られるためにはお遣いをする必要がある。「おつかい」なのは今は置いておこう。この言葉は古今東西のゲームを批判する為に使われ過ぎた。問題はそこではない、何のためにクエストを行うのか、が問題なのだ。

「気に入られるためにクエストを行う」のだから、気に入られるためには極力戦闘を避ける必要がある。人命を助ける必要がある。何をどうしたって「気に入ってもらうため」なのだから、後味の悪い結末は訪れない。「妙な事をしてる奴がいる」なら、話しかけてとっちめようが、そのまま殴り殺して汚れ仕事を引き受けようが、話は淡々と続くのだ。そこに物語は無い。そこに在るのは、強いて言えば「恐喝」と「数百キャップの報酬」だけだ。

敵対するのは簡単だ。派閥の人間を殺せばいい。そうすれば町中から嫌われる。その代り街の機能が使えなくなる。本当にそれだけの話だ。前作の「善悪」からくる「自分で選んだが故の物語の結末」という感じは随分と薄れた。逃げだした奴隷達を支援してリンカーン記念館を制圧したり、はたまた彼らを売り飛ばしたりというあの感じは殆どない。

また、「派閥」に固執し過ぎて、「ひょんなことから大騒動」という感触も無い。強いて言えば「住民がグール化した町」の正体が「リージョンによる放射性物質ばらまき」だったぐらいだが、そんなもの3のグレイディッチにおけるファイアアント事件どころかアンデールの人食い程の物語も無い。

全ては派閥システムに起因している。「気に入られるため」に戦うのだから、細かいクエストを進めた所でショッキングな結末が訪れるわけがないのである。もし戦う事があれば、それは「運び屋」の能力が低いせいだ。運び屋の能力が低い、つまりSPECIALが低いとか、スキルポイントが低いとかで「戦う以外の選択肢を選ぶことが出来ない」から殺し合う事になる。speechやbarter、そしてrepairの無さから殺し合いが始まり、スティムパックが消費される流れはNVにおいて日常茶飯事だ。

今作は「全てのクエストが会話で終えられる」事が一つのウリとなっている。INTが高ければ知的な言葉で説き伏せられるし、scienceの知識があれば科学知識で説き伏せることが出来る。……「話す方が、楽じゃないのか?」と思わせた時点で、この手のゲームでは失敗だろう。

故に言わせてほしい。FONVは、クソデカいマップをファストトラベルしては会話し、その結果をまた伝えるためにファストトラベルする「おつかい」だらけだと。退屈な長編シナリオを会話か銃で進めていくだけの「大ボリューム」の作品だと。

 

「小話」

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幸運なことに、派閥システムから引いた物語は面白い。モハビ・ウェイストランド版アンダーワールドである「ブライト教団」の宇宙へのグレート・ジャーニーはステルスによるナイトキンとの会話での退去要請を行ったり、ハゲをグール化だと勘違いした科学者の復讐を手伝ったり、ロケットに細工をしたりと3のクエストの要素が満載だ。

ブラックマウンテンのスーパーミュータントの物語はラウルを連れ出しての大暴れでも良いし、ロンダを修理しての和解でもいい。そのラウルだって彼なりに人生について悩んでおり、プレイヤーは旅を通じて彼の在り方についてアドバイスすることが出来る。ED-Eの秘密や、ブーンの葛藤とビタースプリングの決着も素晴らしい。

特に派閥に干渉することなく、彼らだけで決着しているからこそ濃密で面白い。売りである「派閥」のシステムが、見事にfallout3の「オムニバス」な感触を殺してしまったのが良く分かる。

DLCも勿論「派閥」とは関係なく、周回プレイに組み込むに持ってこいの物語と結末が用意されている。伝説のカジノのお宝の物語も、ザイオン国立公園の部族対立の物語も、200年を生きる脳たちの物語も、「もう一人の運び屋」の物語も良い。特にOld world bluesは私のお気に入りだ。

