アーマードコア6は20年経っても俺をレイヴンで居させてくれた。

 アーマードコアは私の人生の一番大事な所にあるゲームシリーズの一つだ。丁度2が中学時代に出て、そこから3サイレントラインまでが好きだった。高校時代に「もう一つのレイヤードを舞台にした遺物争奪戦」の話をノートに書き溜め、Webに公開したこともある。まあ、そういう熱を費やせる時期にアーマードコアが居た。

 

 俺の話はどうでもいい。能書きはここまでだ。

www.armoredcore.net

 2023年8月25日。アーマードコア6が発売された。
 発売されたので、

 こうした。

これはアーマードコアでは無いのでは!?という疑念

ウォルターが「近付いて滅多斬りにしろ」と言わないのが悪い

 ゲームを起動し、出迎えてくるのは重武装のヘリコプターだ。正直ここで3回ほどリトライした。何が良くないかと言うと、手持ちのライフルは全然効かないしミサイルも威力が低いし相手は高いところをビュンビュン飛ぶしで対処法が良くわからない。結論から言えばこいつはクイックブースト(素早く前後左右に動くボタン)でミサイルを避けて、自機を狙うために止まったらアサルトブースト(物凄く速くまっすぐ相手に飛ぶボタン)で距離を詰めて左手のブレードでざくざく斬ると倒せる。ここで「近接武器大前提のソウル系以後のアーマードコアになってしまったのか!?」と疑念を抱いた。

 が。

 ジャガーノート撃破後にパーツショップに沢山アイテムが並び、接近しての大爆発スキル「アサルトアーマー」や、アサルトブーストから繰り出せて大ダメージかつ相手の行動を一時的に止める「キック」、そして肩に固定武器を背負うのでなく交換用の腕武器を背負う機能などをアンロックしてからは、そんな懸念もなくなった。つまるところ「きほんのあそびかた」を学ばせた後、一気にシステムをアンロックして自由に戦ってくれという事に過ぎなかったわけだ。

 しかして、チャプター1の大ボス「バルデウス」の存在は私にとって余りにも大きかった。ミサイル乱れ打ち、高威力で受けると行動が取れなくなるグレネード、おまけに体力が半分になると振り回してくる火炎放射ブレード。強い。余りにも強い。あれこれ試してもなお強い。

アーマードコアアーマードコアである事を思い出す。

ボス戦前には必ず全回復ポイントがあって便利だ

 ところで今作はボスにやられるとチェックポイントから復活出来て、しかもその場で機体構成を組み替えられる。死ぬ。構成を組み替える。脚が遅かったか?この武器はロクに当たらなかったな。リトライ。載せてみたけど盾は自分に合わないな。ちょっと装甲を足してみるか?リトライ。どんどん目の前の戦いのため、自分の機体が最適化されていく。そしてプレイのたびに自分自身も最適化されていく。かといってこの戦いがソウル系かと言われるとまあそんなことはない。ローリングで見切るようなゲームでもないし、ジャストガードやパリィのゲームかと言われれば違うからだ。

 何よりアーマードコアはロボットアクションゲームだ。ロボットアクションゲームは「近付いてチクチク切っては相手の隙が出るまで逃げ回る」とかそういう事はしない。そもそも、このゲームの攻撃はだいたい3つしか存在しない。相手から真っ直ぐ飛んでくる強い弾か、ホーミングの弱い弾か、移動・球状・線のような何にせよ範囲攻撃だけだ。要求されるのは常に動き回ること。三次元機動、つまり高さも回避のうちに入るのを覚える事。動き回る為のエネルギーゲージに気を配るか、気を配らなくて良い構成と動きを自分なりに編み出し、そしてありったけを相手にぶつける。自分の選んだ装甲と移動力のロボットで、自分の選んだ武器をぶつける。それが俺にとってのアーマードコアだ。

 良い意味でも悪い意味でも言い訳は効かない。パーツも武器も固定でなく。強化だのレベルだのもそんなまどろっこしいものは存在しない。ゲームである以上倒せるように出来ている。上げられるのは自分の腕だけだ。それは確かにシビアにも見えるかも知れない。けれど「最初から使えるもの」が「最終ボスでも躊躇せず、型落ちせず使えるもの」なのが、俺がアーマードコアを好きだった理由の一つだった筈だ。

