青眼烙印ドラゴンメイドで何とかならないかもがいている

 

 皆さんは「ドラゴンメイド」をご存知でしょうか。

 

ドラゴンメイドは遊戯王OCGのカテゴリの一つであり、デッキビルドパック ミスティック・ファイターズで登場したドラゴン属を主体としたデッキタイプの一つです。

 下級モンスターや魔法・罠は全てメイドさんメイドさん達のお仕事がモチーフになっており、コツコツお仕事をメインフェイズでこなしながらバトルフェイズに突入すると…

こういう赤いメイドの子が手札に戻って

ドラゴンになってバトル!
 バトルフェイズ終了時にはメイドに戻るか、ドラゴンのままで居るかを選択できます。下級のメイドを召喚・特殊召喚しては召喚成功時効果でカードを手札に集め、バトルフェイズではドラゴンになって戦うのが基本戦術です。

 そしてドラゴンメイドの鍵となるのがこの融合魔法。
 ドラゴンメイドとドラゴン族で融合するのは…

 

 他のドラゴンが手札に戻った場合にフィールドのモンスターを爆殺するメイド長、もしくは攻撃力3500な上に1ターンに1度相手のカード効果を無効にして破壊しメイド長に戻るドラゴン形態のシュトラールです。

 特にシュトラールは自分・相手のスタンバイフェイズにメイドを手札・墓地から特殊召喚して更にわんさか準備を整えて手札がわっさわさになるので先攻であれ後攻であれ1ターン目でこれを出すのが目標になるというか、これを立てないと多分死にます。

 以上がドラゴンメイドというカテゴリについてです。

 ちがいます。

 

 さて、そんなドラゴンメイドですが多種多様な弱点があります。

  • モンスター効果でサーチ・墓地肥やししてナンボ
    カテゴリとしての動きは「メイドの召喚・特殊成功時効果」がグルグル回ることを前提としているため、メイドに召喚権を切った所に<エフェクト・ヴェーラー>なり<無限泡影>なり<灰流うらら>なりを当てられた時点で途切れます。後攻1ターン目にメイドが効果を使えなかったら死、というのは純ドラゴンメイドであればあるほど珍しい光景ではありません。
  • 上級のドラゴンが腐りかねない
    当たり前の話ではありますが、デッキに積む上級が自身での条件あり特殊召喚対応ではない時点で上級ドラゴンだらけの手札で事故る可能性があります。出て使えないと死ぬ、そもそも出せなくて死ぬ…!
  • 場にメイドが居てナンボ
    融合モンスターである<ドラゴンメイド・ハスキー>が破壊効果を使うにも、融合カードの<ドラゴンメイドのお召し替え>を拾うにも、<ドラゴンメイドのお片付け>でバウンスするにも場にメイドが居ないことには使えません。ドラゴンメイド指定でないカードもあるにはある…が!

これらの克服の為に様々なデッキが考案されました。

 幸い、ドラゴンメイドは下級メイド3種類と<ドラゴンメイドのお召し替え><ドラゴンメイドのお心づくし>、加えて上級ドラゴンを各1枚さえ積んでおけばメイドと言い張れる程度の機動力があるため、<灰流うらら>等の手札誘発が大量に積めます。汎用カードである各種壺や罠、そして誘発を積みまくって相手を止める事が可能です。

 大会でも2021年の中頃までは結果を残しており、特に【アーティファクト】カードを多めに採用することで相手をゴリゴリに縛ったりして相手にやりたいことを徹底的にさせない事でなんとかなっている感がありました。

 が。

 館は焼け落ちました。

 

 というわけで2022年もドラゴンメイドで何とか勝ちたいので環境デッキには届かないけど勝ちたいデッキの紹介です。

 

www.db.yugioh-card.com

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以下各カード採用理由

  • 下級メイドが2枚、上級ドラゴン1枚ずつ
    同じメイドにダブられるぐらいなら手札にバラエティが欲しい。
  • アルバスの落胤1枚
    <ドラゴンメイドのお召し替え>は融合で出すのがドラゴン族なら良いので、ドラゴンメイド側がハスキーまでしか行けないようならアルバスの落胤側ルートに使える。
  • 青眼1枚、ジェット2枚
    高レベルドラゴンの時点でシュトラールの素材。加えてアルビオンの融合素材にもなる。後述するネビュラの特殊召喚のレベル8にも対応。ジェット2枚にする事でジェットが破壊されると墓地のジェットが出てくるループが出来るので2枚。
  • アルベル1枚
    召喚権を烙印融合に変換…でき…れば。言うほど初動でもないので1枚。
    ベリオンの為にチェイムを落としたくない時に使う。
  • キット1枚
    烙印融合もしくはお召し替えでアルバス融合モンスターを出した後の回収役。
  • 雲龍ネビュラ1枚
    レベル8ドラゴンが5枚あるのとドラゴンメイド側のギミックで手札に戻すことが多いので展開用の潤滑油として動く。手札のレベル8ドラゴンとネビュラを見せることでその2体を特殊召喚出来るのと、光闇属性レベル4が回収可能なのがどちらも強力。
  • ファンタズメイ1枚
    融合素材によし。特殊召喚条件ゆるゆるでよし。下級メイドが立つまでの見守り役によし。
  • 手札誘発薄め
    ダブると腐る派。
  • お召し替え1枚
    わざわざこれを除外してくるのは考えにくいため。チェイムでサーチ可。
  • お心づくし3枚
    おろかな埋葬+死者蘇生+手札から特殊対応のドラゴンメイドメインエンジン。だいたいうららを打たれるのはここ。
  • 竜の霊廟2枚
    これを経由してお心づくしから下級メイドを墓地蘇生で動ける。わざわざメイドを落とさなくていい場合は青眼とジェットをコンビで落とす。
  • 烙印融合3枚
    アルバス関連だけ落としても良いが手札にジェットがいるなら青眼を落として条件を満たしたり、メイド側で動けるならメイドを落として融合に繋げる。
  • 超融合2枚
    正直メインから入れなくても良い感はある。
  • 墓穴の指名者2枚
    後攻での相手の誘発止めないと死ぬので。
  • お片付け3枚
    自分の場と相手の場・墓地のカードをバウンスする罠。自分の場の「ドラゴン族」なら何でも良いのが最大の魅力。アルベルとキット以外全てドラゴン族なので着地時の効果を使ったアルバス融合を戻してもいいし何にでも使える。墓地に行った場合は相手ターンでも使えるフリーチェーン蘇生札となるのでこれも強力。
  • 烙印断罪
    烙印融合を手札に持ってこなくてもいい場合は「烙印」魔法罠を墓地から回収する効果で繰り返し利用できるカウンタートラップ。1枚でよい。
  • ドラゴンメイドリラクゼーション
    シュトラールがハスキーになった後にシュトラールで蘇生していた下級を戻すとハスキーの効果発動トリガーになり1サーチ1破壊になる事を覚えておこう。相手エンドフェイズ時に魔法罠を手札に戻させれば妨害が1枚減ってなおのこと良い。
  • ストライカードラゴン及び天球の聖刻印
    パルラ召喚→お片付け墓地送り→ストライカードラゴンリンク召喚→お片付け除外でパルラ蘇生→2体で天球の聖刻印が出来上がる。相手ターンにデッキバウンスを決めた上で更にアルバスの落胤特殊召喚し超融合が決まれば一番理想。ただし烙印融合を使うターンには使えないので注意。
  • ドラゴンメイド融合とアルバス融合
    1月の新規である深淵竜アルバレナトゥスが実質ドラゴンメイド新規みたいな所ある
  • ブルーアイズタイラントドラゴン
    ドラゴンメイドのお召し替え及びアルビオンとルベリオン対応。ダメージステップ終了時に墓地の罠カードをセットする効果があるので烙印断罪かお片付けを拾っておくと強い。

