基本無料ゲームで「何の為に金を払わせるのか」の話。あるいは艦これとソシャゲの決定的な違い。

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まず最初に言おう。
艦これ特別でも斬新でもない。寧ろ作りとしては古臭い部類に入る。そして、遊び続けられる作りをしているわけではない。レベル上げてマップをクリアし、クリアすることが安定してしまえばそこで終わりだ。それは当たり前の話で、艦これ一人用ゲームだからである。

そして艦これの課金は言うほど凄まじく良心的な設定というわけでもない。4つの資源は出撃や修理の為にどんどんと減っていくし、尽きたら行動できなくなる。その行動用の資材は、きちんと店に置いてある。1日待ったら回復する分を買うには大体1000円ほどかかる。棚に並んでる値札だけ見れば、寧ろ高い部類に入る。

おっと、もし未プレイで「そら見たことか!艦これもドリンクを飲んで走るゲームなんだ!」と思ったのならそれは早合点という物だ。何故なら艦これには、その走って競う相手が居ない

今回は艦これの、お金についての話をしよう。
あるいは、何故人々はガチャやドリンクやらは叩いておきながら…ソーシャルゲームは叩いておきながら、艦これを遊べたのかの話をしよう。それは艦これが「ソシャゲじゃない」という事の説明でもあり、「何故ソシャゲが叩かれるのか」という、今更にも程がある事象の再確認である。

あっ、そうそう。画像は別に何か意図して貼ったもんではありません。多分ね。


ソーシャルゲームの「ソーシャル」の意味。

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さて、ここでざっと「ソーシャル」についてまず考えてみよう。元々のソーシャルゲームとはmixifacebook等のソーシャルネットワークサービス、SNSの添え物であり、コミュニケーションの道具であった。ハイスコアを競い合ったり、村作ったり、農園でどうこうするアレである。

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さてそこに現れたのが「ゲームの為のSNS」だ。日記や個人メッセージ機能もあることはあるが、この「ゲームの為のSNS」は、ゲームの為に存在している。この時点で「ソーシャルゲーム」は「SNSのおつまみ」ではなく、「SNSに登録して遊ぶゲーム」となった。

 

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さて顧客を獲得する上で、もう「どこどこに登録してね!」というのは障壁でしかなくなった。1つのゲームをやり込んでくれる廃人さえ引っかけるのであれば、最早SNSなど要らぬ。ゲームで全て完結しておればよい。この時点でソーシャルゲームSNSですら無くなった

ではソーシャルゲームが「ソーシャル」と呼ばれるのは何か?という事を考えてみよう。既にSNSですら無くなり、ゲーム内で協力する必要があるゲームだ。協力というからには協力する仕組みが必要となる。即ち、「ギルド」「クラン」「プロダクション」「チーム」「支店」「騎士団」と呼ばれるものが「他プレイヤーとの交流」であり、「ソーシャル」である。ギルド=「ソーシャル」…と言っても差支えないだろう。


走れ、愚か者。

 


こちらの記事でも触れたが、要するにほぼ全てのソーシャルゲームPay to Winであり、別の課金している誰かを倒すために自分も課金する、という青天井のデスレースである。操作してバトルなりなんなりをこなすのは、対人だろうが用意されたイベント―オーソドックスな釣りからアイドルプロデュースまで多岐にわたる―だろうが差異は無い。ランキング報酬というにんじんに釣られて、馬も馬鹿も走るのだ。ひたすら回数をこなすのだ。

また、ガチャの存在も無視できない。スカウトガチャだろうが、ボックスガチャだろうが、期間限定のガチャだろうが、ガチャはガチャだ。即ち「抽選への参加自体が有料である」「その抽選に参加したとて、レアカード入手は保証されていない」「有料抽選に参加しなければ、そもそもカードの入手すらままならない」というのが、ガチャである。おっと、スカウト引換券があるから良心的とかいう擁護は黙っててくれ。そういう話じゃない。

