スクールアイドルフェスティバルに見る何者にも成れなさ
さて、本日4月15日、iOS版のラブライブ!スクールアイドルフェスティバルが配信された。https://itunes.apple.com/jp/app/raburaibu!-sukuruaidorufesutibaru/id626776655?mt=8
というわけでダラダラとこのアプリについて書くが、まずこれだけ言っておく。
これソーシャルゲームじゃねえから。
※「スクールアイドルフェスティバル」では長いので、「スクフェス」と今後表記する。
「ソーシャルゲームじゃない」
数多くのソーシャルゲーム、が携帯電話向けにリリースされたため、Free 2 Play形式のゲームは何もかもがソーシャル扱いされる世の中になってしまった。が、今一度「ソーシャル」について考えてみてほしい。「ソーシャル」と言われる要素とは即ち「ギルド」と「プレイヤー同士の対戦」であろう。
が、スクフェスにはそう言う要素はない。他のプレイヤーとの関わる要素は「ゲスト」という音ゲーのスコアのポイントブーストに呼べるぐらいで、対戦要素も無ければギルドの要素も無い。ハッキリとした協力も無ければ殴り合っての獲得ポイントの競い合いのランキングも無い。
パズドラまんま、と言えば分かりやすいだろうか。他プレイヤーとの連携要素こそあれど、基本は一人なのだ。シングルプレイヤーゲームなのだ。
アイマスに、なりたい
スクフェスは多分に漏れず、大量のキャラクターを一斉投入している。それはいい。
だが、2つの間違いを犯している。
一つはキャラクターの掘り下げの無さだ。こんな風に衣装を差し替えられたところで魅力的かと言われると疑問だし、何より彼女達には自らを語る言葉が無い。
MtGをはじめとしたトレーディングカードやその影響を受けたゲームには、パラメータと絵柄以外に「フレーバーテキスト」と言われる文章が採用されている。
例えばこんなところだ。
http://www13.ocn.ne.jp/~forceof/MyPage/menu4.html
これにより世界観やキャラクターについてを雄弁に語ってきた訳だが、スクフェスにはそれがない。可愛らしい絵柄と各種パラメーターでしかないそれに愛着を持てと言うのは難しい。
そしてもう一つが、ラブライブ!の客層とラブライブ!という作品への見誤りである。
ラブライブ!のアニメはμ’sの物語であり、決して「スクールアイドル」というシステムがメインの作品では無かった。「μ’sは九人」と作中で何度も強調し、事実ラブライブ!のファンはμ’sの歌と踊りに夢中になった。ラブライブ!のファン=μ’sのファンだったのである。
モバマスの場合は違う。原作のゲームからして「765プロダクションの皆の仲よしこよし」ではなく、「Pとアイドル」の二人三脚の作品であり、数多くいたアイドルも厳密に言えば「アイドル候補生」でしかない。L4U以降希薄になった「プロデュース」を力技で戻したのが「モバマス」であり、多くのキャラを投入することで「従来の765プロの候補生以外もどんどんプロデュースしてみたい」という人も「アイドルマスター世界にまずは飛び込んでみたい」という人にも人気が出たのがあの作品である。
メインストリームである765プロダクションの候補生たちの物語がある程度煮詰まったからこそモバマスが展開できたのであって、ラブライブ!のアニメでもって「μ’sのファン」を増やした後に、こうやって有象無象を追加してもしょうがないのだ。有象無象を追加して、消耗して、消費して、合成して、絵を差し替えて、乱発して、ウケればそれでよしというモバマスのスタンスは、まだラブライブ!には必要ない。
モバマスの「始まり」はどうであれ、2012年のモバマスとはそういうものであった。例えるなら、ゲームセンターの景品から始まるキャラビジネスとか、そういうものに近しい所もあったように思える。据置ゲーム機においてDLC3億円分を売った巨人であるアイマス。バーチャルアイドル売って5年超のアイマス。残念なことに、スクフェスはその「アイマス」には成れそうにない。というか、まだなる必要が無いのだ。
僕が期待していたのは、μ’sの9人のゲームであり、9人だけのゲームであった。