宣告者ドライトロンには勝てないけどそこそこ勝つ、感じになっていると思いたい。
採用理由書いてて飽きてきたのでこのへんで。

スパイダーマンの忘れ物。あるいはピーターパーカーの墓標について。

 ゲームの収集要素と聞いて何を思い浮かべるだろうか?人によってはDKと描かれたバカでかいコインかも知れないし、亡き弟が好きだった羽根かも知れない。数を集めたらゲームから褒めてもらえて、ついでに何かしらの強化アイテムが手に入る。まあだいたいそんなところだろう。f:id:crs2:20211024004809j:plain

 今日書きたいのは、そんなゲームの数ある収集要素の一つから、「マーベル スパイダーマン」より「バックパック」の話をしたい。これはゲームの序盤から開放されるもので、それに纏わるトロフィー名が「忘れもの」である事から分かる通り主人公のピーター・パーカーがスパイダーマンとして活動する上で各地のロケーションに張り付けたまま置いてきた物を集めよう!というものとなっている。

 まあそれぞれの元ネタについては凄いオタクが書いてくれているので読むと良い。

nlab.itmedia.co.jp

 

 が、ぶっちゃけそんな事は知らなくても良い。「マーベル スパイダーマン」のピーター・パーカーは既に23歳。15歳の頃からスパイダーマン活動を始め、既に8年が経過している。

 まず前提として、スパイダーマンについて本当に何も知らない人向けに知っておいてほしい事として…スパイダーマンは基本的に「誰にも正体を明かさない」タイプのヒーローだ。だから事件が起これば「急に居なくなり」、事件が終わると「何処からか戻ってくる」のがピーター・パーカーの周囲の人々から見たピーターの印象となる。友人が「あのスパイダーマン凄かったぜ!」と言えば「ハ、ハハハ…そうだね…」とはぐらかす光景、何となく想像がつくだろうか?

 「特殊能力が手に入ってしまった」「敵が出てきた」「ヒーローとして戦った!もう彼はヒーローなのです!(ババァーン)」というよくある流れをその手の界隈の用語では「オリジン」と言う。このゲームのスパイダーマンにとって、そのオリジンは既に遠い日の話だ。そのスパイダーマンが、そしてピーター・パーカーがどんな事をして来たかを何より雄弁に語っているのが、この「バックパックの忘れもの」達である。

 

 バックパックの中身は二種類に分けられる。スパイダーマンとして戦う中で手に入れたもの」「ピーター・パーカーで居られなくなり、置いていったもの」の二種類だ。試作品のウェブシューター(糸を飛ばすアレ)だとか、ヴィランにまつわるアイテムだとかは前者であり、スパイダーマンの戦いの歴史そのものだ。これが敵を倒すキッカケになったとか、そういう事を入手時にピーターが説明してくれる。

 

 じゃあ、後者の話をしよう。

例えば「高校のTシャツ」だ。「洗うつもりだったんだ。…6年前に!」とピーターの解説が入るが、高校生の体操着を置いて、彼はスパイダーマンにならなくてはならなかった。

例えばMJ(ヒロインのニックネーム)との「初デートのメニュー」もそうだ。恋人とレストランで食事している時に飛び出して、その時に置いていったのだろう。

例えば「プロムの花」もそうだ。ハイスクールの卒業を控えたパーティの最中にだって彼はスパイダーマンにならなければいけなかった。

「大学での教育助手をやっていた時の名札」も、「大学の卒論」も、彼は置いていかざるを得なかった。つまりそれは、ピーター・パーカーという青年がピーター・パーカーとして生きていく「将来」の事も置いて、スパイダーマンとして戦って来たことを意味していた。

ピーター・パーカーは、それらの「忘れもの」について語り、そして懐かしむ。

「死んだ両親の写真が収められたロケット」を、「死んだベンおじさんと一緒に見に行ったバスケの試合のチケットの半券」を、「退職した時に貰ったメッセージカード」を、「恋人と二人で住むと思ってたアパートの申込書類」を忘れて、ピーター・パーカーはスパイダーマンとして戦った。

バックパックの忘れもの達は何より雄弁に語る。ピーター・パーカーの過去を。そして、ピーター・パーカーがスパイダーマンで在るために、置き去りにしていったものを。

 

 

 恋人とデートをし、当たり前の青春を送り、記者をやりながら大学に通い、教鞭を取りつつ科学で「みんな」を救うための研究に取り組む。そんなピーター・パーカーの人生があり得たかも知れない。だが、スパイダーマンで在る為に、ピーターはそれら全てを捨てざるを得なかった。ゲーム内での収集アイテムを集めるうちに見えてきたのは、まるで「ピーター・パーカー」という少年の墓標とでも言うべき残骸達だったのだ。

 

 

 さて、今回は収集アイテムである「バックパック」の話のみに留めたい。まだ遊んでいないのであれば、ぜひPS4なり5なりでプレイすべきだ。「爽快!」とか「移動が凄い!」しか知らないのであれば、超一流の「語り方」があなたを待っている。

 バックパックの忘れ物達は大学での卒論を経て、23歳になったピーター・パーカーがオットー・オクタビアス博士の助手として働くことになったゲーム開始時までのバックストーリーを描いている。子供の頃からの憧れだった博士の助手だ。世界を変える発明も目前で、ようやくピーターは小さな夢を一つ叶えようとしている。そんなピーターを待ち受けていたのは……

 

 「マーベル スパイダーマン」は、「スパイダーマンがドクター・オクトパスを倒す」の物語だ。それ以上でも以下でも無い。ただただ、「スパイダーマンがドクター・オクトパスを倒す」物語なんだよ。

