世間が騒がしいのでアサシンクリードオリジンズの2周目をやってきた

どうでも良いけど何でカタカナのフォントが月姫なんだろう。

 アサシンクリードはシンジケートから大きく「古代三部作」と呼ばれるシリーズで転換点を迎えた。どう転換したかというと「武器やキャラにレベルの概念を導入した」のである。更に攻撃も親指側のボタンでなく弱攻撃と強攻撃を人差し指側で行うソウルライク変更、それらは周囲とどう比較される要素でどういうゲームだったのか…

 何やら世間が騒がしいので、2周目をプレイしてきた。ので記事にする。

 

cr.hatenablog.com

おまたせしました。5年ぶりのアサシンクリード記事です。

 

オープンワールドにおける劇薬、レベル制

各クエストにも推奨Lvが書いてある

 正直な所、アサシンクリードにはレベル制のようなものは旧来からあった。それはアクションのアンロックであり、ガジェット類の使用回数増加であったり、ちょっといい武器だったりした。アクションが解禁されることで難易度が下がり、より大勢相手に立ち回れるゲームになっていき、ステルスもちょっと軟化する。そういうゲームだった。

 そしてそのゲームにレベル制を導入し、レベル間の傾斜を強めに設定したオリジンズはどうなったかと言うと…まず背後や空中からの暗殺で敵が即死しなくなってしまった。相手を誘導して一人ずつ潰していくパズルが解けるならどんだけ危険でもOKだった所が、レベルを上げてブレードを強化しないと刺さらないのである。故に「レベルが足りないから進めない。なぜならレベルが足りないから」となってしまった。

 そしてだいたい2回も攻撃を受ければこちらは死ぬし、相手の体力も1000とか2000という単位であるのに通るダメージが10となる。極めてゲーム的な理由で相手に攻撃が通らず打倒できない状況が形成されるようになってしまった。

 が、これの理由も考察は出来る。オリジンズ退屈な「◯◯チャレンジ」系を全て廃止し、ゲーム内のロケーション目標―例えば部隊長を倒せとか隠し宝箱を見つけろとか―とサブクエスト、そしてメインクエストのみでゲームを構成している。未だオープンワールドゲームでもなかなかない割り切りだ。

 しかしこうするとプレイヤー側の変化はレベル無しではあまり訪れなくなる。オープンワールドで自由な移動が出来るということは、固定のクエストのような豪華報酬は渡せないからだ。「見逃しても良い場所の戯れ」からしか得られない報酬は出せない。このクエストをやる、このピラミッドの謎を解いたから得られる。そうでないとクエスト側の価値が下がるからだ。

 とは言えロケーション間の旅や戦闘自体にも報酬を渡したい。そこで出てくるのがレベルと強化だ。本作ではドロップした武器にもレベルが設けてあり、敵を倒すと現在のレベルに応じたそれなりの武器が手に入る。分解して強化素材にしてもいいし、武器を売っても良いし、本当に使ってもよい。これがクエスト進行でキャラレベルが上がる限り無限に繰り返される。そうやって「動いた分成長してる感」は永遠に続く。例えアクションやガジェット類のアンロック類が全部開いたとしても。

 ゆるやかな無限の上昇やプレイ時間への報酬が設定できるのと引き換えに発生するものもある。最も顕著なのは「クエストをやらないと話が進まない」という義務感からくるクエストの「消化」だ。経験値をぶら下げられて渋々遊ぶクエストほどせっかく用意したのに勿体ないこともない。そのクエストもFallout龍が如くの品質を保ててるならいいが、悲しいことに舞台が間もなく滅ぶエジプトなので全体的に辛気臭く、話のパターンも多いとは言えない。ちょっとトンデモをやった後にヤクザ殴っていい話にしてシメ、の龍が如くの方が申し訳ないが面白い程度だ。

そしてソウルなバトル部は?