要するに、景品で釣ってお客様から集金するのがソシャゲである。直接景品を購入するのがガチャ。プレイヤー同士で注ぎ込んだ金を競い合って、その結果景品を得るのがイベントのデスレースだ。「べ、別に無課金でも戦えるんだから!」等と言う話はしていない。システムがそうなっている、という話をしている。

そして、マフィアゲームから変わらないのが「廃人でつるんでナンボのゲーム」という作りだ。ギルドの人間はアクティブであって当たり前、課金兵なら優遇しますよ!なんて文句を勧誘に使う人間もいるぐらい、廃人でつるんで稼ぐのが強い。そりゃそうだ。一位を獲るなら金も時間も費やせる人間達でないと。ね。

なぜGREEの無料ゲームで3000円の釣竿が売れるのか?
http://anond.hatelabo.jp/20110108220327

数年まえの話題になった記事の頃と、ソシャゲ自体の骨は全く変わっていない。
ソシャゲで金を払うのは、今、金を払わなきゃ手に入らない物を手に入れるためと、他人と差をつけるためだ。何をどう言いつくろっても、この事実だけは変わらない。


艦これはソシャゲじゃない」と、人々が叫ぶ理由

この項目はグチグチ書くより、結論だけ書いた方がいいだろう。

一つ。艦これ他のプレイヤーと何かを競うゲームではない

二つ。艦これガチャは存在しない

三つ。艦これギルドは存在しない。故にギルド対抗戦も無い。

四つ。艦これは正真正銘の「一人用ブラウザゲームである。

 

これだけ簡潔に書いてもまだ分からない人には、下にGoogleという素晴らしいサイトへのリンクを貼っておくので、そこから無限のインターネット世界へ旅立つことを強く勧める。

http://google.com

さて、続けよう。


艦これは何のために金を払わせるのか。

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艦これは一人用ゲームだ。だから、もちろんクリアもある。それは「ある程度艦娘が育ち切って、クリアが安定してきたとき」だ。30人程度、レベルが90も行けば十分だろう。家庭用ゲーム機のシミュレーションRPGよろしく、艦これには果てがある。

 

こちらの記事で書いたように、ゲームというのはある程度レベルを上げたり物を集めてしまえば、その時点で終わりである。「勝つ為」や「遊ぶ為」に頭を使わなくて済むという事は、プレイヤーがゲームに勝利したことの証左に他ならない。

そしてこちらの記事に書いた通り、艦これの「課金要素」は、平たく言って「ブースト」と呼ばれる物しかない。「ゲーム内通貨を買う」なんてのは、今時「テイルズシリーズ」ですらやっている事だ。

「ブースト」の分からない人のために説明すると、「経験値が2倍になる」だとか、「経験値稼ぎの出来るマップを追加」だとか、「ゴールドを日本円で買う」だとか、そういう商売である。今時ニンテンドーですらファイーエブレムで、そういう機能のあるDLCをやっている。

リソース管理ゲームをしてちまちま溜める楽しみも、一日にちびちび建造したり出撃したりして艦娘を集める楽しみも艦これにはある。もちろん課金前提のバランスなのではなく、むしろ無課金でやりくりするのがむちゃくちゃ楽しい。家庭用ゲーム機でのフルプライスゲームに匹敵する程度にはたのしい

ただ、そのこちゃこちゃしたのを好かん人はいるものだし、それに痺れを切らす人というのは、やはりいるものだ。そう言う人の為に「ブースト」の一種である、資源購入がある。

鉄1500(時間にして丸一日放置すればこれぐらい溜まる)を買ったり、油1000(これも一日放置程度)を買ったりするわけだ。普通に遊ぶ程度には別に全く困らないのに。建造や開発なんてクエストをこなしたり出撃しておけばサクサク出来るのに。それでも、痺れを切らした人は買うのである。戦艦レシピ2回で1000円相当、と言った所か

「そら見たことか!艦これだってガチャゲーじゃないか!」とここで思った人は只の大馬鹿者です。Twitterで突っ込まれる前に私に言ってもらえてよかったね。

先に書いた通り、艦これは無課金前提のゲームの作りをしており無課金で十分に、十全に、健全に楽しめる。艦娘の入手だって同じだ。建造にも、開発にも戦場でのドロップにだって課金による可否などない。