「ひょんな事から大騒動」
これがfallout3及びoblivionが愛された理由の一つである。始まりはプレイヤーにとってはちょっとした頼まれごとでも、クエストを進めるうちに人々の思惑が明らかになったり、過去に起きた事件が絡んで来たりする。そして、会話だけでなく時に破壊される装置や流れる血によって、物語の流れを決定づけていく。何度読んでも、そのクエストのトリガーを引く瞬間が面白いからこそ、人はそのゲーム世界を何週も遊びたくなる。

だけども、NVはそこを見誤った。スケールの小さい、みみっちぃ会話劇しか、そこには無かった。

よりRPGじみた方向に傾いた割にFPSしたがる戦闘と装備

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cr.hatenablog.com

 こちらに戦闘システムのグチは長々と書いたが、結論から言えば敵の攻撃力を防ぐに足る防具、それと敵の防御力を上回る攻撃力で固めていく必要がある。敵の四肢を砕き、ダメージを与えて弱らせてから頭を打ち抜くというアクション要素。それにDT制を加え、敵に応じた装備と弾薬の選択によって、3よりも更にRPGらしくした。流石1と2を作った人間たちが関わっただけある。叫ばれるほど「最悪」でも「クソ」でもなんでもない。一度AP弾の事を受け入れてみれば悪くはない。

これはプレイヤーから装備の自由を取り上げた代わりに、防具をメンテナンスし弾薬について考えさせた。「何かだけを使い続ける」のは無理になったので、アイテムへの拘りを捨ててしまえば楽になる。アサルトカービンにAP弾を込め、MODを装備し、戦闘直前に薬物を摂取して戦う。この場合の薬物はヘイストやバイキルトに相当する。これさえきっちり守っておけばいい。「聖剣エクスカリバー」に相当するのはAP弾を込めた対物ライフルとヌカランチャーだ。

武器MODだが、DLCの無い状態では自己満足に過ぎない死にシステムだ。というのもユニーク武器にはMODが付かず、基本的にこの数千CapするMODというのは「ユニーク武器を手に入れるまでの繋ぎ」でしかない。DLCで手に入る武器群は只でさえ強いのにMODで更に強化できるので探しがいがあるものの、GRAで追加されるユニーク武器にはやはりMODが入らない。GRA武器かつユニークでないもの、となるとバットや対物ライフル、それにカタナとチェーンソーと言った所か。実用的な物に限ればGRA対物ライフルに1万Cap弱を払って強化するぐらいで、他は別に使う必要が無い。ユニーク使わない縛りでもするなら、別だが。

NCRに敵対しようが、リージョンに敵対しようが、固い連中が徒党を組んで殴り掛かってくるので集団戦に対応するため爆発物も必要だ。今作強化されたコンパニオンも連れずに歩き回るなら猶の事である。

さて、ここまで戦闘スタイルをカッチリ決めたのだから、あとはVATSさえ強力であればいいのだがそうは問屋が卸さない。本作のVATSは命中率が低く、あくまで補助だ。ここでアクションRPG方向に傾けておけばよかったのに、プレイヤーは遮蔽物を探し、APを溜めながら当たりもしないAP弾をばら撒くことになる。VATSを使おうが使うまいが、攻撃は姿を晒して撃つ事になるのだから被弾も当たり前だ。

「アイアンサイト」及び「強化されたTPSモード」の実装により、VATSを補助に回したわけだが、ここでまたシステムの食い違いが起きている。求められていたシナリオの「オムニバス」な感じと「派閥システム」がかみ合わなかったのと同じ、NVの大きな失敗だ。

V.A.T.S.が3でどのように動作し、NVで間違えたのか

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まずfallout3のVATSは補助なんて物では無い。むしろリアルタイム戦闘こそ添え物であった。弾薬は貴重、回復薬も貴重、だから一瞬で決着をつけなくてはいけない。VATSは戦闘を一瞬で終わらせるからこそ、ゲームのテンポも確保されていたわけである。殺すのも部位破壊をするのもVATS頼み。そりゃあそうだ。走り回る人間の手足など狙って打てるわけがない。

