ウルフェンシュタイン:ザ・ニューオーダークリア記事。結局君は何になりたかったんだ?

 

 ジェットコースター展開のゲームとしてはCoDが、ムキムキのアクションゲームとしての戦いならHALOやシリアスサムが、敵を欺くステルスアクションならディスオナードという名作が山のように転がっている。

 2014年にリリースされたウルフェンシュタイン ザ・ニューオーダー(以下TNO)をクリアした。クリア時間は12時間。本作はウルフェンシュタインシリーズのリブートという位置づけになっており、月面基地とか作っちゃうスペースナチスをぶっ殺すB.J.ブラスコビッチ(CV:中田・マーボー・譲治)が大暴れしますよという筋書きである。

 が、そのゲームプレイ部分はと言うと。

 

CoDと何かの合体事故なのでは?

 TNOは基本的に頭を遮蔽物からヒョコヒョコと出しながらナチス兵の頭をペチペチ撃つゲームである。左トリガーを引くだけで壁やコンテナから自動で頭をヒョコれるのでそこら辺は親切だ。敵が立ち止まってからバキュンバキュンしたり、カニ歩きでフワっと飛んでくるボムを避けたりするゲームではない。ミョルニルアーマーを着てる訳でもないので割と食らうと瀕死になる。

 で、弾薬の入手量。少ない。敵は遠距離からベッシベッシ当ててくるのにこっちの手にあるのはアイアンサイトの付いたハンドカンとARと10発ぽっちのマークスマン。あとシングル限定なのにマルチみたいな性能のショットガンだけ。何であんなバカスカ敵は撃ってきて入手できる弾が7発とかそんなんバッカなんだ。

 あと、敵が硬い。こいつが生きてると無限湧きっていう指揮官だけはアーマー着てないけど、なんかもうひたすら敵が硬い。硬い敵とロケットやガトリング持ってるもっと硬い敵とアーマード硬い敵とスーパー硬い敵が出て来る。の割に弾が足りない。正面からナイフすると取っ組み合いになってこっちのライフもゴリッゴリ削られる。HSしてもまっだまだ生きてるのに敵は歩きながらガトリング無限に撃ってきてすれ違おうとすると近接で即死。緊迫感より出てくるとウンザリ感のがマシマシである。

 「フルアーマーの敵にはレーザーが有効!」という事で、プレイヤーの手には古代の充電式レーザー工具(改造してレーザーピストルになった)がある。あることにはあるがこの武器、5発とか撃つとあっと言う間に電池がなくなる。電池が無くなると倒せないので走って壁にやたらめったら付いてる充電器に走って充電する。撃つ。充電がなくなる。何だこのゲーム。プラガン殴り*1があるわけでもなし、部位破壊で有利になるわけでもなし。相手はネクロモーフじゃなくてナチだからただただ硬い。

 クソ広くて平たいマップをカニ歩きして雑魚を捌きつつ硬い敵を高速引き撃ちで片付ける、それこそWolfenstein 3Dやシリアスサムの文脈なら分かる感じのシステムとCoDめいた頭ヒョコヒョコレールシューターが合体事故を起こしているように思えた。そして何より戦いが単調である。平たいマップならまだしも高低差がそこかしこにあり、上から一方的に豆粒がゲシゲシダメージを与えてくるのもストレッサーでしか無いのも何とも。

 結論を言えばこれは主人公の位置づけや持ち上げられ方こそランボーであれ、「ラン&ガンの痛快爽快アクション!」みたいなものでは無い。自動回復ナシにしたのもそれこそCoDとは違う!Wolfensteinだ!と言いたかったのだろうが、あまりよろしい方向に働いているようには見えなかった。

 

それは探索やステルスなのか?

 TNOには探索やステルスがある!CoDとは違う!
 さて探索であるが、雑に言うとCoDインテル探し(右行く所で左行ったり正面の部屋探すとなんかノートパソコン置いてある)程度のものでしか無い。ゲーム内テキスト(新聞の切り抜きが多い)は主人公が10年以上昏睡状態にあった事の穴埋めや世界観の描写に役立っており非常に好感触なのだが、これが探索かと言われると違うと思う。

 で、この探索なのだが何を思ったかTNOは「アイテムを画面の中心に捉えた上でボタンを押すことで取得」なので、ひたすらボタンを連打しながら歩くことになる。何で?Wolfenstein 3Dでは落ちてるアイテムの上通ったらデューデデッって拾ってたじゃん。20年前のゲームで出来てた事から劣化する事もないでしょうに。

 いや言いたいことはわかるんです。ライフとアーマー制だからアイテム取りすぎないで後でやられたら部屋に戻ってきて拾えるようにしたいって事でしょう。それなら上限まで自動取得にして、帰ってきたらまた触れるだけで体力回復・弾薬取得で良いように思えるんですが、そこはどうにかならなかったのでしょうか。

 