間違いはこれだけではない。スクフェスで手に入るカードは「新入部員」という体なのだが、最初からμ’sの9人が揃っているわけではないのでこれで集めることになる。
ぶつかり合い、泣いたり笑ったりしての「加入」を描いた作品のゲームで、これは余りに軽率過ぎる。最初から、この「スクールアイドルフェスティバルという大人数でやろうというアイデア自体が間違えていたのだ。
なおμ’sメンバーのSR(スーパーレア?)とUR(ウルトラレア?)はアニメの絵柄での新規描き下ろしとなっており、可愛らしい私服姿の彼女たちが拝める。とは言えこのレアカードの入手は後述する音ゲー部分でのスコアアップにしか作用しない為、正に自己満足の要素でしかない。そのランキングだって「金を支払って属性揃えたもん勝ち」の「非音ゲー的ランキング」なわけで、どうにも妙な感じだ。
また、そもそもμ'sメンバー以外のレアカードは存在しない。故に本格的に非μ’sのモブキャラ達は「モブキャラ」である。絆(メンバーに組みこんでゲームをプレイした回数で上昇するゲージ)をMAXにして、そのMAXにした報酬のラブカストーン(これが何かについては後述する)をもらうだけだ。一応このモブキャラ達をセンターに組み込むとメニューで何か喋るのだが、ボイス無しで何の味気も無い。
「金を注ぎ込んでガチャを引けばレアカードが出てμ’sのメンバーが一杯もらえるよ」
なるほど、そりゃあ当然だ。こいつらはモブだもんなー。何?モバマスも金注ぎ込まなきゃ765プロダクションの面々に逢えないって?今ラブライブ!の話してんだよすっこんでろ。
で、「攻略」でも「対戦」でもなしに、レアリティとはこれいかに。
っていうかいなくなっちゃうって何よ。
待機スロットにμ’sのメンバーが複数人いて消えるって何よ。スタンド攻撃か。新手の。
隙間から大統領が連れて来たか。これジョジョだったわ。
カードゲームのお約束にケチを付ける不毛さは分かっている。だけどもこれは「雑」としか言いようがない。
パズドラになれない。
スクフェスではガチャやゲームの連続プレイにラブカストーンというものを利用する。
このゲームの何処にストーンが出てくる理由があるのかさっぱりわからないが、恐らくパズドラの魔法石は関係ないだろう。例え石を英語で言うとストーンだろうが、パズドラでの魔法石が1個85円でスクフェスのラブカストーンが1個85円だろうが、きっと関係ないのである。たぶん。
問題はその課金モデルだ。
楽曲のプレイにはLP(画面右上の数値)を消耗し、LPは1時間で10回復する。
画像にあるSnow halationという楽曲なら12LPを消耗する。12LPの回復にかかる時間は1時間12分だ。後半の「もぎゅっと"love"で接近中!」になると20LPで2時間おき1曲という調整になっている。
連続で遊びたいなら金を払え、という事なのだろうが、ここが既に間違えている。多くのソーシャルゲームの行動は一瞬で終わるのに対し、スクフェスの音ゲーは1回が重い。音ゲー部分の出来がそこまでよくないのもあるが、音ゲーをやるというのはパズルよりも更に気合を入れなければならないわけで、そんなに連続で遊ぶもんではないのである。
また音ゲー部分ではライフが尽きると、パズドラのダンジョンで力尽きた時のようにコンティニュー画面が出るのだが、これも間違えている。
パズドラのコンティニューはアーケードのアクションゲームやパズルゲームのコンティニューの感覚であり、ここで止めると「勿体ない」からクレジットを投入するそれの動きである。
だがスクフェスのこれはBEMANIシリーズで言う「閉店」の状態であり、ここから続けようと思うものはまずいない。何故なら「楽曲が途中で終了する」のは「自分の腕が足りないから」であって、ここで全回復されても残りの数十秒しか遊べないわけだし、何より練習したいのは閉店した場所でなく閉店するに至ったこの楽曲全てなのである。
というかLP回復があるならコンティニューは要らないだろ。普通。
音ゲーとしての致命傷
何度も楽曲をプレイし、Rankを上げればメインストーリーを読み進める事が出来る。まあそれはよい。メインスト-リーは何とμ’sの9人がフルボイスで楽しい掛け合いをしてくれる。それもよい。立ち絵が1枚で穂乃果がずっと口を何か開けてる。あまりよくない。それはおいといてもだ。
