CoD4はブレイクして当然だった。

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CoD4が何故凄いのか。どうして日本でFPSを根付かせる記念すべきソフトに成れたのかを、2007年という年を含めて今一度考える。後からCoDに入って「何故?」と思った人の参考になれば嬉しい。

5年経ってからの再考であり、一部認識が誤っている事もあるかもしれないと断っておく。

1.猿でも楽しくデスマッチ

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シングルプレイヤーのドラマチックな展開に対する称賛は別のサイトに任せる。CoD4は発売から1年で、PS3版で400万人、Xbox360版では1100万人にプレイされた。そこにCoD4ならではの要素があったのは、事実だと私は思う。

  1. 解像度を犠牲にして60fpsを実現した
    メーカーが思っているより、プレイヤーはティアリングや低フレームレートに敏感だ。CoDでは解像度を犠牲にして高フレームレートを実現した。これにより、「PC並」に快適な対戦が出来るようになったのだ。HALOやGoWのようなMSのAAAタイトルですら最新作は30fpsに甘んじているのに、CoDは今も60fpsを貫いている。
  2. 動かしててストレスの無いアニメーションと効果音
    リロード一つとっても、マガジンが銃に収まるときのサクッとした音やモーションが非常に格好いい。旧来のゲームが妙にぎこちなく、機械的に動作をこなすのと違ってCoD4のキャラは正に特殊部隊のそれなのだ。続編のMW2のFALのリロードにときめいた人も多いだろう。
  3. パッド操作への最適化を入念に行った
    マウスの軌跡を利用するPCのゲームと、スティックを使う家庭用ゲーム機のゲームは操作感覚が大きく異なる。CoDはスティックを倒す速さや入力時間に応じて振り向きやすく照準を加速させたり、キツめのエイムアシストを導入している。スナイパーライフル利用時には邪魔だが、多くの場面で気持ちよく敵を撃てるはずだ。
  4. UAVを導入した
    今でこそキルストリークは繋ぎに繋いで大打撃という印象が強くなったし、CoD4空爆とヘリが酷かった作品である。そしてCoD4のUAVは後のどんな作品よりも撃墜しにくく、効果時間が非常に長い。チームのメンバーが3キルさえすれば、索敵に気を取られることは無くなるわけである。

    BFがモーションセンサーやスポットで未だに索敵を行わせている事を考えれば、不意の一撃によるストレスの軽減に一役買っているのは事実だろう。初心者が一番躓きやすい索敵を、システム側で行わせた発想が素晴らしい。
  5. 過剰なまでの個人火力
    ストッピングパワー(動力を止めろ)を装備すれば大抵の武器で弾丸3発によるキルが可能となり、グリップを付けた軽機関銃ならなんと全距離2発のターミネーターになれる。これにUAVが加わるのだから、試合展開は速くなって当たり前だ。初心者でも誰かを殺せる。壁抜きが出来るのも大きい。例え逃げられてもそのまま建物に撃ち込めばとどめを刺せるのは、従来の「追いかけたら殺された」というストレスの軽減に成功している。
  6. リスポーン待ち時間無し
    殺された瞬間にX連打さえしておけばキルカメラをすっ飛ばして戦線に復帰が可能だ。自分を殺した相手に味方が気付いていなくても、自分で自分の尻を拭けるのは大きい。キルカメラを見ない自由がプレイヤーに与えられているのは偉大としか言いようがない。
  7. ヒット・キル確認が気持ちいい
    多くのゲームが小さなヒットマークを表示したりキルログを出すに留める所を、CoDはこれでもかと演出している。射撃だけでなく手投げ弾でも「ボツッ!」と音が鳴るのだからたまらない。アンダーバレルグレネードや空爆による連続したプチプチ音は正にパチンコのフィーバー状態のそれだろう。ずわっとキルログが進むのを見て胸の踊らない人間がいるだろうか?

    スコアが分かりやすく画面上に出るのも大きい。自分のアシストがチームメイトのキルになったというのが通知されるだけでも、自分が戦闘に参加している気分が味わえるという物だ。
  8. 多彩な武器カスタマイズとアンロック制度
    ただでさえ武器が多いのにその武器ごとに様々なチャレンジが用意されている。ヘッドショットチャレンジやキルチャレンジで「自分がどれぐらい武器を使いこんでいるのか」が分かるし、使えば使うほどアタッチメントが増えるのだから「やりこみ要素」としては合格だろう。
    実はM16という3点バースト武器が初期武器なのもプレイヤーの腕の上達に一役買っていて、ストッピングパワーを付けて撃てば全距離の敵を1トリガーで殺せるのだ。3点バーストに慣れてきたころにAKやM4A1、RPDに乗り換えれば初心者でもある程度はやれる。
    カモフラージュ(迷彩)やサイトも相まって、「俺の銃!」とやれる。自分で選んで使うと言うのは思ったより、楽しい。
  9. パークよるプレイスタイルの変化
    旧来のゲームは、例えば突撃兵や偵察兵といったクラスを選択して戦っていた。武器もその時点で決まっていただが、何より「そのクラスでしか出来ない能力」という物があった。これを選べる武器からガジェットの類、そして能力に至るまで分解し、自分で選ばせるのがパークというシステムである。