コロナ禍で他人に疲れ果て、ひたすら100年前の道具を直す動画を観ている。

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 お久しぶり。

 何故ブログを書いていないかと言うと、今年はコロナ禍で尚の事ストレスを溜めまともにゲームをしていないからだ。ゲームはおろかアニメもウマ娘2期から観ていないし、漫画も殆ど読んでいない。映画館にはもう1年以上行けていない。そんな事をしている間に実家の3匹の猫は2匹虹の橋を渡り、祖母は帰らぬ人となった。線香の一つも上げにいきたいところだが、東京から北海道に帰っていい状況じゃない。仕事でウレタンマスクだったり、ノーマスクだったりするような不特定多数の客とあまりに接触しすぎている。

 ともあれ、じゃあ何をしているのかと言うと通勤時に会社の金でビジネス新書やらを読んだり、寝る前に今回紹介する「レストア動画」を観ている。

 冒頭に紹介したのは1891年のラチェットドライバーの修理動画だ。ピンの一つ一つに至るまで分解し、旋盤を用いて磨き、時にネジをイチから作る。だいたい20分で1つが直っていく。それらを観ている理由について語りたい。

 

「はいどうも」から始まらないのが良い。

 レストア動画は基本的に「はいどうも」から始まらない。朽ちて錆びついた「今回のお品」がテーブルにドンと置かれたり、ガレージや庭に置いてあったり、ゴミ山でそれを見つける場面から始める。そして殆どの動画では誰も喋らない。ただただ、淡々と道具が分解され、鉛テストされ、やすりがけされ、砂吹きされていく。

 これが良い。よいと言うより「素人の話を仕事の外でまで聞きたくない」んだと思う。特に男性が少し高い声でしょっぱなに挨拶してくるとそれだけでイラっとする。前置きも聞けて10秒までだ。加えて感情たっぷりに…特に”芸人の真似事のように”話したり用意してあるものに対してツッコミを入れたりしていると寒くて今後そのチャンネルが二度と表示されないように報告を入れたりしている。

 ポップノイズなど道具の使い方に起因する部分、防音環境の整わなさに起因する反響音。そして話者自体の滑舌の悪さ。「あー」だの「えー」だのを編集せず間延びさせるものが本当に年々無理になっている。そしてレストア動画には基本的にそういうものが無い。

 ただただ、物が直されていく。それがいい。

 

 「分解」が良い。

 レストア動画は道具の全体の確認に始まり、片っ端からそれを分解していく。基本的に状態が悪ければ悪いほど困難を極める。ネジ穴が錆で詰まっていればやすりで削り、インパクトドライバーを打ち込んででも回す。バーナーで炙ってでも回す。油をダッバダバにかけてでも回す。棒を別途溶接してでも回す。それでも回らなければドリルでネジに穴を空けてでも回す。リベットで止まっていれば削り、なかなか抜けないようであればプレス機械を持ち出してでもぶち抜く。

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 この分解工程が動画の半分を占める。これらは一種の「挑戦」ですらあり、レストア動画の鉄板モノとして「めちゃくちゃに錆びた万力」の修理がある事からもおわかりいただけると思う。現代の叡智を持って100年前の物を分解しその機構を丸裸にしていく過程は非常に面白い。

 「清掃」が良い。

 特に古いものは表面が錆で覆われて層のようになっており、それをガシガシ剥がすと本来の姿が徐々に明らかになっていく。そのうえで錆び除去液のバケツに突っ込むと、バケツが真っ黒になるほど錆が出る。時折よく分からんが電気を流してシュワシュワさせてもごっそり出ている。それが良い。ふかわりょうがゴミ屋敷を掃除する番組を思い出す。錆と一緒に塗装も砂吹きで剥がされ、鈍色に戻ったものを丁寧にヤスリがけしていく様は感動的ですらある。

 

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 このプレステ直すやつとか特に良い。

 「組み立て」が良い

 穴や破断した箇所や削れた箇所を溶接で塞いだり直したり、そしたら次は組み立てだ。ひとつひとつを塗装し、ネジやボルトやナットをニッケルめっきして、バラバラにしたものをもとに戻していく。分解する時に観ているはずだが、すっかりきれいになった部品を一つ一つ組んでいくさまを観ていると「良くこんな物を人間は作ったものだ」と感心しきりだ。

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 そしてもう一つあるのが「最初の状態じゃ何に使う道具なのか良くわからない」とか「部品はわかるがこれがどう機構として動くのか分からない」というのが少しずつ氷解していく。これがよい。一昔前なら何度もCMを挟みながらクイズ番組にでもなっていただろうと思う。

 車輪や採鉱があって工学があって機械が出来て鋳造が出来て、などとシヴィライゼーションのような事を考えながら観ていると、最後に答え合わせが来る。直ったそれの動作テストの時間だ。

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 「そんな事をする道具があったの!?」という驚きが時々ある。しかしそれは確実に「誰かが欲した」から作られ、使われ、そしていつか使われなくなって捨てられたという事実にすら至らない浅はかな考えだったのだなあと省みることすらある。全ての道具は一度誰かに求められ、そして誰かの生活の側にあったのだ。

 

 ぜひ一本見てみて欲しい。そのうち「このチャンネルは倍速のところが多すぎる」とか「このチャンネルは仕上げが甘い」とか好みまで出てくるだろう。別に10秒飛ばしで観ても、話を聞いているわけじゃないから問題はない。ただただ道具が分解され、そして直っていく。それが今の私にはたまらなく心地が良いのだ。

「うまぴょい伝説」を歌うサイレンススズカを見て俺が泣いた訳を聞いてくれ

 よく行く居酒屋のお手洗いに、そのポスターはデカデカと貼られていた。
1998年、天皇賞(秋)。若き日の武豊騎手が跨る馬の顔には緑のメンコ。

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SILENCE SUZUKA 1994.5.1~1998.11.1 先頭を、どこまでも先頭を

 手洗いから出た私は、たまらず大将に尋ねた。
「大将、あのポスターって。1枠1番…」
串打ちの手を止め、大将は顔を上げて答える。
「貴方みたいな若い人もご存知なんですね。一番大好きな馬なんです。
 1枠1番。サイレンスズカ。」

 

 私はそんなに競馬に詳しい訳ではない。飲む、打つ、買うの3つにしたって「飲む」しか嗜まない人生を送ってきた。そんな私でも知っている「伝説」の一つがサイレンススズカだ。1990年代の事を「伝説」というのは大げさに聞こえるだろうが、私にとっては20年前の馬も、40年前のチャリティーコンサートも、400年前の戦国武将も等しく「伝説」である。

 だからその活躍も、それに人がどれほど焦がれ夢を見たかも、その夢の終わりがどうだったかもエピソードの積み重ねとしてしか知らない。どれだけ言葉を尽くしても、私は「そういう事があった」という事しか知ることが出来ない。後から知って、好きになったとしても既にその当人が故人なら尚の事だ。これから語る事には誇張や誤りが多分に含まれるだろう。その上で、私の話を聞いて欲しい。

 

