「財布から金を出す」感覚が大事だってお話。

SteamSteamがDLゲー販売で天下獲って久しいですね。しかし戦いはこれだけでは終わらず、「Steamに登録するキー」を売る商売が近年激化しています。

購入の流れを説明しますと、通販で買う→Steamのコードが送られてくる→そのコードをSteamクライアントに入力→アカウントに登録される→DL開始→ゲームプレイ!といった所。
「独自DRM」と言われるマルウェアまがいのソフトを常駐させる時代はほぼ終わりを告げました。今はDL販売界の巨人であるSteam用コードをお店で買う時代なのです。お店としても変なソフト作んなくていいし買う側も一本化できるので非常に幸せです。

有象無象の「DL販売サイト」だけでなく、なんと店頭でのパッケージ販売のソフトですら「説明書の裏にSteamキーが書いてあるから入力してね」という時代です。最早手元のディスクも説明書も記念品と満足感の為の様なものです。おそろしや。

いつまでも「CDいれろ」「CDコピーなんかさせないぞ」「修正パッチはシリアルコード入れた奴しかだめだ」「店頭で1万円出して買え」等と喚くどこぞの業界にも見習ってほしい所です。彼らはゲームディスクをドングルとして使わせることにより、その間光学ドライブが完全に使い物にならなくなるという認識を果たして出来ているのでしょうか。まずそこが疑問です。

OriginsEA_logo

 

さて、Steam以外にももう一人巨人がいます。そいつのなまえはOriginと言います。みんな大好きEAの配信プラットフォームですね。独自のフレンドリストもやるし、Statも取っておいてくれるサービスです。Originの特徴は Steamみたく専用のコードを使うのでなく「インストール用のライセンスキーを入力」すれば古今東西のEAのゲームを大体登録できてしまうという所です。

OriginはBF3ベータの出た去年の夏頃に誕生しましたが、2008年に出たデッドスペースを難なく登録できてしまいます。これはSteamでは出来ない芸当でしょう。自社商品ならではの展開ですね。

SteamとOrigin、この両方に登録できるキーを売りさばく死の商人。EAが未だ販売を許す業界最大手がAmazonです。Amazonと言ってもアマゾンコム(北米)のほうですね。そんなAmazonのホリデーセール(年末セール)がこちらです
http://www.amazon.com/gp/feature.html/ref=bt_atcg_mine_cta?ie=UTF8&docId=1000716161&ie=UTF8&pf_rd_m=ATVPDKIKX0DER&pf_rd_s=center-2&pf_rd_r=0YJ2V2086H5VMG5AMN6B&pf_rd_t=101&pf_rd_p=1445587562&pf_rd_i=979455011

こちらの見所はBioshockシリーズやCivシリーズがまるっと入ったパックですかね。2KとTHQのゲームは大抵Steam登録できます。Civ5は日本語版がちゃんとDL出来るので安心ですよ。

年末セールのソフトに目が行くのも当然ですが、実は「ザ・シムズ3」と「シムシティ4」がトップ20に居ない日はまずありません。DL販売とPCゲームの相性は家庭用機のそれを大きく凌駕しています。恐ろしい。何より「ちゃんと売れる物作れば8年経っても売れる」というのを実証したのが恐ろしい。初週売上が2万だどうだって煽り合ってる日本が恥ずかしくなってくるレベルです。なおPC版BF3も連日ランクインしていますね。

さて、家庭用機というかニンテンドーの話です。
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今やミリオンセラーを飛ばしまくっちゃう業界のドンであるニンテンドーですら、発売日同日に公式DL販売を始めました。「DL版の方が高い」とか「3DSのSDカードの調達という風習が根付いていない」とかでなかなか前途多難です。ソフト自体の長い目でみたアップデートと同時に、中古市場に合わせた値引きと日替わり週替わりのセールがこの手の販売には不可欠です。

ソフトの売れ行きが良すぎて、入手しにくくなったことをお詫びし、社長が何度も何度も頭を下げる動画が出た時は本当に驚きました。こちらがそのURLです。
http://www.nintendo.co.jp/3ds/egdj/info/movie.html

嫌味にならない程度に何度も頭を下げる時点で凄いのですが、何よりも「どうぶつの森の為に高速・高価なカードを使わざるを得なかった事」「どうぶつの森が最新タイトルであったがために生産が読み切れなかった事」など、消費者が納得できるような説明を、専門的な言葉とその説明を交えてやってきたというその事実が凄いのです。後発のどんなねじくれた報道よりも、「直接」届けられる情報の方が質が高いというのはありがたく、信頼するに足り得るメーカーだとしか言いようがありません。image