 だから、1時間かけてバルテウスをぶっ倒した。2分で倒し切る為に。

 

これは最新のアーマードコアだ。

どうでもいいけど意志を持った謎エネルギーが「コーラル」ってギリギリの名前だ

 アーマードコア6は「フロム作品がどうのこうの」「ソウルがどうのこうの」でなく、アーマードコアだ。そして令和のゲームだ。令和のゲームなので他の例に漏れず、完全に「コンセプトアート」と「それを絶対に実現してやるぞと開発した人々」の勝利のゲームとなっている。ボス戦後に夜が明け、灼けた空を見上げるカットシーンも最高なら―

 ―惑星を覆い尽くさんばかりの巨大構造体もただの背景でなく、実際にこの足場を降りていくことが出来る。遠景で「霞む」ということこそあれど、細かな光と陰のコントラストで簡略化されてしまった印象を一切与えない。若干コントラストを抑えた上でうっすらとカラーが変えてあり、ステージ毎に「なかなかとんでもない場所に来てしまったな」という印象を与えてくる。

 かといって絵面が地味かと言われればそんなことはない。そのある種落ち着いて繊細な世界の中を、人型の兵器が飛んでバカスカ撃ち合ったりレーザーブレードを振り回しているのだ。動かしている自機と相対している敵の行動は鮮やかな光や火花、炎で描かれる。誤解を恐れずに言えばド派手だ。令和のゲームなので床が明るいとかブースターから出る炎で背中が青いねとかそんな規模では済まない。床も敵も自機もがっつり明滅する。

 

 更に嬉しいことに強敵を倒すと決着の瞬間スローモーションになり、大爆発を起こしてやられてくれる。その瞬間急にキャラが棒立ちになることはない。メインシステムが戦闘モードを起動したら、戦闘モードが終わるまでが戦いだ。当然爆発する敵に撃ち続けるカッコいい自分の機体が撮れるし録画も出来る。そして何よりヒロイックだ。

 

 アサルトブーストで相手に近づくと、カメラが自動で移動して「下手・上手に自機、中心に敵」となるのも良い。敵の動きが見やすいのもそうだが、何より「強敵に立ち向かう俺」感が凄い。またこのアサルトブースト中にエネルギーこそ消費するが左右に大きく避ける事もできる。相手の攻撃に合わせて急速回避!そして相手の鼻先に銃を突きつけでぶっ放す!すかさずブレードで叩き切る!相手が体勢を崩したところで強力なキャノン砲をぶちかますなんて事が「なんとかゲーム内でやってみる」でなく「ゲーム上で有用な攻撃手段」として組み込まれている。

 そして極めつけに、アーマードコア6には「ロックオン機能」がある。相手に高さを合わせて、カメラをあわせて、このボタンを押したらこんな感じで前進するからブレードを…というまどろっこしさは無い。だから極論、ボスをロックオンした後に「狙う」という事はしなくてもいい。左手で前後左右に動いて、ボタンでジャンプしたりクイックブーストして、あとはトリガーを握りしめて撃つ。「当てる事」に必死にならなくて良い。「いつ、どうやって、何で攻撃するか」に専念し、「どうやって避けるか」だけ考えれば良い。そういう簡略化も施されている。

 これを良いと見るか悪いと見るか、評価は分かれるだろうが少なくとも「シングルプレイヤーのロボットアクションゲーム」としては非常に正しい事のように俺には思えた。というのも、「敵を見失う」「そして視界の外から攻撃を受けて死ぬ」というのは確かに緊張感こそあるが、裏返してみればそれはストレスそのものでもある。そして視界の外からの攻撃には上達のための学びがない。初見を驚かせる殺人びっくり箱にはなり得るだろうが、これはリトライを重ねて学習して最適化し、ボスを倒していくゲームだ。カメラが自動で振り向いてくれたってそろそろ良い頃合いだと思う。

