火山の噴火で全地球凍結が発生し、人々は超巨大な石炭暖房[ジェネレータ]の周りで生活を余儀なくされた。人々が向かったのは、石炭埋蔵量の比較的多い北極圏。たった80人で辿り着いたこの場所で、あなたは避難民のキャプテンとして生き延びなければならない。
が、それも失敗した。-150℃の大嵐の迫る中、人々を助けたい一心で難民を何百人と受け入れた結果この街は様々なリソースが足りなくなった。
食料が足りなくなった。薄いスープで何とかもたせていたものの、急な来客の為の用意など無かった。この寒さの中では温室も機能せず、倉庫の食料は空になった。
住居が足りなくなった。きちんとした断熱をした住宅の建設には時間も資材も足りなかった。人が10人眠るための住宅を30棟、数日で仕上げられる筈もなかった。暖かさを求めてやってきた人々はジェネレータの前で凍え死んでいった。
石炭が足りなくなった。人々を死なせないためにジェネレータは轟々と煙を上げて稼働したが、人々の住む場所を隅から隅まで温めるには性能が貧弱だった。それでもとあなたは蒸気ハブを増設したが、そもそも住宅の断熱構造の改良が足りなかった。嵐が来てから改良した所でもう手遅れだった。
「キャプテン、報告です。生活区画で一棟の住民が全滅しているのが発見されました。」
そんな事、分かっている。誰も彼もを生かそうとして、誰も彼もを死なせてしまう結末が近づいている。朝起きたら隣の家の人々が全員冷たくなっているような町で、安心して生きられる訳がない。市民の不満は爆発し、あなたは死刑に処される事となった。
ジェネレータの前に引きずり出され、手足が拘束される。レバーがゴトリと音を立て、人を殺すのに十分な温度の蒸気があなたを包んだ。違うんだ。精一杯やったんだ。崩落した炭鉱だって稼働させ続けるために、子供含め30人を最下層に行くよう指示したのだって、爆発寸前のジェネレータの修理に子供を行かせて還らぬ命にしたのだって、胸が傷まなかった訳がないだろ。そんな叫びは誰にも届かず、喉も肺も全て蒸気に焼かれ…
というわけでフロストパンクの紹介です。
フロストパンクは前述の通り、この町のキャプテンとなり生き延びるゲームです。非常に勘違いされやすいですがこれは「シムシティ」や「シティーズ」ではなく、リアルタイムストラテジーゲームの「基地強化」を楽しむゲームです。よって「まちづくりをしよう!」だとか「家のローンを払おう!」だとか「蜘蛛や魚を売ってベルを稼ごう!」というゲームでもありません。
フロストパンクに敵は居ません。ですが、「熱」を保つための石炭はみるみるうちに減り、人がいれば「住む場所」が必要ですし「食べ物」だって必要です。80人では余りに人手が足りず、一週間生き延びる事すら難しいでしょう。そのためにほかの生存者を「探す」必要があります。
放置すれば2日で全滅する町の為、手元は常に忙しいです。言わば「住む!FTL」と言っても良い。石炭に15人向かえ!仕事の手を休め道路を敷け!さあ凍りついた木々も俺たちの家にしてしまえ!
で、生活改善に必要なのがこの「研究」です。研究でジェネレータを強化したり、いっぱいご飯作れるようにしたり、炭鉱や製鉄の施設を作れるようにします。この研究にも「木材」「鉄」が必要。設備を建てるのにも「木材」「鉄」が必要。研究には時間が必要なので資材があるからってポンと改善できるわけじゃありません。
そしてこのゲームは「時間経過でより寒くなる」という、言わばウェーブ制が採られています。家は最初ボロテントしか建てられません。ボロテントのままだと人々はあっという間に凍死します。なので「発展しなければならない」という外的ストレスが常にプレイヤーにはかけ続けられます。
暖房も無しに進めれば作業場は凍りついて仕事が出来なくなり、ジェネレータが貧弱なままでは住宅を温めることも出来ずに人が死ぬ。このゲームは常にプレイヤーへ選択を迫ります。
その選択の最たるものが「法律」「内政」でしょう。
始まりは「24時間労働の強制」だとか、「児童労働の許可」です。ごめんね、お父さんお母さんが働いている間は石炭拾いの手伝いとか皆のごはん作りしてね。本当に申し訳ない。寒波が到来する前に何とか住宅の改築を済ませ切りたいんだ。寝る間を惜しんでこの製材所を動かしてくれ。
何?食料が足りない?ちゃんとしたメシなど食わせてられるか。薄いスープで腹を満たせでもしておけ。重病人が出た?介護施設なんて要らないだろう。家で寝かせておけばいい。墓場なんて作ってられない。町の端に死体を埋めろ。病人で診療所が一杯など知ったことか。廊下に寝かせれば倍は入る。そもそも順序もつけていないのがおかしい。助かる見込みのあるものだけ助けろ。死人が出ても難民を拾ってくれば補充はできる。
選択には必ず結果が伴います。
安全な場所以外で子供を働かせれば命を落とし、おがくずを混ぜたスープでは病人が増え、働くことが出来なくなった重病人は絶望し自ら命を絶つ。無理な労働を命じれば心臓発作を起こし人が死ぬ。町外れに山積みの死体の手を取り、こんな筈では無かったと泣く家族。不満の解消に決闘を許可すれば、殴り合いでやっぱり人は死ぬ。
偵察隊が難民を見つけた。だけどそれに構っては居られない。だから町の場所だけ教えて別の場所へ向かった。町に来る前に15人死んだ。追放者が暮らす集落が在った。手出しはしない事を伝えて資材だけ積み込んだ。きっとこの追放者も全員死ぬだろう。ジェネレータを捨てて逃げてきた難民が100人。健康そうな者は10人しか居ない。だから90人の病人は受け入れられなかった。90人は全員雪の中で死んでいった。
プレイヤーが目的のために最適化していけばしていくほど、命は簡単に消えていく。
大寒波の後、街は生き延びた。
しかし、それだけの価値はあったのか?
フロストパンクはそんな、選択のゲームです。
病気で死ぬか、経済で死ぬか。増えていく病人を切り捨てて、今の人々を生かすのか。2020年の今時期だからこそ遊んで欲しいですね。
フロストパンクはSteamで大好評配信中です。
ゲームの中でぐらい、あなたが世界を救ってください。