真・三國無双ORIGINSクリア/万夫不当の豪傑とはこのゲームの事を言う。

 お前は無双についてどう考えているだろうか。

 俺にとっての無双はこうだ…弱攻撃、弱攻撃、弱攻撃、弱攻撃、弱攻撃、強攻撃。何故か強化のためにいちいちアイテムを取ったり周回させられて、突っ走る乱舞よりはその場で武器をブンブン振るほうが強い。似たタイプのゲームやキャラものになると範囲がバカでかくなって敵がワーっと飛ぶけど、だからどうした感は拭えない。新キャラが使えたからってまたなんか膨大な育成リソースが要求され、どこかのタイミングで「もういいかな」と投げておしまい。そんな感じだった。

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 実はそんな無双の中で、俺が一番好きなのはTROY無双だ。ジャストガードして相手の体力を減らして、程よく減ったらフィニッシュムーブ。一個一個の戦いは重くて、何よりボス戦は血湧き肉躍る大バトル。一騎当千はあってもあくまでそれは添え物で、本当は「大戦場を揺るがす英傑としての活躍」こそが無双の本質ではないのか?と。ずっとそう思っていた。海賊無双4をやっても結局満たされなかった。

 そこで今日は真・三國無双ORIGINS(以後無双オリジンまたはオリジンと表記する)を6ルートクリアしてきたのでその話をする。結論から言うとこのゲームは真・三國無双以後25年の集大成であり、カプコンであれテクモであれフロムであれプラチナであれ「ジャストガード」「ジャスト回避」「カウンター」系ゲームの頂点と言って良い天下無双、比肩するもの無き最高のアクションゲームだ。

数千人VS数千人のバトルが省略されることなく繰り広げられる

 まあまずバトルの話をしよう。このゲームのバトル難易度は3つ。クリア後に4つ目が出てくる。このうち下2つはアトラクションとしての無双、すなわちボタンをダーっと押してイベントが進行すればいい人用の難易度だ。だが3つ目、1周目での最高難易度からこのゲームは一変する。

呂布戦はフロム×プラチナ×チーニンと言って良い和製アクションの到達点

 一騎当千。武。その話をする時に無双オリジンはバトルシステムを過去作から流用しつつ完全なる再構築を果たした。本作で敵に大ダメージを与える手段は3つ。敵への攻撃・回避でゲージを貯めて使えるアビリティ「武芸」のうち高コストの物を使う。その武芸や通常攻撃等で相手の体幹ゲージ、本作用語でいう「外功」を削りきっての連打アタック「収撃」を使う。そして同様に敵への攻撃で溜まる無双ゲージを使用しての「無双乱舞」だ。問題はこれを敵将も行ってくる。

 一般兵から敵将の攻撃まで、まずはジャストガードを狙う。ジャストガードすると相手への攻撃チャンスを獲得し、外功削りの機会を得る。そうでなければジャスト回避する。武芸による削りの機会を得る。このうちジャストガード不可能な「オレンジ色の攻撃」は発勁武芸によるカウンターが効く。

 相手の行動を待ち、捌き、見切り、敵の大技を発勁武芸で打ち崩す。打ち崩したら相手に攻撃を叩き込む。この攻撃も使用は2ボタンながら立ち、ジャンプ、ガードしながら、回避しながらで出せる技が実に多彩。攻撃に遠慮は要らない。何故なら欲張った攻撃への罰則がこのゲームには存在しない。攻撃動作からキャンセルして、攻撃中にタイミングさえ合っていれば弾きが成立する。それについても嫌らしいディレイはなく、相手が「行くぞ!構えて~そぉ~~…れっ!」のタイミングで一定であり、構えもハッタリが効いたものなのでガードは容易い。いやらしさがない。カラっとしている。なおうっかりしていると敵武将の無双乱舞が当たって即死する。このゲームの体力回復(中盤迄)はマップ内の拠点で補充できる肉まんのみであり、その回復回数も3回の設定。しかも回復量はそんなに多くない。

 更に無双はだいたい「布陣している敵へ飛び込む」構図なので、敵将複数と雑魚が数百という構図でバトルが始まる。そうするとどうなるか。

  • 数百人の雑魚に囲まれながら互いの軍勢をふっ飛ばし合ってバトル
  • 味方がぶっ飛ぶ中、自身だけはカウンター成立。カウンター攻撃で視界にいる敵が全員大ダメージ。
  • 敵将が手を上げると数十人がオレンジ色に光りながら突っ込んでくる。
    これに発勁武芸を叩き込み一気に黙らせ、そして敵将もろとも収撃。
  • そして遂に敵将の外功をゼロにしたら敵将本人に収撃。
    武器毎の超格好いいモーションで敵将にとどめ。