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正規空母や戦艦だって、当たり前に全ユーザが入手可能だ。建造や開発のレシピの模索はこのゲームの大事な「遊び要素」の一つである。「何をどうやったら出やすいか」を毎日毎晩実験して、お目当ての子をお迎えするのにニヤニヤ四苦八苦しているのだ。提督、キモっ

資源を買う。というのは「金を払ってまで、ゲームを迅速に進行させたかった」という事である。数多のソシャゲと艦これは「最強の手持ちユニットを作れ!」という意味ではさして違いは無い。艦これとソシャゲの違いは「他人に勝つ為」ではなく、「ゲームをさっさと進めるため」に人々が金を支払うというただ一点である。

 

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別に艦これに金を払うなとか、そういう事を言っているわけじゃない。寧ろどんどんサーバ増強の為にカンパとして払ってほしいぐらい。ただ、「○○円払ってしもたwwww」等と言う発言は、何らかのステータスになどならないし、コミュニティで尊敬の眼差しを向けられることも無い。そういうシステムなんだよという話をしている。

感覚的には「ラストエリクサーを99個買った!!」とか、そういう自慢をされるようなもんだろうか。他人のゲームデータの進行状況は話題にこそなるが、「金の力で進めた!」「俺は買ったから!」などと言われたところで「そうなの」としか反応のしようが無い。そうだろう?

なお、「ささやかなプレゼントアイテム」としてランキング報酬がある事にはある。とは言え、それはただの装備であり、しかも先行配信に過ぎない。一人用ゲームで面クリア型のゲームで、手持ちのユニットがほんのちょっとだけ強くなる武器を、先に手に入れられるだけのランキングである。当然、「先行配信」なので、その装備は後日開発可能だ。

それに、イベントってのもあることはあるが……「金を払えば勝てる」と思っているのなら、そいつは思い違いも甚だしい。8月頭に開催されたイベントは……「金を払った所で、力不足なら勝てない」んだよ。そりゃあ、ゲームだからね

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面白いゲームを、快適に遊ぶ為にアドオンを購入し、更に熱中できる。しかし資源を購入しなきゃ首が回らない訳でも無い。人々が「課金させてくれ!」などと叫んだ理由をご理解いただけただろうか?資源購入をしてバババーっと進めてしまえば、楽しい艦これの時間の終わりがあっという間に近づいてくるのである。そんな馬鹿をやらかす提督はなかなかいない。


 

「所詮お前らは金を払いたくないだけだろ」と言いたくなった人へ。

コンプリート癖を拗らせた提督が、どうしても欲しい艦娘欲しさに、資源の大量投入を行い、建造を行う。ここだけ見れば、なるほど、ガチャの亜種だろう。しかし、その建造には、重ね重ね言うが課金による入手の可不可は存在しない。金を払って複数枚入手しなきゃ覚醒出来ないなんてことも無い。あくまで気持ちよくなってしまった人が気持ちよくなるためだけに支払うのである。

「有利になる奴が居ないだけ
「闘う敵が居ないだけ
「無料でも手に入るだけ
「ギルドで群れなくてもいいだけ
「広く浅くとるか狭く深くとるかが違うだけ

もし読者であるあなたがそう言いたくなったなら、一度考え直してほしい。その「○○なだけだろ」と切り捨てようとした要素こそが重要であり、「ソシャゲー」だの「ガチャゲー」だの「課金ゲー」だのと疎まれたゲーム達は、その「○○なだけ」という事すらできず、集金装置と人々に呼ばれたのだ。

パズドラフォロワーだろうが、新作ソシャゲーだろうが、結局は「レア!」「ギルド!」「ランキング!」と叫ぶばかりで、パズドラの「ゲームとして遊び、気持ちよくコンティニューするため魔法石を使う」という感触をパクれていない。そんな中、二つ目の爆弾を投下していったのが艦これだ。