衝撃のある攻撃を当てると相手が身動きを取れなくなる

 加えて、スタッガーシステムが良く機能している。これはミサイルやライフル、爆発する武器などで相手のゲージを蓄積させると景気のいい音と共に一時的に行動不能となり、更に攻撃することで幾分かのダメージボーナスが入るといったものだ。他のゲームでは「ひるみ・よろけ」に相当する。これが明確にゲーム上でゲージで出てくることにより、「相手への有効打かどうか」「相手がいつよろけるのか」「それに備えた武器の状況か」を考えながら戦うことが出来、また「スタッガーを溜める武器」「攻撃し続ける事で維持する武器」「スタッガーに合わせて一気にぶっ放す武器」など構成の面でも考えて戦う事が出来る。

 かといって「スタッガーの為にこれを装備しなきゃいけない!」なんて事もなく、スタッガーしたらラッキー程度で戦う事ももちろん問題はない。極論、ゲージが溜まると2~3秒動けなくなってダメージが増えるだけと捉えて戦っても良い。何にせよ相手が一瞬止まったからチャンスだ!となるのは戦闘にメリハリを生む。俺の好きな作品の台詞で言うなら「この瞬間を待っていたんだーッ!」というやつ。

 先に上げている「ロックオン」機能と合わせ、近接攻撃時にはある程度相手に自動で近付いてくれるシステムも完備されているので歴代シリーズで最高に近接攻撃がし易いのも良いところだ。総じてシステムが否応なくプレイヤーを歴戦の傭兵である…かのように錯覚させるように出来ている。

 

アーマードコア6は、難しくて、優しい。

  

 アーマードコア6の不幸は、「アクションゲームなのだから、相手が何をしてくるのかを見て、それを避けながら相手に攻撃するんだよ」というある種当たり前の事が「フロム製だから」「SEKIROとブラッドボーンとかダークソウルとエルデンリングの会社だから」というアーマードコアの居ない10年のフロムの話に加えて、「何度もやられて覚える」という事そのものに「ソウル」というニュアンスが少しでも含まれてしまう時代に出た事にある。

 だから「前ダッシュしよう」「ジャンプしてから左右に動いてみよう」「それでは三次元的に動いてみよう」という動きそのものに馴染むまでは、”理不尽な難しさ”と思ってしまうのも無理はない。もっともっと噛み砕いて言うなら、「ジャンプボタンを押し続けたらマップの限界高度まで簡単に到達するようなシステム」の中で、時に相手の頭を追い越しながら戦うというのは人によっては初めての経験ですらある筈だ。

 とは言え、APEXもモンハンも難しくて苦手だ。という人にアーマードコア6を「誰も出来るよ」と言って渡して良いかと言われたら、俺は首を縦に振れない。このゲームはボスの前で突っ立ってたら10秒で死ぬゲームだから。

 でも、「ボスをぶっ倒したい」「その為なら何だって使い倒す」という意志があるなら。そして明らかにこっちを狙っている時に硬直するような武器を撃ったり、追いかけ回しすぎて動けなくなってさえいなければ概ねこのゲームは避けられるように出来ている。デタラメに攻撃するのでなく、50数種類あるミッションと敵に対して、どうしてやればいいかを戦いの中で見出していけるのなら大丈夫だ。

 そして本題として、アーマードコアは「おれのつくったかっこいいロボットで無双するゲーム」ではない。任務の度、出てくる敵の度に4つの武器を使い分け、ロボットをホイホイ組み替えて遊ぶゲームだ。だからこそアーマードコア6は、自分なりの答えというよりは「自分のやりたいこと」が決めるまでは難しい。その代わり、自分のやりたいことを決め、そしてシステムをフル活用して戦場を支配出来るなら、惑星ルビコン3は楽しい遊び場となる。両手に火炎放射器を持って変形ロボを炙り、爆速で近付いてパイルバンカーを撃ち込む事もシステムが強力にサポートしてくれる。

 ロックオン、スタッガー、近接のホーミング、回避と攻撃だけに集中できるシステム。それらを使いこなそうとする意志があるプレイヤーには、アーマードコア6は優しく導いてくれる。俺は今作についてそう思った。

 

 ※本作と直接関係は無いのだが、過去作では長い長い道中の有象無象を切り抜けた上で、ロックオン無しで超速回避するボス戦に挑まされた経験が俺には有る。あの経験を経た上で「アーマードコアは俺のロボでかっこよく倒すゲームなんだー」とは、とても俺には言えない。

 