VATSの有用さによって実現された「いつ、誰の、どこに、何発銃弾を撃ち込んでやるのか」という選択の楽しさが、fallout3が「RPGFPSの見事な融合」と評価された理由である。VATS発動中のダメージ95%カットは、多勢に無勢の集中砲火からプレイヤーを救い、何より「RPGのコマンド戦闘で先手を取る主人公」の再現に成功していたわけだ。

が、NVの開発陣はVATSを補助的なものと見做し、プレイヤーにアクションゲーマーとしての腕を求めた。弾薬を無駄にするのはプレイヤーが下手なせい。ダメージを食らうのはプレイヤーが下手なせい。近接武器で戦うも蜂の巣にされて死ぬのもプレイヤーのせい……「ゲーマーとしての腕が無くても、下手でも出来る」という3の作りとは真逆である。

AP弾の入手経路が限られているのだから、AP弾はここぞというときに撃たねばならないはずだ。だからこそVATSで仕留めたいというのに、NVのVATSはどうにも弱い。困った話だ。RPG要素を強化したのに、RPG要素が削除されてちぐはぐになっている。

DLCとParkによる「システムの歪み」のオーバーホールの試み

DT制でAP弾も爆発物も使う事を要求したNVだが、DT制について見事な大ポカをやらかしている。

DT制は使用者の武器の威力から対象のDT値を引いてダメージを算出する訳で、DPS(1秒当たりの火力)が高い代わりに武器ダメージ(1発当たりの威力)が低い武器は何もかもが死に武器になっている。散弾を使うショットガン。小口径のマシンガン。ガトリングガン、レーザーガトリングガンが該当する。さらに「命中精度が高く、軽い割に使える弾薬が限られ威力も低い武器」も死んでいる。大口径のリボルバーから消音ピストルまで全てのピストルが該当する。

これに対し開発側が行ったのは、ParkとDLCによる修正であった。

Park「Shotgun Surgeon」では対象のDTを10無視できるし、repairが70を超えるとリロードベンチで強力な弾薬が作れるようになる「Hand Loader」が取得できるようになる。そしてDLCを入れると更にこの「Hand Loader」が強化され、対象のDTを更に無視する弾薬が作れるようになる。これで、”やっと”死に武器判定されていたが多少使えるようになる。が、各種クリティカル補正は、ショットガンもマシンガンも「弾丸一粒」にかかるので、期待出来ない。そこそこ使えなくもない程度だ。

正直、GRAとキャラバンパックは、金をとるもんじゃないと思う。

あんまりな幕引きとクエスト関連

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運び屋はプラチナチップを手に入れると、その後のフーバーダム決戦につく陣営を選ぶことになる。どの陣営についてもやる事は変わらない。「事前にモハビの全ての連中と話をつけて消化試合を終わらせてからフーバーダム決戦イベントを発生させる」これに尽きる。何をやってもやる事は変わらない。

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確かにミスターハウスの最後に驚きはしたが、それも最初の一回だけだ。あとは何をやっても、やれ「グレートカーンを殺せ」「フィーンドを殺せ」「アポカリプスの使徒に話をつけろ」「ザ・キングスと話せ」こんな事ばっかりだ。そこには淡々とした会話イベントこそあれど、ドラマはない。そこに奥深さは無い。雑用をこなすための大使だ。ファンネルだ。下らない。本当に、くだらない。

誰かが住んでいたであろう道端の空き家を漁るだけの、誰かに気に入られるためのおつかいだらけのモハビ・ウェイストランド。fallout3をプレイしていた人々が望んでいた新作は、恐らくこれじゃあない。

スライドショー

今作はDLCだろうが本編だろうが、終了後にスライドショーが入る。関わった全ての街と人々のその後が語られるので、クエストの数をこなせばこなすほど面白くなる。これは非常にいいと思う。プレイ中こそあんまりに地味すぎてがっかりする結末を迎えるクエストだが、クリア後となるとやけに面白い。ここでも3のような「短編集」のようなクエストの山々ならもっと面白かったろうと思ってしまった。

次のfalloutは、きちんと建物にもクエストにも「物語」がある事を望む。