 

umamusume.jp

 『ウマ娘 プリティーダービー』という作品がある。この度、アニメ1期から数えて3年。企画発表からほぼ5年経った2021年2月末、遂にゲーム版がサービス開始となった。

 が、これについても私は待っていたわけでもなく、ウマ娘というコンテンツにハマっていたわけでもなかった。ただ周囲の熱狂に圧されインストールし、手触りを確かめられればいい位の気持ちだった。

 その、はずだった。

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 幸運にも、私はウマ娘の【サイレンススズカ】のトレーナーとなった。
※ここからはウマ娘としてのサイレンススズカを【】で括って表記する。他の娘も同様。

 

 このゲームを一言で言うなら、「パワプロのサクセス」だろう。スピード、スタミナ、パワー、根性、賢さの5つを練習で上げながら様々なイベントをこなし、目標となるレースで勝つ。育成の終わったウマ娘は次回以降の育成に「継承」という形で二度のパワーアップイベントに関わってくる。

 良い継承、良いスキル獲得の為には目標のレースを突破しなければならず、その目標のレースを突破するためには…という試行錯誤の連続とループ。予後不良や怪我による中断がない代わり、このゲームは「目標突破が出来なかった場合はゲームオーバー」という一つの区切りが設けられている。

 言ってしまえば、今の「育成」がレースに「追いつかれた」ならそこで終わりなのだ。手触りは「パワプロのサクセス」でありながら、実はその芯にはPermaDeathの精神が宿っている。即ち、「不思議のダンジョン」や「Slay The Spire」のような。

 一度勝ってしまえば、1度の育成に20分もかからない。徐々に試行錯誤そのものが高速化されるゲームだ。フレーバーが抜けきったプレイヤーが本当に向き合うのは何なのかをリリース時点で既に分かっているのは素晴らしい。

 

 さて、「目標」は各ウマ娘ごとに異なる。
サイレンススズカ】の目標に設定されたレース。それは。

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 天皇賞(秋)での、1着。

確認した瞬間、思わず息を飲んだ。
何故ならば、私の知るサイレンススズカ天皇賞(秋)で完走すら叶わず―
―その日、死んでしまったのだから。

 

ウマ娘 プリティーダービー

ウマ娘 プリティーダービー

  • メディア: Prime Video
 

 と、この辺りでゲーム版が一度長期メンテナンスに入ったのでシーズン1を一気に見た。内容については他の方の語りを存分に読んで欲しいのだが、【サイレンススズカ】はこのアニメでもメインの一角を務めている。ルームメイトである【スペシャルウィーク】の憧れで、そしてライバルだ。

 作中でも彼女は天皇賞(秋)に挑む。他のウマ娘を置き去りにしての大逃げを決め、レースは彼女の圧勝かに見えた。しかし、第3コーナーを過ぎた頃に彼女の足首に異変が起きる。体勢を崩しながら減速することもままならず、観客席に居た【スペシャルウィーク】がコースへ飛び込み逆走して抱き止めてようやく止まり…意識を取り戻した時には病院のベッドの上だった。

 医者にレースへの復帰は絶望的とまで言われた【サイレンススズカ】の復活劇と、憧れと友達を失いかけた【スペシャルウィーク】それぞれの戦いが後半の見所だ。まだ見てないなら観ろ。めっちゃ面白いから。いやマジで。

 

 ともあれ、アニメ版では天皇賞(秋)で骨折こそしたものの、【サイレンススズカ】は死ぬことはなかった。死ぬことは無かったが、彼女は天皇賞(秋)を完走できていない。

 

 ゲーム版の目標レースを改めて見てみよう。最終目標、天皇賞(秋)で1着。
 サイレンススズカが成しえず、そしてアニメでも【サイレンススズカ】が叶えられなかった天皇賞(秋)を獲る。それがこのゲームの目標だ。

 

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 様々なレースをこなし、私と【サイレンススズカ】は堅実に実績を積み重ねていった。ウマ娘には一人ずつ「夢」があり、【サイレンススズカ】の場合はレースでトップに立ったものにしか見えない「先頭の景色」をもっと見たいというものだ。

 ただただ、どこまでも先頭を走っていたい。それだけが夢。しかし、レースが勝負である限りその夢は必ず敗者を作る。学園での模擬レースで、そして本番のレースで、彼女が走った後には誰か泣いているウマ娘がいる。先頭だけを目指してきた彼女がふと振り向いた時、誰かの涙がそこにあった。

 戸惑いを隠せず皐月賞への出走を取り止める【サイレンスズカ】は、【スペシャルウィーク】などの競い合うライバルとの関係の中で改めて夢を見つける。自らを「憧れ」だと言ってくれる人々と目指したい場所。それは天皇賞(秋)での一着だ…と。

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 天皇賞(秋)、前夜。
僅かながら脚に不調がある事を【スペシャルウィーク】に見抜かれた【サイレンススズカ】は【スペシャルウィーク】に棄権するよう頼まれる。レース中の怪我は選手生命を絶ってしまいかねない。それでも【サイレンススズカ】は考えを変えなかった。そこに「先頭の景色」があるのだから。

 

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 控室で【サイレンススズカ】は身体の不調と、【スペシャルウィーク】と何があったかを明かす。プレイヤーが出来ることは唯一つ。彼女の決意と覚悟を「わかった」と後押ししてやることだけだ。元よりこのゲームはそれしか出来ない。練習メニューや出場レースを決め、スキルの形で作戦を決める。レースが始まったら、私達に出来ることなんて何一つないんだ。

 

斯くして、【サイレンススズカ】とプレイヤーの天皇賞(秋)が始まる。
サイレンススズカと【サイレンススズカ】が完走出来なかった、運命のレースが。

 

 そして、サイレンススズカは帰ってきた。

 大欅を過ぎ、第4コーナーを過ぎ。それでも足取りは力強く、真っ直ぐにゴールへ駆け抜けていった。もう沈黙の日曜日なんて言わせない。彼女は栄光の日曜日の主役。【サイレンススズカ】だ。大歓声が彼女の一着を祝っていた。

 

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  天皇賞(秋)で一着を取った【サイレンススズカ】へ「おかえり」って言ってやれる。ウマ娘 プリティーダービーはそういうゲームだったんだ。

 

 

「うまぴょい伝説」を歌うサイレンススズカを見て俺が泣いた訳

 育成目標をクリアすると、URAファイナルというこのゲームでの最終目標が登場する。これは自分のウマ娘が今まで出走してきたレース実績からコースが選択される、文字通りの「ボーナスステージ」だ。しかし競争相手も他レースで出てくるものの比でなく、決勝での一着は生半可な育成では敵わないだろう。

 もし、URAファイナル決勝で一着を取れたなら。そこで初めて見られるウィニングライブがある。その名も『うまぴょい伝説』だ。

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 初出は2016年3月、プロジェクトの発表時のことだという。ほぼ5年かかってようやくウマ娘自体もこの2021年2月に於けるゲーム版リリースに至ったとの事だ。なんかこう、Aメロで00年代後半の電波曲をやろうとする癖にBメロからちゃんとキメてきて私の心が大変なことになっている。まあ楽曲自体も素晴らしいのだが、私が言いたいのはそこじゃない。

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きょうの勝利の女神
あたしにだけチュゥする
虹のかなたへゆこう
風を切って 大地けって
きみのなかに 光ともす
(どーきどきどきどきどきどきどきどき)

  そうだよ。勝利の女神がチュゥしたから、【サイレンススズカ】はここにいる。虹の橋を渡るんじゃなく、虹の彼方を目指したんだ。まだ見てない先頭の景色だってあるに決まってるんだよ。

きみの愛馬が!
ずきゅんどきゅん 走り出しー(ふっふー)
ばきゅんぶきゅん かけてーゆーくーよー
こんなーレースは― はーじめてー(3 2 1 Fight!)