 このジャストガード、ジャスト回避、発勁武芸の3種で敵に応対する基本ギミックが一対多、多対多、数千対数千までぐるぐるとサイクルとして周り続ける。楽しい。ありとあらゆる面で楽しい。一挙一動で戦場がアホほど反応を返してくる。で?カウンター?じゃあ攻撃狙わずだらだら回避して殴れる時なぐれればいいじゃないと思う所を…

呂布を倒さないと戦線がマジで瓦解する

 「介護」とかつて侮蔑すらされた士気システムが
 オリジン内では強烈な「速攻で戦う理由」になっている。

 無双と聞いて思うのが「仲間がすぐ助けて助けてと言ってくるゲーム」の人も少なくないだろう。だが今回の「助けて」は制限時間システムと地点毎の戦い、すなわち戦いの中の将として活躍の場として発せられる。

 士気は最初「めちゃめちゃに劣勢」な状態で始まる。このまま味方武将数より多い敵とぶつかったらまず敗走する。そのため味方の進行ルートに随伴、または先行してマップ内の「小イベント」を潰していく必要がある。拠点を潰し、小イベントをクリアし、現れた増援を潰すことで徐々に士気ゲージが互角となり味方がそう簡単には敗走しなくなる。更にうまく戦えば味方の士気は最高潮に達しどんどん進行が進んでいく。

 故に、一つ一つの戦闘に時間をかけている場合では無いのだ。味方が死にそうで、敵の増援は自軍の将へ向かって進軍を開始しており、岩やら火矢やらが降り注いできている。言ってしまえばそれら全ては制限時間付きの防衛イベントなのだが、「己の動きに戦の行く末がかかっている」のが無双なので今更そこに介護がどうのと言う気はなくなる。全てが速攻。だからジャストガードし、ジャスト回避し、発勁で打ち崩し、打ち取る。バトル自体が物凄く出来ているし、マップ上を走り回る理由も良く出てきている。

 士気ゲージをカチ上げ、マップ内イベントを大成功させればマップ内で大軍団イベントが発生する。敵も味方もほぼ全武将が集合し、数千人VS数千人の大バトルだ。敵将の指揮する「数十人のオレンジ兵攻撃」は四方八方から飛んできて、敵将は何人もプレイヤーに攻撃してくる。それら全てをカウンターし、ジャスト回避し、捌き切り、そして敵軍のど真ん中で無双乱舞を発動すれば一撃で1000人をぶっ倒して味方からお褒めの言葉が飛んでくるわけだ。

 だからオリジンはどこまでも忙しい。ローグライクが「敵がだんだん強くなるのにすべてのリソースが消耗品」で圧をかけてくるのと同じように、オリジンは全てが時限性なので怠けている時間が一切ない。このままでは敵の無双乱舞が発動する。このままでは敵の大軍団が勢いづく。だから2分以内にあいつを倒せ。そのために武芸を撃て。その時間を稼ぐためにカウンターを撃て。全ての攻撃をジャスト回避してゲージを稼ぎまくれ。

 一対一、多対多、マップ上での互いの進軍、そして大軍団戦が全てうまく機能している。もはや草刈りや介護などとは言わせない。真・三國無双ORIGINSは最新の無双でありながら「3Dアクションゲーム」としても最高峰である。

 

本作の貂蝉の描き方マジで好き

 さてオリジンのメインストーリーだが、何度も言われている通り「赤壁の戦い」までだ。PS2のゲームならキャラによるが1マップ目(孫権だ。それで何をするのかと思っただろうが、なんと黄巾の乱までで1章まるまる使って、しかも泣かせてくる。記憶喪失の主人公、無名としてまだ旗揚げしただけのチンピラ劉備をはじめ様々な武将と戦場で出会い、時に紹介を受け…ほぼ全ての武将から一言二言「よろしく」と絆MAXでの「お前めっちゃいい奴やん」がある。

 これが武将毎に話が独立している訳では無く、話の流れと完全に連動している。だから物語が進むごとに「お、新キャラ出てきた!」「あの新キャラと今俺一緒に戦ってる!」と、大きな時代のうねりの中に居ることを実感できる。

呂布と「武」で比肩するに至ったからこそ聞けた言葉。

 世ではBLゲー、ホモゲーと言われているが俺はそうは思わない。人の命が葦よりも軽い乱世で、明日の朝日が拝めるかも分からない中で肩を並べたからこそ「認める」し「話せる事がある」イベントとしてこれらの武将ストーリーは機能している。何より呂布陳宮董卓袁紹のストーリーが素晴らしい。

 オリジンのキャラ全てに言えることだが、全員が「志」の話をする。戦場で相対するのは「志」が違うからだし、一度下ったなら「志は同じ」と固執する事はない。なんなら一度刃を向けあった仲だったとしても「んもー、言えよ~!」と気さくに声をかけてくるし、「俺がやる事は支配とか天下取りだけどさ、お前は自由だからいいんだよ」と語ってくる。呂布は人に夢を見せるのでなく個としての「武」を振るい続けたからこその限界を体現している。それが何よりも良い。