 合わせて、ステルス。この手のゲームの宿命だが、「ステルス」を経て「アサルト」になる場合、アサルトはただのペナルティである。CoDめいた蜂の巣と少ない弾薬でぐったりするぐらいなら、レーザーで通路をチキチキ作って指揮官殿をナイフキルやサプレッサーハンドガンでチュンチュンして殺して、それから残存兵を一本道の奥で待ちプレイするのがよっぽど楽。もし見つかって指揮官殿が増援を呼べば、驚けなんとTNOの敵は無限湧き。ステルス時のMGSのゲノム兵バリのアホさも何処へやらベセスダというよりアクティビジョンめいたエスパースナイプを全方位からしてくるのだから付き合わないに限るのである。おびき寄せも無ければ味方の死体みても何とも思ってないのが辛い。せめてレンガや空き瓶の一つでもアレば褒められたかもしれないのだが。

 

 探索だが単に補給や実績解除で済まず、レーザーピストルの改造、アサルトにロケット追加等バトル面でガチで重要なアップグレードアイテムも雑に道端に置いてあるので無視するわけにもいかない。全部屋律儀に回らないと後で後悔しかねないからだ。

 ここらへん、バイオショックのプラスミド/ビガーのように「あからさまに能力付きの敵が落としましたよ!」ぐらいの事をやってくれても良かったか、ストーリー上で入手イベントを小刻みにやってムキムキ感を出しても良かったかなと思う。まあこの人、始まりは毎度潜入なのでナイフ1本から始まるのザラだしアップグレードって何だよって話でもあるんですけどね…

 

貧弱なブリーフィングからあっさりロンドン・海底・月面移動

 バトルは単調でもステージはバリエーション豊かだし、話も悪くない。ワンマンソルジャー・ブラスコビッチの内面を描くのも、つかの間のレジスタンスとの会話も、下水道から漏れ聞こえる市民の叫びを聞くのも非常によく出来ている。不躾なQTEも無いのでそこは安心してプレイできる。

 が、このゲーム致命的に「ステージ内での盛り上げ」が下手くそ」であり、なんかワーっと倒してたら目的の場所についた…っぽい?このスイッチ?あ、クリアしたの?こんな潜入に苦労したのに脱出はクソヌルなんすね。という感じしかなく、またナチス最強のUボート乗り込みも月面シャトル乗り込みも非常に地味。敵が壮大・凶悪に描かれていないので施設をぶっ潰してやったぜ感もあまりなく、非常にあっさりしている。

 あっさりの連続の中、ストーリーで毒を打たれたり空から降ってきたり胸にナイフをがっつり突き立てられてもピンピンしているため「もしやナチスに改造人間にされた話でもやるのか?」と思いきや、やらないキャプテンアメリカにしたいんだかしたくないんだか良くわからない。「ゲームに出てくるアメリカ兵とイギリス兵はだいたい超人なんだから良いじゃん」と言われればそれまでなのだが、

  • 超古代文明の技術を流用しAIやロボットを完成させた悪の月面ナチス帝国!
  • 話が進んでもボロボロのシャツを着っぱなしのおっさんとレジスタンス

 ここの対比、レジスタンスの盛り上がりみたいな物がどこまでも上滑りしていく話の作りなのが最後まで乗り切れなかった。カットシーンをメチャメチャに多用しているのにだ。バトルパートのハチャメチャとストーリーの深刻なダメージを混ぜて考えるのは野暮である。幾ら自動回復のソープ君でもMW2ラストの投げナイフ時の傷が開けばMW3で死ぬのである。そこをTNOは逃してしまった。

 

まあ100円セールなら、という感じ

 総じてまとまりのない綺麗なB級作品だった。過去にPS4向けにセールされていた事もあり、持っている事は持っている人も多かろう。遊ぶだけ遊んでみると良いと思う。序盤に主人公が仲間のどちらを殺すか選ぶシーンがあり、その選択がストーリーとラストバトルに大きく影響を及ぼすので2周するのもアリとは思う。が、僕はTNOにそんなに心を惹かれなかったので1周でおしまい。

 HUDナシの流行に乗ったのか、それとも古典的タイトルのリブートだからHUDナシにしたのかは分からないが、ミニマップ無し・極小クソ地味ビーコンのコンボは本当にただただ辛かった。2014年に敢えてこの仕様で出す根性だけは認めても良い。次回作で改善されてなかったら流石にキレる。

 TNOしかやった事がないのなら、今すぐ同年のCoDAWやシリアスサム3BFEをやってみよう。「正しいジェットコースター」と「正しいラン&ガン」が君を待っている。

 

ニューコロッサスはいつか、セールで会いましょう。

セラミックロケッツ!は中田譲治ゾイドを応援しています。

*1:HALOの基本テクニック。溜め撃ち出来るプラズマガンをチャージして放ち敵のシールドを無効化した直後に殴って殺す事。HS判定のある武器だと敵をHS出来るのでシールドを無効化した直後に頭をパーンする最高に格好いいスパルタンに成れるという仕組み