 もう私はここで涙を堪えられなかった。「君の愛馬が!」って言って良いんだ。プレイヤーとして関わってきた私の愛馬って言って良かったんだって。

 そうだよスズカ。こんなレースは初めてに決まってるじゃないか。クリスマスだって、次の春だって君にはあるんだ。

 

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 ウマ娘は奇妙な作品だ。様々な伝説を束ねてエピソードとしている癖に、「この世界に生きるウマ娘のレース結果はまだ誰にもわからない」なんて事をイントロダクションから提示している。

 その上で言いたいのは、ウマ娘は「夢」の作品だって事だ。これは別に「歴代の名馬たちが!」って事を言いたいわけじゃない。競馬には、レースという場を通した馬と人間達の因縁と物語が間違いなく存在している。とは言え、思いというものは人間からの一方通行なんじゃないだろうか。信頼や、関わったからこそ見えた思いはあるだろうけど、馬は言葉を話さない。

 だからこそ、私は願いたいのだ。「あの時あいつに勝ちたかった」「俺も一番になりたかった」と、人間と同じように馬も夢を見ていたんじゃないかって身勝手な夢を。ウマ娘はそんな、「夢」の作品だと思う。

 

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「やっとみんな会えたね」

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興味が湧いたらちょっとやってみてください。
今の所、ちょっとだけ面白いゲームですから。

 

私の夢も、サイレンススズカです。

CYBERPUNK 2077/また会おうナイトシティ。そこに夢がある限り。

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 サイバーパンク2077のプレイ時間は106時間。ようやく2周目が終わった。

 ゲームを購入してから一ヶ月以上、本当にこのゲームだけをプレイしていた。その家庭用機のバージョンがどうだの、バグがどうだの、返金がどうだのと世間は騒がしかったが私には何ら関係のない話だった。

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 好きなものを好きなように好きなだけ楽しむ為にマシンを組み上げたら、サイバーパンク2077は見事に答えたのだ。最初に言っておくが私はロード時間で待たされる事も、進行不可バグも、クラッシュも遭遇する事もなく100時間あまりの旅を終えている。散々「七色に光る」だの「家庭用機でいい」だのと言われ続けてきたゲーミングPCそのものが2020年代初期に最も「輝いた」と言っても過言では無い。

 だからこの記事に「バグがどうたら」「クラッシュがどうたら」というのは出てこない。ああそんなこと知ったことかよ。ローム*1も揃えない奴らがナイトシティでどういう目にあったかなんて私には関係ないからなあ!

 ああでも、一個だけ先に出しておく。電話の画面にずっとヒゲ生やしたキアヌ・リーブスが出てくるバグには遭遇した。誰に電話してもその相手にキアヌ・リーブスがめり込んでるの。面白いから勘弁してほしい。f:id:crs2:20210204010343j:plain

 さて、サイバーパンク2077の話を始めよう。当然の如くネタバレ配慮なんてクソ食らえだ。それが嫌ならさっさとRTXナンチャラ搭載PCでさっさと遊べ。サイバーパンク2077の骨子は控えめに言っても2016年水準であり、目の覚めるようなジェットコースターでは無い。しかし「空っぽでハッタリだけの街」にかつて中指を立てた全ての人に遊んで欲しい。

電話でタクシー呼んで来るの、待たなくていいから。

GUIDELINE/ナイトシティの歩き方

 正直な所、サイバーパンク2077について「何をどうするゲームなのか」の話が日本語で書かれたものはそんなに多くないと思っている。だからその話から始めよう。

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 サイバーパンク2077はRPGだ。舞台であるナイトシティをビーコンに導かれて駆け巡り、メインクエストやサイドクエストを進めていく。手触りで言えば「Falloutシリーズ」や「龍が如く」に近い。

 Fallout?じゃあ善悪とか派閥とかあるの?と聞かれれば、無い。沢山勢力や企業が出てくるんでしょ?勢力や企業に属して戦うとかそういうマルチエンドなの?と聞かれれば、無い。じゃあハウジングとかキャラのカスタマイズとか有るの?それも無い。コンパニオン連れて何かするの?違う。そうじゃない。

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 じゃあ何?グランド・セフト・オートなの?車のカスタマイズは?組織間抗争とか?それも違う。PVがどこまでも誤解を招いている。このゲームはギャングスタのゲームではない。じゃあ何なのか。順を追って説明しよう。

 

 

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 プレイヤーはノーマッド、ストリートキッド、コーポの3つからゲーム開始時の出自(ライフパス)と造形、そしてちょっとのパラメータ割り振りを行う。その後、自分のクラン(共同体)を抜けたり会社から切り捨てられたりしながら「街の便利な殺し屋」としてゲームをスタートさせる。画像はゲーム開始数秒でゲロを吐くへろへろサラリーマンのV。私の1周目のVだ。Vという名前は主人公名として完全に決まりきっている。変更はできない。

 その後は殺し屋及び盗賊として成り上がろうとして大企業のトップが泊まっているホテルに忍び込み、お宝をゲットしようとした所でトラブルが起き…という筋書き。ここまで読めば分かるだろうがプレイヤーの分身たるVは「なんやかんやあって街の殺し屋になったV」かつこの「トラブル」が物語の背骨だ。大きくメインストーリーがあり、その脇に膨大なサブクエストがある。

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 このメインストーリーを追いながら、舞い込んでくるサブクエストを潰し、更には通りがかったプチクエストも潰す。多くのオープンワールドの例にもれず、サイバーパンク2077はムゲンプチプチだ。遊ぶフィジェットキューブと言っても良い。 

 だが、その気泡全てに「物語」があったら?潰し方一つでほんの少しだけ結末が変わったら?潰すべき気泡全てに名前があり、並んでいたことにバックストーリーがあり、その一騒動が終わった後に少しだけ後日談があったら?もうそれは只の暇潰しではない。その通ってきた道全てがプレイヤーとVの旅の道筋になる。