今作の徐庶マジで好き

 すなわち、絆ストーリーは戦乱の中での僅かな暇であり「幕間」なのだ。時代のうねりの中で「こんな人がいた事を、覚えていて欲しい」と言われたら、俺は頷かざるを得ない。頷かざるを得なかったんだ。

 語り続けると止まらないので一点ピックアップすると、オリジンの「関羽千里行」はこの四半世紀で最高の関羽千里行だったと言って良い。敵拠点や城へ入るために兵を差し向けてちょっと待つのが普通だったからこその「押し通る」だし、敵が増えれば増えるほど赤兎馬でかっ飛ばす関羽が頼もしく見え、そして続々と仲間が加わり、やっと劉備張飛の声が聞こえたというのに未だ突破は叶わない。うるせえ、関羽が兄者兄者言ってんだろうがぶっ飛ばすぞ!無双乱舞ッ!!と思わせてくるめちゃくちゃ良く出来た演出をまさか無双の会話劇で見られると思わなかったし、更にそこで往年のサウンドトラックのアレンジを持ってきたのも良い。過言かも知れないが無双オリジンは「会話演出」の一点でエースコンバットも超えたと思う。

 

 また「記憶喪失の主人公」として無味無臭の主人公で終わっていないのも素晴らしい。戦場を駆ける一陣の風として、古くから時の皇帝達を支えてきた「太平の要」が乱世に身を投じる物語として、そしてなにより「実在の武将」としてでなく「三国志演義に出てきた架空の女性」として改めて翻案された貂蝉との物語が特によかった。武将たちと語らい、酒を酌み交わし、そして最後は朽ちた里でやっと出会えた貂蝉と「一人の男」として思いを交わす。無名が主人公で本当によかった。そうでなければ、この物語は描けなかった。

 

 そして、バトル物語とくればバトル外の育成だが、これもまた良く出来ている。順を追って武将が出てくると、武将からバトルに関するサブクエストが発行され、これをクリアすると武芸や経験値がもらえる。ストーリーが進むと「◯◯討伐、訓練」のような形で、別にやらなくてもいいがやると武芸や強化が貰える任務が追加される。そしてこれらのサブクエ・任務はなんと2周目以降金で踏み倒せたり、実は劉備編と曹操編で報酬が共通だから遊ばなくて良いとなっていて徒労感がめちゃくちゃ削られている。

 劉備曹操孫呉編と3つあるがこのニ周目もルート分岐直前から再開できるし、更には真ルート分岐の所は「分岐直前から再開、分岐戦だけやればOK」となっていて周回要素についてのケアも凄まじい。それで居てニ周目からは「最高難度でこの条件クリアするとゲーム中最強の武器とか武芸とかあげるよ」という挑戦も解放されるので、もっとバトルしたい人にもしっかり応えている。

 そもそもの1周目も武器が徐々に徐々に解放されていくし、レベルアップの為にはどの武器もまんべんなく使うことが要求されるので色んなバトルが楽しめて飽きが来にくい。総じて、3Dアクションとしての大傑作でありながらRPG部分でもちゃんと傑作だ。

章の始まりのムービーマジで格好いい。

 無双が「いろんなアクションが出来る」のは魅力だ。だがそれが「プレイアブルキャラクター」である必要はない。無双が「いろんな視点で遊べる」のは魅力だ。だがそれが「武将からの目線」である必要はない。無双が「一騎当千アクション」なのは魅力だ。だがそれが「ただ敵がワーっと吹っ飛ぶだけのゲーム」である必要はない。無双が「様々な育成ツリーのあるゲーム」なのは魅力だ。だがいちいち「キャラクター毎の育成」である必要はない。

 真・三國無双ORIGINSはそういうパブリックイメージ無双に対して真っ向から取り組み直し、今一度3Dアクションとして、RPGとして、「三国志」を語る物語として見事な再誕を果たした。50時間で最高難易度である「無双」を心いくまで楽しみ、惰性に陥ることなく楽しいまま俺がゲームを終えられたのが何よりの証拠だろう。

 

 「万夫不当の豪傑」とは
           真・三國無双ORIGINSの事を言う。

 このゲームに比肩する事を願うならバトルも育成も物語も全ての武を磨き切る必要がある。生半な覚悟では絶対に叶わない。キャラゲーだからなどという言い訳すら真・三國無双ORIGINSの前では許されない。本当にいいゲームだった。今から次回作が楽しみだ。

 

 

 

 

番外。

まだ魏・呉・蜀が成立してないのに「お前こそ真の三国無双だ」って言うの、やっぱりなんか違う気がします。コーテーテクモさん。