艦これのケッコンカッコカリで「変わった事」とは実際何だったのか

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99の子なんていませんよ。うちの鎮守府には。

まとめブログを張るのは好きではないので個人ブログを張る。

僕は艦これのケッコンカッコカリに納得できない - とある青二才の斜方前進
http://tm2501.hatenablog.com/entry/2014/02/15/125809

艦これ・ケッコンカッコカリをめぐる悲喜こもごも | LUNATIC PROPHET
http://lunaticprophet.org/archives/14784

ゲームのアップデートは「変化」である。変わっていくのだから、今まで好きだったものだからと言って全肯定できるとは限らない。「それぞれの楽しみ」があるならば、「それぞれの反応」だってあって当たり前だ。

今回の記事ではケッコンカッコカリが「ゲーム自体をどう変えたのか」「ゲームの在り方がどうなったのか」の話をしようと思う。最初の画像を見ての通りうちのは99の艦娘はいないし、育てる気も無いので怒られてもまあなんだ、困る。


レベル99以降も君と過ごす為に。

艦これは育成ゲームである。出撃して経験値を溜めてレベルアップをするゲームなんだから、「育て終わった艦娘」は出撃させる意味が無い。それなら他のまだ育成出来ていない艦娘を運用し、育てた方がよい。だが「Lv99に達するほど愛用している艦娘」なのに「レべルが上がりきったから使えない」となるとこれは大問題だ。モチベーションに関わる。

ケッコンカッコカリはレベルキャップを撤廃(正確には150まで解放)することにより、「好きなだけ育て続けて良い」という大義名分を提督へ与える。「まだレベルが上がるのだから使って良い」……それだけの話だ。

果たしてそれ以外に何か、ちゃんとしたメリットがあるだろうか?

耐久が5上がる?だからどうした。カス当たりのダメージ保証がある以上耐久度が上がった所で有意な差か?フラ重どころか軽巡ですらワンパンで戦艦を中破大破させてくるようなバランスで体力の5ポイントに何の意味がある。運が上がる?回避が上がる?索敵が上がる?このマスクデータだらけのゲームでどれだけそれは戦況に影響を及ぼすんだ。

燃費向上は確かにありがたい。が、その「一隻あたりのちょっとした出費」など気にならないほど資源が飛んでいく要素があるだろう……そう、「大型艦建造」である。大和が5連戦して燃料が38減ったからと言って、今更なんだというのだ。あらゆる物が千単位で吹き飛ぶあのシステムを前に、「精神衛生上、良い」以外の何物でも無い。もしそんな燃費を気にしているのなら、そこまで育てるために幾ら出撃で使うと思ってるんだ?となるわけだ。

最後は陣形も装備もレベルも何も無く、羅針盤も命中も回避も祈るだけのゲームになることを私たちはアイアンボトムサウンドで知っている。そしてレベルが上がると入渠時間が延びるが、そんな物バケツをぶっかけちまえばそれでいい。そうだろ?

つまり、ケッコンカッコカリはする人が満足するだけのシステムである。


職人家具以外についに現れた「無料では絶対に楽しめない要素」

さて、艦これがここまで大きくなった要因……というか多くのプレイヤーが気持ちよくプレイしてきた要因の一つに「実際のプレイで金を出す誘導をして来ない」と言うのがある。あったとしてもそれは修理ドック開放であったり、所持枠の解放であったりと言った「ゲームを拡張するアイテム」であった。

他にあった物と言えば職人家具と呼ばれる有料の司令室装飾。他のゲームではアバターアイテムと呼ばれるような物である。これは直接ゲームに影響しない。とっても自己満足である。

が、ケッコンカッコカリとなると話は変わる。2隻目からは有料ですよ、1席目はご褒美ですよ……と何度言われようが、「レベルキャップ解放、1隻700円」というその事実は揺るがない。

1隻目は良いとしてたとえば6隻全ての解除を考えてみよう。700円*5隻で3500円。

 

cr.hatenablog.com

 