象に襲われるカエサルと主人公バエク

 刷新されたバトル要素は弱攻撃で切り込む→そのうち防御されるから強攻撃で崩す→相手からの攻撃が来たら盾カウンターまたはカウンター可能武器で流す。が全て。これが基本解説という話でなくこれが全て。これに回避も付いてくる。問題は、とわざわざ書くほどでもないがきっちり「ソウルライク」の為にところどころきっちり死ぬ多数とのバトルや必殺技を幾度か叩き込む必要のある「硬い敵」が出てくる。龍が如くで言うと0のカツアゲ君みたいなのが10人いる。レベルを揃えてもなお硬い。

 個人的には一度カウンター動作が入ってから強攻撃を振るう「ヘビークラブ」が最初から最後まで有用であったが、逆に手数勝負や盾カウンター前提武器だとまま「敵がまあ硬いソウルライク」のままなので一つ一つのバトルが重く感じる。これは銃もVATSも無いオープンワールドの調整なのだからある種当たり前ではあるが、旧作(特に直前のシンジケート)を期待すると渋く感じる。が、エルデンリング後なら「ソウルライクってこんなもんだよね」と時間の経過も有り飲み下せる程度の出来だ。

専門家も関わる極めて歴史考証の正確なゲームなのでビームが出る

 ソウルライクってこうだろ!と言わんばかりにビームが撃たれたり、デスハイエナが予兆表示有りで飛んできたり、矢がめちゃくちゃ飛んでくるのを回避回避回避して光るコアに矢を撃ち込む戦闘も完備だ。アサシンクリードは極めて歴史考証の正確なゲームなので女神セクメトがビームを撃つ。何もおかしいことはない。いいね?

旧作や「あの年」に出てしまったゲームとの比較で。

 さて、少しずつフレーバーやゲーム内経済の話に触れていきたい。アサシンクリードオリジンズは紀元前のプトレマイオス朝末期。良く知られるピラミッドの建設からも2000年経ち、アレキサンダー大王に征服されてからもまた長く、エジプトの辺境からラクダを走らせれば徐々にギリシャ式の建物が顔を出し、アレクサンドリアはすっかりヘレニズムに染まっている。息子を殺された主人公のバエクは復讐に身を投じるが…というのがメインストーリーの流れだ。

画像は暗殺対象に騙されて埋められたバエク

 プトレマイオス朝末期のエジプトを旅する。という雰囲気の再現は素晴らしい。砂漠に輝く白いピラミッド(なおコレはいわゆる映えの為のウソで、建造2000年のピラミッドがこうなワケがない)も美しければ、すっかりギリシャ風になった都市群も荘厳。ナイル川を上りながら右手に人々の生活を眺める…という観光の部分は非常に良くできている。 

ポンペイウス劇場。終盤でカエサル暗殺の為に訪れる場所。

 話は古代エジプトに留まらず、海戦や古代ローマまで広がる。ロケーションとしての広がりはシリーズ随一と言って良い。言っていいが「個々のポイント間の距離」だとか「ゲーム上意味を持たされた場所か」という事を考えると話が変わる。幾ら縮尺を変えたとは言え、ゲーム内を500mとか1000mとか3000mとか移動するのだ。その移動の傍らで強化アイテムを落とすローマ兵や獣を見かけはする。ランダム戦闘があるからいいでしょとは私には言えない。特にマップ南側は下手すれば無くても困らないだろうに。

 そして「プトレマイオス朝末期のエジプト」という事は、作中で暗躍する架空組織がなかろうが滅びかけの国だ。厳しいことを言うが、ゲームの5割は砂漠と岩山、3割はヤシの木と嘆く人々とごちゃごちゃした貧しい町並み、2割が見所とナイル川で出来ている。8割の部分があまり口に合わなかった。本作の人々はサブクエストであれメインクエストであれ、砂漠に飲まれ国もローマに飲まれ行く今を憂いて神に縋る思いで罪を重ねている。つまり言ってしまえば「それぞれ祈り方が違い、間違えただけ」とも言える。彼らは信じていたのだ…となるにはバリエーションが少なすぎ、徐々に感慨には浸れ無くなってしまった。

