ローグとユニティ、2014年のアサシンクリードを駆け抜けたので記事にする。ローグ編。

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 アサシンクリードシリーズの主要タイトルを追いかけている人は日本にどれぐらいいるのだろう?と考える事がある。3までは10万本売るタイトルだったが、どんどん失速して今は初週5万本程度のタイトルになってしまった。

 かくいう私も、2014年のアサシンクリードから触れていない。ローグとユニティ、2本のリリースによって「いよいよダメそうだな」なんて思ってしまったからだ。4という最高に面白かったタイトルでアサクリの思い出を綺麗なままにして、そのままにしたほうがいいんじゃないかなんて。

 

cr.hatenablog.com

  さて、今回は2014年に国内ではPS3専用タイトルとしてリリースされた「アサシンクリード ローグ」とPS4及びXboxOneタイトルとしてリリースされた「アサシンクリード ユニティ」の話をしていこうと思う。

 ローグにあったのは、外伝ゆえの叫び。
 ユニティにあったのは、新世代機故に何かしなければならないという慟哭である。

 

新天地アサシン教団vsテンプル騎士団物語、ここに完結。

 3からローグまでのアサシンクリードの話を整理していこう。

 3ではアメリカ独立戦争に身を投じ、「征服者」達全てと戦い、そして全てを失っていくインディアン出身の「コナー」の物語が描かれた。3はこのコナーが生まれるまでを父親であるテンプル騎士の「ヘイザム・ケンウェイ」を通して描き、そしてこの父をついに手にかける所までをやった。

 ※ここでコナーが父から取り戻したアミュレットが、3の現代編で遺跡を開放する鍵となる

 4はこのヘイザムの父「エドワード・ケンウェイ」がひょんな事からアサシンとなり、海賊達と共にカリブ海をかけめぐった。3から大きく時計の針を戻し、大航海時代を描く。「観測所」という世界の人々を映し出す―盗聴含め「監視」出来てしまうと表現したほうが正しいだろう―遺跡の争奪戦の果て、エドワードはその「観測所」を封印し、新大陸を去る。

 

 さて、ローグはこの4の時代と3の時代をつなぐ物語である。

 3ではアサシン教団の北米支部が消滅しかかっており、老アサシンの「アキレス」が残っているだけになっている。4では新天地でテンプル騎士とドンパチやっていたのに、見る影もなかった。ローグで描かれるのはこの3と4の間。大航海時代アメリカ独立戦争の間。七年戦争フレンチ・インディアン戦争)である。

 と言っても、2のように時の権力者ボルジア家を相手取っての大立ち回りのような事をするわけではない。3同様、質素な小屋の立ち並ぶ町を駆け抜け、ともすれば場違いとも言える豪華な洋風建築の豪邸に忍び込んでは人を殺し、そして4のように海戦でも戦っていく

 

 主人公はシェイ・パトリック・コーマック。アサシンであり、テンプル騎士である。

 

3からのアサシンクリードの総決算となったシステム面…だが。

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 ローグの舞台はリバーヴァレー(カリブ海より遥かに狭い、ニューヨーク郡あたりをごっちゃにしたマップ)と流氷だらけの北大西洋、そして3のようにボロボロになる前のピカピカのニューヨークの3つである。

 海戦、というか川の中での小競り合いのような雰囲気になっており、また空も海もカリブ海とは違った大変地味な状況である。砦の近くはガチムチの艦隊がいるのでバトルをする時はそれなりにド派手だ。主人公も海賊ではないのでヒャッハー感が若干薄れた。狩猟も残っている。残っているがⅢのように「野山を駆け巡れ~」感が無く、クエストだけやってると全く動物に出会うことすら無い。

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 ニューヨークは素晴らしい。1の時点で「エルサレム」「ダマスカス」「アッカ」と3つ都市を作り、3でいよいよ息切れを起こしていたがローグの大きな街はこのニューヨークだけだ。3のように寂れた町でなく非常に栄えており、密度が高く、登り甲斐のある高い建物ばかり。屋上の間にはスッと移動できるロープが渡してあり、高度を落とさずに非常にスムーズに移動ができる。

 ニューヨークにはアサシンの息のかかったギャングが拠点を築いており、そこをひとつひとつ潰して自分たちの手に取り戻して行くのも楽しい。また4にあった艦これミッションも「一つずつ入植地を開放していく」というフレーバー部分とマッチしており、どんどん船をゲットしては戦いに投入していくサイクルが出来ている。

 3で大ゴケし、4で見直した部分を更にブラザーフッドのように回帰させている。と言えば既存のプレイヤーには分かる感じだ。

 