納得出来る死と撃破を繰り返す合間に、機械いじりがある。

この頭パーツ、シュールで好き。

 さて、アーマードコア6はアーマードコアなので自分の機体をカスタマイズできる。別に無理してやらなくても死にはしないが、アーマードコアをやるような人は多分、こう、弄るの好きだと思う。きっとね。

 今作のカスタマイズは歴代でもかなりスッキリした方で、下記の通りとなっている。

  • 武器4つ
    うち近接は左腕だけ。シールドは左肩だけ。
  • コア
  • ジェネレーター
  • FCS(遠近どこ寄りにする/ミサイルロック早くするなどのコンピュータ)
  • ブースター

 上記を組み合わせて自分のACを作っていく。種類とか何がどうとかは攻略wikiでも読んでおいてほしい。今作が素晴らしいのは、テストモード内でそのカスタマイズが可能という点だ。

 使ってみて、しっくり来なかったらロードを挟んでメインメニュー戻って、なんてことが無い。メニューを開いて入れ替えて、メニューを閉じれば即座にその状態が反映される。だから「数値とにらめっこして、いよいよ組み上がったものをテストする」でなく「付けては外し、一つ前の物と数字は変わったが実際の感触の変化はどうなのか」というサイクルを超高速で回すことが出来る。

 なので「やりたい事」に対して今の自分の機体はどうなのか、本当に最適化されているのかの検証の快適さが尋常ではない。本当にやろうと思えば数時間単位でテストモードに籠もることが出来る。作った機体データをその場で逐次保存出来ないのが本当に惜しい。テストモードで出せる敵ACにも過不足無く、適度に各種織り交ぜてバカスカ撃ってきてくれるので動作検証に最適だ。また作中で道中ボスとして出てくるメカも出せるので、予備動作の大きめの範囲攻撃にちゃんと機体が付いてくるかの確認も出来る。

 加えて、その場で武器も交換できる事から「試し撃ち」も非常に快適だ。両腕両肩で何十種類とある武器で、スタッガーが溜まる溜まらないだのああだのこうだのというのをカタログスペックで見てもやはり一度握ってみないことには分からない。相手の体力やスタッガーの溜まり、近接であれば踏み込みの距離も全部その場で確かめられる。

 つまり「戦闘」の部分での納得もあれば、「構成」の部分での納得もある。10年振りだからこれでいいでしょという妥協は感じられなかった。

 

お前は消えていったものを忘れていなかった。

 そしてそのアーマードコア6を彩る物語は、本当に素晴らしい。人類にとって未知の資源である「コーラル」を巡る企業戦争。そのコーラルが埋蔵された惑星「ルビコン3」を封鎖しようとする惑星封鎖機構…という公式サイトにも書いてあるような事はまあ、どうでもいい。俺が良いと思った物の話をする。

 ルビコン3を封鎖する為の衛星砲に睨まれながらスタートするのは「アーマードコア3サイレントライン」の要素だし、そこを潜り抜けて爆裂ボルトでパパパァンとポッドが割れて出てくるのは「アーマードコア2」の要素だ。初期機体が一つ目なのは「無印」のパッケージから伝統のEYEシリーズで、挙げ始めればキリが無い。

 キリが無いんだが、実はそんな事はどうでもいい。「原作では」ではなく、それらがゲーム中で「アーマードコア6」のギミックとして生き、そして「アーマードコア6の中で格好いいもの、重要なこと」として生かされているという事だ。居るだけとか、有るだけどか、そういう事ではない。物語の開始からずっとあった「衛星砲」ルビコン3に住む人々を遥か空の上から押さえつけ、そして物語の最終局面で明確にプレイヤーへ牙を剥く。そして、撃ってこない。この使い方だ。出すだけでなく意味を持たせて更に一捻りしてくる。これが素晴らしい。

 パロディだかオマージュだか知らないが、アーマードコアシリーズで最強のライフルはエヴァポジトロンカノンの形をしていて、名前は当時のプロデューサーから取られている。それぐらいアーマードコアというシリーズはちょっとゆるい所がある。そしてここまでの話を踏まえた上で聞いてほしい。