 広大な街で車を転がしながら、膨大なクエストを発生させ、電話一本で殺しの依頼を受けては突っ走る。サイバーパンク2077はそういう殺し屋のゲームだ。

 

PERSONAL RESPONSIBILITY/決められた道をただ歩くよりも

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  結論から言えばこのPVのような事は実現していない。街中を空飛ぶ車が「カッ飛ぶ」ことは無いし、自分では乗れない。スペースシャトルの中で人が発火することはない。インゲームフッテージと書いてあるが正直「見たことのない風景」がいくらでもある。この後の2019年のトレーラーもそうだ。そもそもこんな「シネマティック」な光景はお目にかかれない。サイバーパンク2077は基本的に「FPS」であり、乗り物に乗ったときだけ「後方視点」に出来るだけだ。

 その上で「出来る」事は2つに分けられる。「どう選択するか」「どう殺すか」だ。

 どう選択するか。これは「はい、いいえ」だとかその次元ではない。本筋をさっさと進めたいなら会話の一番上にある黄色の選択肢を選んでおけばいい。そうでなく「筋肉バカなので武力で制圧しようとする」「技術屋なのでミッションで何をしようとしてるかパートナーと詳細を詰める」「コーポ出身なのでちょっとハイソな事もペラペラ喋る」などメインクエストでもサブクエストでも膨大な数が用意されている。

 

 

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  これはアウターワールドでも書いたことだが、「取れる選択肢が多い」というのはミッションのショートカットだけでなく「選択肢を積み重ねていくことでキャラクターの奥行きが増していく」という事である。「コーポのおじさんが間違って自撮りを送ってきたのでおちょくる」V、「一仕事の酒場で相手の話を聞きながらひたすらグラスを傾ける」V……即ち「ロールプレイ」がゲーム内から強力にサポートされている。

 これに「どう殺す」が交わっていく。「片っ端から相手をハックして倒す」「銃はハンドガンだけにして距離を詰めたら一気に刀でぶった切る」「筋肉バカなので軽機関銃とショットガンを振り回す」それら全てが決して弱くない。

 この弱くないというのが重要だ。本当に重要だ。ステルスばかり育てていて空から飛んでくるドラゴンにウワーっとされていてはつまらない。このゲームはそもそもプレイヤー側が結構なオーバーパワーに設定されているので戦おうと思えば幾らでも戦えるように出来ている。それでいて相手もあっというまに削ってくるので死ぬときは一瞬だ。

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 やろうと思えば一撃で34万点出る。通常戦闘でも全く問題なく戦える。「縛り」というよりは「多彩」に戦って遊べる。だからその戦いに集中することが出来る。会話でのロールプレイ。バトルでのロールプレイ。どちらも存分に楽しめるわけだ。

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 …だからこそ、日々の殺し合いの中で逝った友を思い出して電話をかける事もできる。もう誰が聞くこともないメッセージを吹き込みながら、涙を流すことも出来る。それこそがサイバーパンク2077が「ロールプレイングゲーム」たる最大の特長だと言って過言ではない。

OPEN COMBAT!/野良犬なりの戦い方について

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 さて、ロールプレイの部分を一度無視して、このゲームのシステムの話をする。

 サイバーパンク2077はオープンワールド型のRPGである。RPGということは成長がある。何を成長させるのかというとまず下記の5つのステータスを成長させる。

  • 肉体
    HPやスタミナや殴打武器、ショットガンや軽機関銃に関係するパラメータ。
  • 反応
    肉体に割り振られている以外の銃はこちらの関連。クリティカル率や速度に関係するパラメータ。あとみんな大好きブレード武器もこっち。
  • 技術
    クラフトや爆発物関係。加えてチャージ武器である「テック」カテゴリも強化。
  • 知識
    スーパーハカーとして無双するためのパラメータ。
  • 意思
    サイバーニンジャするためのパラメータ。

 これらをレベルアップの度に1ずつ割り振っていく。銃にも衣類にもサイバーウェアにも全て「肉体レベル6以上で装備可能」のようにレベル要求が設定されているため、最初から強い状態には出来ないし最終的に何でも出来るようになるわけではない。また、一応このゲームはレベル50が上限に設定されているので全てのパラメータを上げきる事は出来ない。よって「筋肉バカで銃は何でも使えるがハックもクラフトもからっきし」だとか「反応と意思でサイバーニンジャする代わりに軽機関銃が持てない」のような取捨選択がプレイヤーには要求される。

 また、各種行動は経験値入手によるレベルアップだけでなく行動すればするほどスキルアップ」という形で成長する。平たく言えばリボルバーで倒せばハンドガンが強くなり、敵をハッキングすればクイックハックが強くなると言った次第だ。これらは結構ポンポン上がるし、スキルアップの度に後述のパークポイントが貰える。 

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 パークは先に挙げた5つのパラメータの下に位置するもので、レベルアップやスキルアップの度にポイントを獲得しては特定のパークに割り振って成長させる。ここで更に細かな部分の成長があり、「ステルス攻撃のダメージ+50%」「テック武器が相手の防具を無視する」等の能力を割り振っていく。

 

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  …ま、要するにコレだ。ただコレだと言うとつまらなさそうに聞こえるかもしれないが、個人的にはFalloutシリーズと同じように「何かに特化したプレイ」を複数回楽しめたのが凄く良かった。「縛り」でなく「特化」というのが非常に良い

 

 

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  戦闘もただドンパチするだけではない。プレイヤーは目に埋め込んだサイバーウェアを使い常にスキャニングを行う。この間、ゲーム内の時間の流れは非常に遅くなり「何処に敵がいて」「どこに爆発物があって」「どの敵から片付けなければならないか」を把握・整理する事ができる。先に挙げたFalloutシリーズではV.A.T.S.という形で時間停止及び攻撃予約が出来たわけだが、こちらも似たように「一旦落ち着く」事がゲーム側からサポートされている。ポーズボタンを押すのでなく、だ。

 そしてスキャナーを起動し相手を選択して出来るのが「銃」「近接攻撃」に並ぶ第3の攻撃「クイックハック」である。

 監視カメラを発見、相手のネットワークに接続!ブリーチプロトコル開始!敵I.C.E.を突破、強制自爆デーモンをアップロード!何も分からないまま自らグレネードを起爆し仲間もろとも吹き飛ぶギャング!!ナムサン!!