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 それだけでなく、精一杯の「拡張」を行っている。回数をこなすと冗長になってく船上のバトルは船のへりに機関銃が付いたため敵をバカスカ撃ち倒す事ができ、チャンバラの手間を省くことが出来る。

 「燃える油」を船の後ろから落とせばそれを踏んだ船になかなかの勢いでダメージが入り、北大西洋では氷山を破壊して大波を起こすことで敵艦に大ダメージを与えることも可能だ。まるでシューティングゲームのような力の入れよう。

 通常のバトル部分でも3から続投の「吹き矢」に続くスーパーエアガン(本当です)(気になったら遊んでみてください)が登場しており、睡眠・発狂に加えて敵をひきつける爆竹弾で敵を思う存分欺くことが可能。

 加えて剣も二刀流となっており、アクションもかなり格好いい。DLCで「日本刀」も配信されており、しかも攻撃力がめちゃくちゃ高いのでこれでチャンバラも楽しく戦い抜ける。

 極めつけはグレネードランチャーの存在だ。
 本当にアサシンがグレネードランチャーを振り回して敵をぶっ飛ばす!まとめて敵を眠らせたり、集団を発狂させて地獄絵図を作り出す事ができる。「一体多で暴れまくる華麗なアサシン」だとか「要塞を手玉に取り皆殺しにしていくアサシン」のロールプレイの決定版だ!

 

 外伝ながら、ほんとうにうまくやっている。

 

 が、マンネリ感が否めないのは事実である。私は4から時間をおいて遊んだからいいのだが、これを4の一年後、楽しみにして定価8000円で買ったらけっこうガックリきてたんじゃないだろうか?

 「対テンプル騎士」で朽ちていくアサシン。そして発生する大災害。

 病魔に侵され、老い先は短く、足を引きずって歩いているような男を屠った。
 最早自ら戦えないほど、年老いた男を屠った。

 シェイは「遺跡の場所を示す箱」(携帯機やDL専用で展開されていたシリーズで争奪されていたもの)とその説明書である「ヴォイニッチ手稿」(4で登場を巡るテンプル騎士団との戦いの中で、そんなアサシンの行動に疑問を抱いていく。

 もともとアサシン教団は「抑圧されず、人々の自由意志に任せて人類を守護していこう」という存在であり、またテンプル騎士団も「エデンの果実を用いて、より良く人類を導いていこう」という存在。つまり別に殺戮や支配が目的ではなく、互いに「人類をより良くしていこう」という組織である。

 そんなアサシンが「殺さなくていい筈の人々まで手にかける」という行動を、テンプル騎士との対抗の為にやってしまっては、テンプル騎士にも劣っていくのではないだろうか。

 

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 シェイがアサシン教団と袂を分かつきっかけになるのは、その「箱」の示した座標の一つであるリスボンへ出向いて発見した「エデンの果実」の引き起こした大災害である。

 

リスボン地震 (1755年) - Wikipedia

 後の世にリスボン地震と呼ばれる大災害を引き起こしたのは、あろうことか人々を守護するアサシンであった。

 

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 エデンの果実の収められた遺跡の上にあった教会は崩れ、リスボンの町は瞬く間に瓦礫と化していく。この大災害の引き金を引いたのは主人公であるシェイ、そしてそれを操作しているプレイヤー自身である。この命からがら逃げ出すシークエンスが2からあるジェットコースターめいたアスレチック要素なのだが、今回は守るべき人々に手を差し伸べることすら叶わず逃げることしか出来ないステージとして非常に効果的に使われている。

 

 元より、4の時点で「人の手に負えるものではない」と観測所をアサシンは手放していた筈だった。それを何が起こるかもわからないまま「テンプル騎士に先んじる」「テンプル騎士には渡せない」という大義の為に起動した結果が、こうだ。

 当然、シェイは遺跡の探索を中断するように教団に申し出る。が、教団は頑としてそれを拒否。シェイは教団本部からヴォイニッチ手稿を強奪し、アサシンから遺跡を保護する強硬手段に出る。が、元より自分の師であるアサシン達からは逃げることが出来ず、背中から撃たれて海へ堕ち…

 

 ここからがローグのキモである「アサシンが教団を裏切りテンプル騎士となる」展開となる。プレイ時間でいうとだいたい10時間ぐらい。船の強化や各種バトルの追加要素が出揃うのもここまで時間がかかる。かなり、かなり頑張っているとは思うのだが、正直このリスボン地震までのローグは眠かった。

 上でザッと書いたシステムの追加要素は出揃い切ったものを書いたものだが、序盤は各種アップデートも封じされているため最初から砦に乗り込んだりデカい船と戦うのも億劫ということもあり、またアサシンがだいたい堅物でみてて面白くないためシステム面でもストーリー面でも眠かったからしょうがない。

 