この動画の最後で「ダウンロードの買い方も沢山あるんだよ」と紹介しているのも好感触です。DLカード版、DLコードの通販、ニンテンドーポイントの購入、クレジットカードでの本体チャージ。「○○ポイントでも売ってるよ」とだけ言って「うわあDL版売れないこれは撤退だ」とケツをまくったメーカーとは雲泥の差です。goとはなんだったのか。

さて、用意されている多数の支払い方法について「クレジットカード登録すれば良いじゃん何面倒くせえ事やってんだよ金なんか気にするなよ」とここまで読んで思った方も多いでしょう。コアなDL販売ユーザーなら当然の考えです。

もしこれが85円のアプリや250円の音楽だったら人はさして気にしないのです。DLゲームというのはとかく値段が張ります。どうぶつの森だと4800円。この4800円を銀行口座から引き落とすのも何だか気が引ける。ゲーム機にクレジットカードは登録したくない、そもそもどうぶつの森しかやらないのにゲーム機にポイントの端数を残しておきたくない。などなど「ポイントをチャージしない理由」なら沢山あるわけです。第一、ゲームというのは「小遣いで買う物」であり「余裕があるから買う」という嗜好品です。そういうモノや機械に対して、クレジットカードを使いたくないという人がいます。

一言で言いますと、「財布の中から、ソフト代だけ支払う」という体験が非常に大事なわけです。だからコードの印刷されたプラスチックのカードを、わざわざ買う人が続出し、大手家電量販店で「DL版売り切れ」という事態に発展したわけです。

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今時、コンビニはもちろん「西友のレジ横」ですらGREEのカードもiTunesカードも販売している事をご存知でしょうか。本来携帯電話の料金支払いに一本化出来てそっちのほうが便利なはずのGREEもそういうプリペイド方式も採用しているのです。GREE帝国の成立も、iPodiPhoneの支持されっぷりもこの「財布から金を出す」という基本的な事を疎かにしなかったからというのがあったと、私は思います。

ニンテンドーもこれに倣いました。しかも、 wiiDSiの頃から在る「プリペイドカード」だけでなく、「ゲーム代だけ払えばいい」というDLカードまで持ってきたわけです。ニンテンドーはよくよく他社のやりかたを見てきたんだなあと、感心するほかありません。


余談ですが、皆様2012年でAmazonJPで売れたゲームソフトTOP10をご覧になりましたか?
http://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/2012/videogames/ref=zg_bsar_cal_mo

8 位に「Xbox Live 3500 マイクロソフト ポイント カード」なる商品が見えますね。プリペイドコードで、通販で、日本じゃマイナーもマイナーなゲーム機の、5000円もするカードです。何に使えるかと言えば、ゲームのダウンロードにしか使えないカードです。

去年は1位でした。驚くことはありません。アイドルマスター2ドリームクラブZeroのような、所謂「紳士向けタイトル」があったのです。しかし今年に限っては本当にこれといった目玉タイトルがありません。一体、人々は何をDLしているのでしょうかね?


xbox_live_arcade_logo
今でこそDLゲームは「買いやすさ」の時代ですが、一昔前は「興味を持ってもらえるか」という時代でした。10 ドル~25ドルのダウンロードゲームを全世界から引っ張り、マルチランゲージ対応させ、全タイトルに体験版をつけ、ランキングやリプレイデータをサーバ側で保存。f全世界で体験を共有させる、という「ライブアーケード」の試みをマイクロソフトは既に7年以上にわたって続けています。

周辺機器であるKinectは、言ってしまえば1万円もするマイクとカメラです。技術的にはどうであれ、ユーザーにとってはそうとしか言いようがありません。そんな周辺機器が2000万台も売れたのです。フルプライスパッケージだけでなく、毎月必ず10ドルのKinect専用DLゲームが出ています。

数ばかり出して品質が低いと、ゲーム全体の質も低く見られてしまう、という事を恐れたMSは、ライブアーケードの本数を絞る事を選びました。見事配信が決まっても、毎週2本の枠に入るまで数か月かかった事もあるようです。目先の本数よりも、まずは「ダウンロードゲームの文化」をユーザーに根付かせることに腐心したMSの目論見は見事成功。フルプライスではないにしろ非常にクオリティの高い新作や、パッケージでは捌け無さそうな名作の移植やリメイクのひしめく一大プラットフォームに成長しました。Minecraftの配信と400万ダウンロード達成はそれの集大成と言えるでしょう。

今DLゲーム界隈で人気のカジュアルゲームもインディーズゲームも、「高いゲームだけじゃないんだよ」と毎週ゲームを並べ続けたMSの尽力あっての事……というのは言い過ぎでしょうか。「ゲームはまずは遊んでもらえなきゃ意味が無い」と全タイトルに体験版を設けるなんていうのは、ValveにもEAにもAppleにもニンテンドーにも成し遂げられていない偉業だと、私は確信しているのです。