パズドラも艦これも、別に斬新じゃあないし、画期的でも無い。寧ろ作りは古臭さすら感じる。だけどもパズドラは「ガンホー」のオンラインゲームの膨大な「収集とレベル上げをプレイヤーにやらせて幸せにするノウハウ」の結果、ランキング報酬など導入せずとも人々に受け入れられているし、艦これだって「家庭用ゲーム」側からのアプローチで、少しずつ、確実に支持を得ている。

……とは言え、パズドラはガチャとゴッドフェスなゲームなわけだが、それは別の機会に語りたい。ただ一つだけ言いたいのは、パズドラは皆様の思っているほどプレイヤーがガチャだけに金を払っているゲームではないということだ。ま、ガチャゲーって誹りは免れられないけどね。

【徹底インタビューその2】パズドラはこうして生まれた - たのしいiPhone! AppBank
http://www.appbank.net/2013/01/12/iphone-news/528869.php

- 従来のソーシャルゲームの課金の考え方が変わってしまったのではないか、とすら言われているコンティニュー課金という考え方ってどこから生まれてきたんですか?
あと今でもパズドラって半分ぐらいコンティニューですか?

山本:
売上の構成比でいうと今はもう変わってきていて、一番いい形かなと思ってるんですけど、運用しながらバランスうまく取りながらやれていて、バランスよくできてます。
コンティニューだけじゃなく、ガチャ、スタミナ、あとボックス拡張とか、その辺がそれぞれ同じぐらいのバランスになっています。
フレンド拡張がまだちょっと少ないですね、比率的には。

KILLER IS DEAD」「艦これ」そして「天空の機士ロデア」
――角川ゲームス 安田善巳社長が,同社の最新作とその先について語ってくれた - 4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/154/G015406/20130725012/

 

 

ここまで読んでもまだ「無課金ユーザに腹いっぱい食わせてから、気持ちよく金を出させる」という文化が良く分からない人は、こちらの記事も併せて読んでほしい。

 

世間ではそれを、「Free to Play」 即ち、「基本無料プレイ」と言う。
とっくに聞きなれて、聞き飽きて、「じゃあちゃんと遊ぶのに幾らかかるんだよ」なんて、言い返したくなる言葉になってしまったね。全く。

 

追記:非常に乱暴な言い方をしているが、これは「俗称」としてやたらめったら使われる「ソシャゲ」との違いの話をしているからだ。ギルドでガチャでレアでスタミナとランキングなゲームが、「広義のソーシャルゲーム」であるおつまみや、牧場ゲーや、何もかもを差し置いて「ソシャゲ」と言われるようになったからだ。既にゲーム業界にとって「ソーシャルゲーム」自体は広義の、使われ始めた当初の意味では使われていない。なので記事にも「ソーシャルゲームとの決定的な違い」でなく「ソシャゲとの」とタイトルをツケたのだ。

もちろんソーシャルゲーム全てにギルドでもガチャでもレアでもスタミナでもランキングでも……何でもいい、そういう物が搭載されているわけではないし、そのシステムが搭載されているからソーシャルゲームだ、というわけでもない。ただ、2013年現在に「ソシャゲだろ」と言えば、そのような「Pay to Winのガチャゲーだろ」と言っていると思われても仕方のない状況にある。と私は思う。

緩く見れば「サイトへの会員登録が必要」な時点で、確かに艦これは「ソーシャルゲーム」とも言えるだろう。知人と話題を共有してナンボ、遊んでナンボという話なのであれば、任天堂ですらどうぶつの森を「新しいタイプのソーシャルゲームといえるかもしれない」と言っている。

ただあなたにも考えてほしい。「どうぶつの森はソシャゲだ!」と言われたら、どう答える?私は「任天堂が言うにソーシャルゲームではあるが、”ソシャゲ”ではないよ」と答えるだろう。

この記事はそういう、「ソシャゲではないよ。このようなゲームなのだから」という、ネチっこいが僕にとって非常に大事な事だから書いたのだ。

 

……で、僕の所に金剛さん来るの、いつなんですかね。

 

追記2:

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うおおおおおおおおおおおおおおおお