    攻撃力強化を選ぶも良し、爆発物強化を選ぶも良し、リロード速度向上を選ぶも良し。これにダッシュ時間強化や貫通力強化も組み合わせられ、その総数は膨大なものとなる。そのクラスも5つまで保存でき、試合の合間でも「これは何をするクラスだ」と試行錯誤出来る。武器と相まって、自分に合った組み合わせを試す楽しみが出来たのは大きい。何せ、1マッチ中の活躍以外でも「これが出来たらうれしい」という小さな目標が出来るのだ。
  10. メインルールにチームデスマッチを据えた
    既に大ブレイクしていたHALO2の一番人気がチームスレイヤーだった事を考えれば当たり前の話かもしれない。本来オブジェクティブ用に四角く作られたマップというのはデスマッチルールだと敵がどこから来るか予想できず、敵の発砲を待たねば大まかな位置が特定できなかった。HALOではこれをモーショントラッカーで解決しているのだが、CoD4ではUAVの導入により解決できた。まずはミニマップの赤点に向かって走って撃てばいい。

    またマップの作りも正方形や三角ではなく、幅の狭く奥行きのある長方形の物を採用したのが大きい。走り回らなくともマップの作りが「あの場所にいけばとりあえず接敵は出来るよ」となっているのだから最早索敵の必要すらない。真ん中に戦車とバスのあるbogやアパート同士の撃ち合いのblocなんかが顕著だ。「坂の下と上に分かれる」というのは、何をやればいいのか非常に分かりやすい。

    FPSでメジャーな地点制圧ルールや爆弾設置ルールを初心者にも楽しめるようにするには、CoD4の半年後のBFBCのラッシュを待たねばならなかった事も留意すべきである。

 

このうち武器の種類やパーク制度は数多のゲームに影響を与えることになったのは最早言うまでもないだろう。CoDは斬新なだけでなく、ゲーム自体の作りが丁寧でもあったのだ。

※余談だが、本格的にオブジェクティブルールへ特化して競技性を高めたBlackOpsではリスポーン位置による指向性を与えることに失敗しており、オブジェクティブの出来とは正反対にシリーズ最悪のチームデスマッチに仕上がっている。地点を守ったり攻めたりするためのマップは、走り回るには曲がり角が多すぎるのだ。これにサプレッサーとゴーストというミニマップに映らない装備で固めるとCoDの売りが全て殺されて非常に面白くないゲームになる。


2.PS3も360もコレという対戦ソフトがその年無かった

Xbox360であればその年の1月にGears of Warがあったし、両機種にRainbow Six:Vegas(R6V)もあったことはあった。しかしR6Vもウケたのは対戦よりテロハンというCoopモードで、対戦は余りウケなかった。というのも、カバーがデメリット無しで使えた為に散発的な戦闘になってしまい、ゲームスピードが遅く、素人が遊ぶにはややこしすぎたのである。。またお世辞にも見た目が良かったとは言い難く、音響は良いものの「動かしてて面白い」というソフトでなかったのも事実だ。「アタック&ディフェンド」という攻守に分かれて遊ぶルールが主流だったのだが、これは何よりもマップ研究とゲームモードへの理解が必要だった。簡単ではなかったのである。

コールオブデューティ2も3も国内ではコナミとスパイクが販売を担当しており、あまり広報が行われずにレアタイトルとなってしまった。格闘ゲームもレースゲームもパッとしたものが出ない。そんな07年の年の暮れに出たのがコールオブデューティ4というタイトルである。初の両機種同時リリースAAAタイトルで、マルチプレイヤーも揃えたタイトルであった。

3.「広めたがり」達の準備が整っていた

2007年と言えばYoutubeGoogleに買収された次の年だが、なんと言ってもニコニコ動画の有料サービスが始まった年だ。Divx Stage6というサービスがあった事も覚えておいでだろうか?そして、Xbox360アイドルマスターが発売された年でもある。当初アイドルマスターは「遊んでも楽しめるし見るだけでも楽しめる」というゲーム動画の花形であり、ニコニコ動画ではコミュ動画からDLCを使ったライブ動画にMADまで大変多くの動画が投稿されていた。

この時、スーパーファミコン等の旧世代ゲームをエミュレーターで動作させたゲームの実況も多かった。エミュレータをキャプチャした動画は当然のように高画質。そのような高画質な動画をPS3や360で撮影するとなると、最新の機材が必要となる。PS2S端子でキャプチャしていた頃とは話が違ったわけだ。

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(画像はHD STORM)
そこでリリースされたのが、アースソフト社のPV3エスケイネット社のモンスターXである。これらはD端子/コンポーネント入力による720pの高精細な動画のキャプチャをサポートしており、また要求スペックもそこまで高くはなく、何より2万円以下と安かった。これらの高性能キャプチャボードというのは本来プロ用の映像機材であり、カノープス社のHD STORMに代表される10万円近いボードを買わなければならなかった事を考えれば、2万円以下のボードは十分に価格破壊と言えただろう。今でこそ2万円未満のお手頃ボードなブラックマジックデザイン社のIntensityが発売当初は5万円弱していたのも今では懐かしい話である。

なんにせよ、世界は「撮るもの」を待っていた。

CoD4は大ヒットをあげ、数多の賞を受賞し、シューターの新たな金字塔となった。だがそれは細かい仕様の積み重ねがあったからであって、単にパークがあったからとか、単にアンロック制だったからというわけではない。多くのゲームがCoDを真似てはみるものの、CoDを越えられなかった理由はそこにある。猿まねでパーク性にしたところで何の解決にもならないのだ。

CoD4のバランスが壊れているのも、ワンサイドゲームが多いのも確かだろう。それでも、誰がやってもそれなりに楽しくなけりゃ、こんなに人気になるわけがなかったのだ。PS3と360に等しく訪れた、最新鋭のシューター。その面白いシステムや、そのシステム上でのプレイを紹介したがる人々。CoD4はまさに、2007年に誰もが望んだ対戦ゲームだったのだ。