3500円だ。うげー、である。以前ゲームアイテムについての記事をかいたが、「こうしたいならこれぐらいかかるよ」と言われて晴れやかな気分になると言われたらそりゃ嘘ってなものだろう。ここ、「実際に6隻レベルキャップ解放するほどこのゲームをやりこんでいるか」とか、「実際にそれだけ育成しているか」は関係ない。「ゲームとして観た場合、この行為にはこれだけかかる」と、システムについて議論しているだけだ。

それが悪い、と言っているわけでは無い。「第一艦隊の6隻全部解放となれば、3500円かかるよ」というゲームになった。ついに艦娘自体に、そしてゲームプレイ自体に金のかかる制限を設けた。それだけの話をしている。

今までの最大が99であり、150は「解放」である。…と言っているうちは良い。ケッコンカッコカリ導入後の世界では「最大が150」であり、99は単に「結婚条件」でしか無くなる。もしこれが羅針盤の分岐条件や「結婚してLv100以上に上げていないと被弾しまくり」というステージが出てきてしまったら、その時こそ艦これの終わりだろう。

だが、今はそうでは無い。これは「火種」でしかなく、炎上すべき所でもないし、まだ燃えて居ないところだ。

 

では、ゲームとしての話とカネについての話を終えたところで本題に入ろう。
「結婚」についてだ。


このゲームの目的は艦娘を娶る事だったのか?

シスタープリンセスという作品をご存じだろうか?「12人の妹とお兄ちゃん」のアレである。シスタープリンセスにもアドベンチャーゲームがあった。選択肢を選んで読み進めて、お泊りイベントをこなして……というオーソドックスな作りの物だ。

さて、ここで質問だ。「兄の事が大好きな12人の妹」がヒロインのゲームのエンディングが「兄と妹が、男と女の関係になって結ばれる」でも、プレイヤーは受け入れてくれるだろうか?

プレイヤーの一人であった僕の答えはNoだ。「兄と妹」の関係を読みに来た。それを超える事は絶対にない。第一、僕は恋愛模様を別に見に来たわけじゃないのだ。「お兄ちゃん大好き!」を見に来たのだ。確かに一人や二人文字通り「恋焦がれている妹」がいてもいいが、それは決して本筋ではないし、何より別にそれを見に来たわけじゃない

シスタープリンセスは実にユニークな試みでこの問題を回避した。非血縁エンドと血縁エンド。なんと「義理の妹とお兄ちゃんが結ばれましたエンド」「何かあったとかはありません。お兄ちゃん大好き!エンド」の2種類を用意したのである。これで「それを見に来た訳では無い」「別に男と女の仲になる話を見に来たわけでは無い」という人間から要らぬ恨みを買わずに済んだという訳だ。

 

さて、艦これである。艦これは確かに女の子だらけのゲームだ。だからと言ってそれは艦娘とイチャイチャするゲーム」だったか?艦娘と恋愛をするゲーム」だったか?そう断言できるか?否だ。

艦娘は駒であり、部下であり、アイドルであり、頼れる相棒であり、秘書であった。提督LOVEな子もいた。だが恋愛の相手ではない。例え金剛がバーニングラブだろうが、雷がそばにいてくれようが、夕立がほめてほめて~しようが、決して恋愛をするためのゲームではないし、それは主軸ではなかった。ここがキモである。キモい言うな。大事な所なんだ。

艦これは育成ゲームだ。そしてクエストドリヴン(=任務をこなして遊ぶタイプ)である。そこに結婚の準備が並ぶ。Lv99になってこれ以上使うためには結婚しなければならない。変なところが太字に強調されたとお思いかもしれないが、これは重要な問題だ。「結婚が出来る」ではない。「結婚しなければならない」のである。正式名称がケッコンカッコカリだなんだという言葉遊びは、今は必要ない。

 

艦これは「建造」も「補給」も「入渠」も「近代化改修」も、そして「解体」すらも、どこまでも兵器として艦娘を、彼女たちを扱い続けた。キャラ要素は行動するたびの音声ぐらいで、基本は兵器なのである。