この楽曲の解除の方法に問題がある。
多くの音ゲーでは1曲目→2曲目→3曲目、と別々の曲を遊ぶのが普通だ。
が、このゲームではレベル上げで新曲解除、低レベル埋めで上位難易度解除となっている。
まず解除されるのが1stシングルから「僕らのLIVE 君とのLIFE」の「イージー」なのだが、この次に解除されるのが同曲の「ノーマル」で、その次がハードだ。
大体の人が辿るSnow halation解禁までの順序を書いてみよう。
- 「僕らのLIVE 君とのLIFE」の「イージー」
- 「僕らのLIVE 君とのLIFE」の「ノーマル」
- 「僕らのLIVE 君とのLIFE」の「ハード」
- 「友情ノーチェンジ」の「イージ-」
- 「友情ノーチェンジ」の「ノーマル」
- 「友情ノーチェンジ」の「ハード」
- 「Snow halation」の「イージー」
- 「Snow halation」の「ノーマル」
- 「Snow halation」の「ハード」
と、こんな感じである。友情ノーチェンジが出るまでは僕らのLIVE君とのLIFE1曲のみ。
スノハレが出ても実際は3曲のみ。この後baby maybe 恋のボタンが出て長い足踏みに入る。
これでお金を払ってもらおうというのは、少々無茶があるように思える。というか何故「僕らは今の中で」じゃないんだ。楽曲だってどんどん追加で良いじゃないか。ミクさんを見習えよミクさんを。遊べる楽曲の多彩さが無いと「それぞれの好きな事で頑張れ」ないよ。
音ゲーパートは中々ハードだ。チュートリアルに出てこない二個押しもそうだが、フリーズアローを押しながら別の指でタップしたり、トリル(隣接したボタンをパタパタ叩く)もある。ハッキリ言って音ゲープレイヤーでないとクリアすら難しいだろう。譜面が面白くない曲もあるが、まあSnow halationが面白かったのでよしとする。そう、ハード難易度での音ゲーパートはそれなりに面白い。
が、難易度ハードを名乗っているのに拍打ちか裏箔で手を休ませない作りになっていない所から、音ゲー研究のされていなさが滲み出ていて作りの安さに泣きそうになる。Klabに何か期待する方が間違いだろう。イージーモードこそ遊ぶ楽しさをちゃんと考えなきゃいけないのに、僕らのLIVE 君とのLIFEの譜面が実に雑で商売する気がほぼないように思えた。音ゲーなのに「暇」なのだ。
こちらの動画はDDRのチュートリアル曲である。大事なことが全部詰まっている。簡単なのに、楽しい。
どうにかならんもんか。
で、「キャラスキル」と称してポイントのブースト演出が出てくるわけだが画像の通り全力でノート(音符)に被っておりプレイの妨害でしかない。ここは何とか改善してほしい物だが開発会社がつぶれる寸前だ。もしこれがμ’sの9人の場合画面を希型巨人や凛型巨人だけでなくことり型巨人まで行き来するようになるわけで、割と今から気が重い。
そして最後。キャラを育てていない場合、パーフェクトでフルコンボを繋いでもB判定に乗らない事すらある。
スクフェスにはメンバーに3つの属性があり、楽曲の属性と合っていないとスコアが25%ほどにがくっと下がる。そしてメンバーのレアリティでもこのスコアの違いがあるので「初期状態でフルコンをしてもB判定にすら乗らないが、お金を注ぎ込んでキャラを育てて属性を固めてからプレイするとコンボを途切れさせてもS判定余裕」という事が起こり得る。それ音ゲーかおい?なにか間違えてないか?
次回までのラブライブ!
メインストーリーがフルボイスであることを考えれば、アニメやCDでない媒体での音声アリ展開も出来るし、まあカード要素はガン無視するとしても音ゲーはそこそこ面白いので「これ、どうやって黒字にすんのかな。SレアやUレア目当ての廃人が貢いで頑張るのかな」ぐらいの感じで生暖かく見守る事にした。
というわけでスクフェスは
- なんだか出来の悪いカード要素
- なんだか出来の悪い音ゲー要素
- なんだかお金のかかってないストーリー要素
の三つの合わさった、なにものにも成れなさそうなゲームである。Klab潰れろ。
なんかもう、いろいろやるせなくなったので最後に叫ばせてほしい。
お
お
応援だーーーん!!