 本作ではとある任務でコーラルが溢れ、洞窟から逃げる場面が有る。その時、エネルギーの消費量が減っていつもより長く飛ぶことが出来る。そして複数あるルートの決戦の場が、空だ。空には大気中を漂うコーラルの層があり、ここでは無限に飛び続けることが出来る。制限から解き放たれ、自由に飛ぶ。飛んで迎え撃つのは敵の用意した大艦隊だ。

 

 ハッキリ言わなくていい。分かる人だけ分かれば良い。「無限に飛び続けられる空でめちゃくちゃな主砲をぶっ放してくるのを相手に敵艦を落としまくる」って、そんなんANUBISに決まってるでしょう。ベクターキャノンは無い。でもホーミングミサイルはある。ホーミングレーザーはあるけどちょっと弱い。でも斬りつけるブレードはある。

 フロムソフトウェアという所は、10年振りのシリーズの中で20年前の名作と同じことをやりやがった。ご丁寧に無限に空を飛べるよう、その理屈まで付けた上で俺たちを再び自由にした。もうそれだけで、俺がアーマードコア6を「2023年の最高傑作」にして「ANUBIS以来の20年でのロボットアクションゲーム最高傑作」と呼ぶに値する

 お前は忘れていなかった。このごちゃごちゃとパーツを組み替えるロボットアクションゲームの事も、様々な事情があってリマスターを2回出して消えていったゲームの事も。その上で令和5年に出すゲームとして恥じない割り切りと、新たな激しい駆け引きと、ユーザビリティを備えて戻ってきた。こんなに嬉しいことはなかなか無い。

 

「一度生まれたものは、そう簡単には死なない」

 シナリオ上であれがよかった、これが良かったと語りだしてしまうとあと記事が何本あっても終わらない。シチュエーションと共にもう1つだけ話して区切りとしたい。

 話したいのは最終局面からエンディングまでの事だ。

 物語の最終局面で、プレイヤーは暴走したAI、そしてAIに取り込まれてなお戦おうとする一人の男と対峙する。プレイヤーの傍らにいるのは序盤からずっとサポートしてきてくれた少女だ。その少し前、少女とプレイヤーは仮想空間で戦い、少女は「人は人と争うのに適した形をしている。そして戦う事こそが可能性なのだ」と呟いた。 その少女が、ついにプレイヤーと同じようにロボットに乗って並び立つ。少女は鋼の肉体を手に入れて、共にプレイヤーと戦う道を選んだ。

 つまり…ロボットが人型をしているのは、人と人が戦うのに最適だからアーマードコアは10年ぶりに現れて、我々にそう告げたのだ。

 最終ボスもちゃんと人型をしており雌雄を決する為に戦いを挑んでくる。少女も暴走AIも黙らせ、最終パートでは1対1だ。作中で50年前にあったことも。暴走AIの思惑も、ルビコン3で何があったかも、そんな事はどうだっていい。頼まれたから戦って、願われたから戦って、積み上げてきたものがあるから戦って…そうではなく。

 星の見守る中で、2人の人間が戦う。

 アーマードコア6は自身がシリーズで積み上げてきたものも、ロボットアクションゲームが積み上げてきたものも、様々なミームも取り入れて、その上でそんな単純で、そして本質をプレイヤーにぶつけてきた。俺にはただただ、その事実が嬉しかったんだ。

 アーマードコアが生まれた。遊びたいと思う人達が居た。戦いたいと願う人たちが居た。それにアーマードコア6は快適なシステムと素晴らしい物語でもって答えた。戦う事で可能性が生まれ、戦いの為に人の身体があった。だからロボットは、人の形をしている。

 Steam版が初日で同時接続15万人を突破するほどの注目を集め、「アーマードコアを遊んだ」という体験とミームは世界中に広まった。もうそこには10年続編が出ず、ファンが出涸らしのミームをヘラヘラと擦り倒す光景は無い。

 例え「やりすぎ」ようと。

 力を持ちすぎていようと。

 消えろと誰かに言われても。

 世界から不要だと言われても。

 その生命が「イレギュラー」と呼ばれようが。

 一度生まれたものは、そう簡単には死なないものだ。

そうアーマードコア6は、高らかに宣言したのだった。

ありがとう。アーマードコア6。
俺はこのゲームのお陰で、20年経っても、またレイヴンになれたよ。