そしてプレイヤーはアサシンと対峙する。

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 物陰にアサシンがいる。
 草むらにアサシンがいる。
 あの道行く人もアサシンかもしれない。
 道端で腰掛けている婦人すらアサシンかもしれない。

 テンプル騎士に加担してからのシェイの戦いは一変する。彼の命を狙ってアサシンが襲いかかってくるのだ。それも堂々と武器を構えて走ってくるわけがなく、一般市民に紛れたり、隠れる場所である藁山から飛び出してくるのだ。

 アサシンが近くにいる時は、彼らの囁きが聞こえる。タカの目を使って彼らを見つけ出し、騒ぎを起こして誘き出し、そして殺す。システム面とフレーバー面両方から強烈なスパイスが加わり、戦いは更にスリリングになった。

 

 アサシンハンターとして戦い、功績が認められ、正式にシェイはテンプル騎士のマスターの一人となる。そこで出会うのが4のエドワードの息子にして3のコナーの父、ヘイザム・ケンウェイだった。シェイは彼と組み、かつての仲間、そして自らの師すら手にかけて行く。

 ここの流れが非常に良い。4と3の間のミッシングリンクが次々と繋がっていく。人を殺めては逃げる側だったアサシンを追う側となりチェイスしたり、その際に毒ガスを撒いて無辜の人々を利用する様まで描かれる。また大海戦も用意されており、ジェームズ・クックと共に自慢の船で暴れられる。事前に「強化して挑んでね!」と警告が出るのも親切で、遊んでいてそんなにストレスが溜まらないシステムなのも好評価だ。

 

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 また、「シェイの記憶データの損傷が酷い」という事にして時代をぶつ切りにしているのも怪我の功名か、ちょくちょく「ローグ」の時間軸では一番新しいフランス編が挟まってダレる事を防いでいる。退屈で貧相なアメリカと違い、見どころ満載のパリを割れたガラスのようなエフェクトの中で走るのは今見ても新鮮な驚きがあって良い。

 ここで「じゃあシェイはどうしてパリに行き着いたの?」と謎にしておくことによりローグの物語を進めるモチベーションを保っているわけだ。

 

 

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 アサシン達の「暴走」は止まらず、北極に隠された遺跡が遂に突き止められてしまい、ヘイザムと共に「北極に隠された古代遺跡」に向かうクライマックスは絶品だ。洞窟の中、アサシン達を欺きながら皆殺しにし、ついに「エデンの果実」に辿り着いたがアサシンに起動されてしまい、崩壊する洞窟から抜け出すシーンは映画顔負けの迫力。結局エデンの果実は起動されてしまい、親友を手に掛け「ヴォイニッチ手稿」は取戻したものの、「箱」は行方不明に…

 

 ヘイザムから「一生かかってもいい、箱を見つけてくれ」と頼まれたシェイは、テンプル騎士の信条に則り承諾。ローグのクライマックスから20年後のベルサイユまで記憶は断絶します。そう、パリにシェイが居たのは遂に「箱」のありかを突き止めたから。その「箱」を持っているアサシン、シャルル・ドリアンを殺しにフランスへやってきた。

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 そして辿り着いたこの場所は、ユニティの主人公「アルノ・ドリアン」の父であるアサシン「シャルル・ドリアン」が暗殺された場所。
 アサシンクリード ローグの最終ミッションは、ユニティの主人公の父親を殺し、ユニティの物語を開始させるものである。
 

 

 アサシンクリード ローグは4から3までのミッシングリンクを描く物語だけでなく、ユニティの始まり「主人公の父親の暗殺」をプレイヤー自らが行う事により、ユニティまで過去編の物語を繋げるものだった。

 

 

 コンパクトな外伝であり、同日にメインシリーズが発売され、旧世代機向けについでで出されたローグ。しかしながらその中身は「ケンウェイ一族」のサーガをより一層深めるものでありながら、テンプル騎士とアサシン教団の戦いを再度ヨーロッパへ橋渡しする物語。そして精一杯の楽しみを詰め込んだ叫びのようなタイトルだ。

 

 

  日本では初週5000本に届かない、出たことも殆ど知られていないようなリマスターとなってしまったが、まだ遊んだことのない人は是非触れてみてほしい。ユニティしか知らなくても、ユニティへ繋がる前日譚が楽しめるし、4しか知らなくても4の後日談として楽しめる。この外伝を見逃さないでほしい。

store.ubi.com

 なんとUplay版にも日本語音声付き。今こそ遊ぶべきだ。私はそう思う。

 

 

 シェイ・パトリック・コーマック、アサシンでありテンプル騎士の戦いを見届けてほしい。それは人知れず世界を救うために戦う、2つの組織の物語だ。

 

 次回はユニティ編です。