 ……というプレイが可能。マトリック某や何殻機動隊やその他もろもろを思い出した貴方、おめでとう。サイバーパンク2077ではプレイヤーこそが「超ウィザード級ハッカーだ。

 ウィザード(魔法使い)という言葉に引っ掛けるわけでも無いのだが、サイバーパンク2077の戦闘システムの中でハックは正に「魔法」と同じ位置と言ってもいい。銃や近接攻撃で「こうげき」をし、その中で「まほう」を使う。相手に大ダメージを与えたりデバフを与えて削っていって倒す。Fallout3を初めて遊んだ時以来の「RPG文法の再現」の手触りに私は大喜びしてしまった。

 当然、この手のハックが通用しすぎてもいけないのでプレイヤーの成長度合いや装備によって相手に通じる通じないが分かれる。他の攻撃も同様で、相手が相対的に強すぎる場合は殆ど歯が立たないと言ってもいい。倒せない敵をいつか倒すことを目標に装備を整えるのもまたRPGの醍醐味である。大丈夫。明らかにアラサカのヤベーやつがいそうな所行かなければしなないから。

 戦い方は多岐に渡る。ハンドガン+ブレードで加速装置を駆使して戦っても良い。ステルスなんかクソ喰らえとラン&ガンしてもいい。サブマシンガンアサルトライフルCoDしてもいい。その場で無限にナイフを生成して投げまくっても良い。ナノワイヤーで一気に範囲攻撃で相手の首を全部ぶっ飛ばしても良い。バーサーカーモードに突入し片っ端から相手の頭をハンマーでぶっ飛ばしても良い。このゲームは基本的にプレイヤーがオーバーパワーになるように出来ている。好きに無双しろ。好きに無双していいようにきちんとこのゲームは出来ている。

 ただ、「クラフト」や「消耗品」に関しては目を潰れない欠点がある。このゲームは「成長」以外に装備品の「強化」があるのだが、「クラフト」に関する割り振りを行わないと最上位の装備品の強化や再入手が出来ない。しかしクラフトした武器を十全に使うためには使いたい武器に応じた別ステータスへの割り振りが要る。これは別にトレードオフの面白みだとか選択とかでなく単に「失敗」だ。別にそれをしなくてもクリアは全く問題ない。しかし、これさえ無ければクラフトに振らなかった分もっと特化して遊べたはずである。NPCや施設などでクラフトを外注出来たなら幾分かこれも軽減されたろうに。

 というのも「低レア装備を落とす敵」もクラフトがあるなら数をかき集めて上位素材変換できるはずなのだが、それがクラフトに振っていない場合変換すらままならないのである。渋々売却して、高い金を払って偶に売っている素材を買うことになる。つまりクラフトに振っていないがために単純に「ゲーム内での試行回数が減る」事を意味する。…そのうち面倒になって、敵から何も奪わなくなるプレイヤーもいるだろう。本当にもったいない。

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 さて戦い方の次はどこで戦うかだ。

 車で走り回っていれば嫌でもギャングを見かけるし、フィクサー(仲介者)からクエストの電話がかかってくるし、警察からは血なまぐさい暴力事件解決の協力依頼が飛んでくる。敵とは固定エンカウント方式だがその場所が膨大に設定してあり過ぎてあたかもランダムエンカウントだと勘違いしそうな程だ。

 サイバーパンク2077は「世界に影響を与えている」と錯覚させる為、本当に膨大な数の「殺さなきゃいけない相手」を用意している。そもそも主人公であるV自体が紆余曲折あってナイトシティに来ており、最初のミッションも偉いところのお嬢さんを誘拐したギャングをブチのめす所からスタートなのだから悪そうな奴らを殺すのは当然だ。

 じゃあそのクエストマーカーに従わず歩いている時の探索に意味がないかと言われればそれも違い、路地裏や何かしらの施設や屋上には大体ゴロつきが陣取っているので殴り込めば良い。そしてなんかこう、強そうなやつをシバいたら良いものが出る。コンテナも敵の装備も全部ごっそり戴く。少なくともスチーマートランクでガチャるよりよっぽど精神衛生上良い。

 ギャング同士の抗争も発生し警察を交えての三つ巴四つ巴の戦いもしょっちゅうだし、誤って警察を撃とうものなら次は警察にこちらが追われる身だ。ちょっとだけ誰に銃口を向けたかを確認しつつ戦えば、報酬と戦利品と各種経験値が手に入り緩やかな変化が連続して訪れる…という訳。

 そうそう、探索と言えばこのゲームは所謂「レア装備」が固定位置にあったりミッションのついでに手に入るようになっている。完全にランダムにまかせてなんか強い武器拾って!というよりはシナリオの進行や探索そのものでの入手もあるので、攻略情報を見ないなら「思いがけない宝を拾った」となるし攻略を見るなら「今回は最短でコレを拾って…」とプランを立てられるようになっている。どちらにもちゃんと機能するように作ってあるから安心してブラついたり攻略ページ見て遊んで欲しい。

 ところでこのゲームには「善悪」とか「派閥」といったお話は無い。殺したから出来なくなる事とか、そういう事はあんまりない。クエスト内で訪れる結末が大きく変わるときは事前に黄色の選択肢が示してくるし、殺すにしても割と決定的な瞬間であることを明示してくる。縄張り争いとか殺しすぎたから特定の地区で物が買えないとかは無い。なので見かけた悪いやつは何であれ皆殺しにして良い。コレについては各々思うところもあろうが、「気に入られるために殺す殺さないを考えないといけない事が無い」ので私は良かったと思う。

 

 

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 そう、そもそもこの世界は「変わらない」のだ。数多の戦争を経て手に入れた「平穏」の中で暴れ散らす有象無象が居ようが、軍用サイバーウェアで武装した輩がいようが、そいつらが道端でドンパチしようが、何も変わらない。既に強固なシステムが「企業」により完成し、街には消費を煽る広告が溢れ、裕福な人は裕福なりに暮らし、ホームレスが徒党を組んだノーマッドノーマッドなりに暮らし、ゴロつきであるストリートキッドはストリートキッドなりに暮らしている。電話にはひっきりなしに殺しの依頼が殺到するが、誰かを殺したところでまた誰かが後釜に座る。

 サイバーパンク2077はそんな世界で人殺しとコソ泥を仕事にしていたチンケな人物が成り上がりの夢を抱き、ダチ公とホテルに乗り込んでどデカく花火を打ち上げようとしてダチ公を失い、それでもと足掻く数週間の物語だ。だから最後の瞬間まで物語は大きく動かない。何をしたってテレビのニュースでちょっと流れるだけ。毎度人を良いように使うフィクサーにはまあお褒めの言葉を頂戴するが、本当にそれだけだ。

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 今思えば「事前の広告」ですら、「この街はすげえんだ」と夢を見ていたダチ公と同じだった。ナイトシティにはレジェンドが居て、すげえ街があって、俺なら私ならなんだって出来ると思っていた。

 俺たちならメジャーリーグでバッターボックスに立って、眩い照明と歓声の中で一発ぶっ放せると思っていたんだ。

 

REMINISCENCE/追想のゲーム

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 ジャッキー・ウェルズという男の話をしよう。このキャラクターは生い立ち(ライフパス)に関わらず、主人公の友人として登場する。コーポ務めなら昔からの友人として。ノーマッドなら根無し草の主人公の初の依頼人として。ストリートキッドなら数年ぶりに街に帰ってきた主人公の窃盗中に鉢合わせ、警察に一緒にボコボコにされた馬鹿二人の片割れとして。