そこに突然、「結婚」が現れた。書類にサインをし、指輪を贈り、二人は枕を並べて寝るのである。ギャルゲーでも籍を入れて夜伽までするゲームはそうそうない。恋愛が主軸ではなかった艦これに追加されたこの結婚という要素は、かなりドギツい物であることをご理解いただきたい。これ以上となると提督が「俺の屍を越えてゆけ」とか言い出すレベルだ。マジで。

というわけで、艦これは変わった。艦娘と結婚するゲームに。


愛した「今」は「あの頃」になるのです。

艦隊これくしょん -艦これ-」はいかにして生み出されたのか。その思想から今後のアップデートまで,角川ゲームスの田中謙介氏に語ってもらった - 4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/205/G020591/20130911062/

4Gamer
 ところで,非常にやり込んでいる提督の中には,すべての艦娘がレベル上限に達していて,マップも全部クリアしている人がいます。こうした人達に向けてのコンテンツの追加予定などを教えてください。

田中氏:
 申し訳ないです。まず物理的なサーバーの増設と拡張に追われていますが,本来ならすでに投入しているはずのシステムもあります。僕らの間では「ケッコンカッコカリ」と呼んでいますが,いわゆる“限界突破”的なもので(後略)

と、インタビューにあるとおり田中Dは最初からこれをやろうとしていた。つまり他の作品のように、「別の人間がやってきて育成ゲームを恋愛ゲームにした」だとか「別の人間の手に渡って珍妙なアップデートで作りかえられた」ではなく、生みの親が直々に行った、正当な追加要素なのである。

が、プレイヤーが愛したのは、「あの頃」となった「今」である。わかるだろうか。「本当はこうしようと思った」なんてことは関係なく、ただそこにあるものから自分なりに解釈して、自分なりに楽しんでいたのだ。

それを「お前の二次創作設定じゃ無いか」と笑う人やけなす人も居るかもしれない。だが思い出してもみてほしい。「艦これには人それぞれに楽しみ方がある」とワイワイやっていたのは、他ならぬプレイヤー達だ。そこに、「艦娘とは結婚するものです」とやったのが、この度のケッコンカッコカリ追加アップデートであった。

キャラゲーからギャルゲーへ、相棒から伴侶へ。言葉にすれば簡単な物だが、男と女の仲ってのは簡単に割り切れるものではない。それはゲームだって同じだ。ゲームに真摯に向き合って来た人なら、なおさらだ。

 

故に、ケッコンカッコカリは、ただの自己満足アップデートのはずなのに荒れたのである。

本当は荒れたなんて言葉で片付けては欲しくないけどね。

 

ええと、僕個人は結婚しないし、そこまでレベル上げも付き合う気は無い。ケッコンカッコカリだって動画で確認しただけだ。だけども、僕から幾つか意見を書いておこう。

公式で「兵站」のゲームって言ってたけど、もうそれは完全にブチ壊れてしまって、任務クリアボーナスの素材を集めながら、自動回復にして一週間とか二週間分の資源を投入して、軽空母を作って無駄にするだけのゲームにしちゃったよね田中D。もう報酬系も収支も完全にブチ壊れてるけど、ホントにこれでいいんすかね。ちっとも、全く僕はおもしろいと思わないよ。「遊んでりゃいつか出る」の意味が、こんな風に変わる日が来るとは思ってなかった。

ケッコンカッコカリってさ、田中Dが前に言ってた「遊びを規定してしまう」 ってことそのものじゃないかな。受け手が如何様にも解釈すりゃいいって擁護もあるけどさ、納得しきれない物を飲み込むために折り合いをつけなきゃいけないって、それは創作でも何でも無く自分に言い訳を重ねていくだけじゃ無いか。「限界突破改装」だのって、そういう名前じゃ駄目だったのかい。

もう一週間以上経つけど、僕はこの話に自分なりの着地点を見つけられていないよ。