 例えば直前のアサシンクリードシンジケートは産業革命真っ最中のロンドンで、ロケーションも一つ一つ見応えがあり、そのロンドンで「暗躍するちょっと偉い人」が相手なのでエピソードにも「確かに一理ある…だが殺す!」となっていた。ここが「エジプトがさ…神がさ…」と異口同音になってしまうのが勿体なかった。

 これは同じく「ポイント巡り」のゲームであるゼルダの伝説ブレスオブザワイルドとの比較になるが、ブレスオブザワイルドはロケーションが変化に富む。祠が単調なのは否めないが、ここにウツシエの記憶達と各カースガノンとの戦いに至るまでの各地方でのエピソードや魅力的な登場人物達との積み重ねがある。

 更に続けると、ブレスオブザワイルドではロケーションに辿り着けばコログがいた。祠のクリア数で体力・スタミナが増え、マスターソードが手に入る。残るは蛮族の鎧(攻撃力アップ)と古代兵装だけだ。実は祠・神殿解放・マスターソード・特殊装備以外あのゲームで永続的な変化を与えるものは無い。無いが常に変化があるように感じられた。それは武器やアイテムが尽く活動の中で失われるものだったからだ。

 それらのゲームと比較すると、クエストや暗殺も固くて淡白、物語もエンジンがかかるまでは国に仕え義に燃える戦士としての人助け、ロケーションもまあ地味かコピペ…というのは否めないのがアサシンクリードオリジンズである。

が。それも中盤までの話だ。

物語はアサシンの誕生の為に加速する。

 

憧れのアレキサンダー大王の墓を見て大喜びカエサル

 ちっとも息子の仇に辿り着けず、クレオパトラに言われるがまま殺してもまだ辿り着けず、お前はファラオのメジャイ(戦士)なのだからとクレオパトラカエサルに逢わせてからのオリジンズは一気に加速する。

燃えるアレクサンドリア湾岸

 あのファロス灯台に陣取るローマ兵を蹴散らして緑の炎を上げ、象から逃げ、大海戦を行って…という「かつての」アサシンクリードで行われたリニアなメインクエストが帰ってくる。

 あのカエサルの側近でさえ人々を裏から操ろうとする「結社」の一員であり、先史文明人のオーパーツはバエクの故郷にも眠っていた!あの日「結社」の襲撃があったのはオーパーツがあったからだった!と話が進む。しかして再度の襲撃を受けたのは「怒りに任せ、身を晒し戦士として戦っていたから」で、それで故郷の人々を巻き込んで死なせてしまった。

愛する人の夫である事も、かつて親だった事も、国も全て捨てる。

 だからバエクは全てを葬り去った後、信条に基づき「隠れし者」となる。ソウルライクなバトルも「強敵との真正面の殴り合い」の演出として機能し、物語としっかり噛み合っていく。相手の攻撃を盾やカウンターで捌き、徹底的に叩きのめす。終盤になり、プレイヤーがシステムを理解し、そしてバエクが「暗殺者でなくてはならない」事を理解してから、アサシンクリードオリジンズは明確に「アサシンクリード」になっていった。

息子の形見すら投げ捨てバエクは去る。
妻であったアヤが拾い上げると砂浜に残ったのは…

 発売から7年が経ち、2周目を終えた。
 アサシンクリードオリジンズは劇薬であるレベル制を導入し、事実それはゲーム内で作用こそしていてもどこか不自由を感じさせる指向性が感じられる。滅びかけのエジプトは、言ってみれば「似たような悲しみ」に溢れている。それでもなお体験は唯一無二であるし、何より「暗殺者になる」為の物語や旅の品質が低いわけではない。

 前作や同年のタイトル、そしてスタイルを模倣した作品を勘案すると「それらを踏まえたものが出せなかった」という言い方が正しいだろう。それでも単体で見てみれば、「暗殺者の信条(アサシンズクリード)」の誕生、そして古代エジプトの謎を巡る作品として私は嫌いにはなれない。

 「カエサル暗殺の一太刀目」を浴びせられるゲームなんて、今後無いだろうからね。

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当時は重いゲームでしたが、RTX4080でなら思いっきりブン回りました。合わないかもしれない作品ではありますが、気が向いたら遊んでみて下さい。