 ジャッキーはプロローグが終わってからもずっと一緒だ。彼女とのデートの為に車を貸してやったり、一緒にメシを食ったり、一緒に鉄火場に飛び込んだりする。主人公達の友人のリパードク(サイバーウェアの交換をしてくれる医師兼技師)、ヴィクターの所で店をやってるミスティって子が彼のガールフレンドだ。

 ジャッキーは大仕事をやるって意気込んでどこか浮ついてても、ジャッキーのお母さんが心配で電話をかけてくる。大丈夫だって。昔はギャングやってたけど今は足だって洗ったし大丈夫だって。まあそんな感じのいいやつだ。大企業のお偉いさんのすごいブツを盗み出すミッションの最中だってジョークを忘れなかった。

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 画像は似合いもしない大企業の服を着て鏡の前でニヤニヤする主人公
 (無論、容姿は変更可能)

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 そのジャッキーは、ゲームの第一部で死ぬ。ホテルの最上階から命からがら逃げ出し、タクシーに乗り込んでどうにかなると思った矢先に、ジャッキーは死ぬ。これは発売前からシネマティックトレーラーの形でずっと前から言われてた事だ。ここでサイバーパンク2077は最期にかける言葉を選ばせてくる。俺であり、Vが発したのはこうだった。

「ジャッキー、またメジャーで会おうぜ」

 企業のブツを盗もうなんて持ちかけてきたフィクサーの男は街中が大騒ぎになった事をがなりたててくるが、そんな事は最早知ったことじゃない。こっちはダチ公を失ったんだ。にも関わらず「血で汚れてるから顔を洗ってこい」などと言ってくる。

 

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 さあ、どうする。ダチ公の血で汚れた顔を洗うか。それとも。

 [顔を洗う]
 [鏡を割る]

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 自分の意志で引き金を引き、自分の意志で歩いてきた。
 おとなしく顔を洗うか、鏡を割るか。
 ここからサイバーパンク2077の第二部がスタートする。

 

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 さて、その第二部。ジャッキーの遺体を彼の母親にきちんと届けることが出来たなら…彼の葬式を行うことが出来る。そこにはジャッキーにゆかりのあった人物が勢揃いだ。彼の母親も、共通の友人だったヴィクも、主人公の知らない人々も、みんなジャッキーの歩いてきた道のりで関わってきた人たちだ。

 彼らは様々な思い出を話す。その中で特に印象に残ったのはヴィクのこの言葉だ。

 「あの12ラウンドは忘れられない」

 

 サイバーパンク2077は膨大なテキスト量で、プレイヤーに様々な「かつてあったことと今」を語りかけてくる。ジャッキーが本当にバイクが好きだったこと。彼がヴィクとボクシングで試合をしていた事。サイバーサイコシス*2と思われた人が本当は助けを求めていたこと。屋上で今しがた殺した相手がちょっとした好奇心でアンテナをハッキングしようとしていたクソガキでしかなかった事。ギャング同士の煽りあいのメール。凄いAIを作った結果どんどん福利厚生が貧相になり従業員が全員クビになったタクシー会社。お固そうな武人が貧民街でチキンを店の人に配っていること。大企業に裏切られた幹部のおじさんがスマホの使い方も分からず、検索ワードを主人公にメールしてきちゃう等。

 メインクエストにも、膨大なサブクエストにも、ちょっとした電話にも、路地裏に今しがた転がした死体にも、全てに物語がある。ナイトシティは決して「虚飾の街」でも「空っぽの街」でも無い。

 

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 ジャッキーの遺したバイクをふと道端に停め、もう出ることのない彼の番号に電話をかける。主人公は泣きながらメッセージを残す。雨の街に吐き出した言葉は誰にも届かない。…サイバーパンク2077はそうやって、何よりも雄弁に人々を描いていく。そしてその主人公の言葉や振る舞い一つ一つをプレイヤーに選択させ、プレイヤーとVが少しずつ一つになっていく。

 

CHIPPIN' IN/銀腕の男

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 サイバーパンク2077で事前から宣伝されまくってきた要素の一つとして「キアヌ・リーブスが出てくる」というものがある。彼が何なのかの話をしよう。

 ジャッキーの死と引き換えに手に入れた”企業のブツ”――Rericと呼称される激ヤバな記録媒体――の中に入っていたのは、作中から50年前に活躍したロッカーボーイにしてテロリストの「ジョニー・シルヴァーハンド」の人格のコピーだった。しかもそれを自らのサイバーウェアに差し込んだが最後、徐々に主人公の脳はジョニーに乗っ取られていく。それだけでなく身体は著しく衰弱し、何もしなくても数週間のうちに死に至る事になる。

 

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 で、何が問題かっていうとこのジョニー・シルヴァーハンド。うるせえ。徐々に一体化しつつある、というか主人公は擬似的な二重人格状態となりこのジョニーの幻影がそこかしこに現れては皮肉を言ってきたり、ジョークを言ってきたりする。ストーリーの上で言えばジョニーはジャッキーの代わりに現れた新たな相棒役とも言える。主人公にしか見えない幻影だが、言われっぱなしでは無くずっとずっと会話し続ける相棒だ。

 第二部のストーリーは「大企業アラサカでこの人格コピーについて研究していた博士を探せ」「アラサカのおえらいさんに話をつけろ」「そもそもReric強奪計画とは何だったのか」の3本立てで進んでいく。主軸としては、実はジョニーは関係ない。関係ないのだ。あるのは「俺のこの頭ン中の誰かをどうにかしなきゃ」と使えるツテは全部使って走り回ってはのたうち回る弱々しい殺し屋のちょっとした冒険だけ。

 だが、サブクエストを巡ったり、彼と会話したり、それこそ彼にあった過去を追体験していく中でプレイヤーと主人公は彼を理解していくだろう。かつての戦争であった悲劇。恋人であるオルト・カニンガムがアラサカに誘拐され、そして助けられなかったこと。そこから反企業・反体制思想を更に強め、第二次救出作戦でも助けきれずに死んだこと。皮肉屋で激情家であってもジョークとちょっとのお茶目を忘れない、一人の人間であることを。

 彼を理解したからなのか、彼との融合が進んでいるからなのか、それは分からない。だがこの奇妙な共同生活は少しずつ街に小さな燻りを残していく。50年前のバンドメンバーとの一日限りの復活ライブをするために走り回ったり、50年前の作戦のメンバーとの一日限りのデートをするために走り回ったり、主人公にとっては本当に散々で、それでも楽しい日々がつながっていく。そこにあるのは「あの50年前で時を止め、前へ進めなくなった人々が歩き出す瞬間」ばかりだ。

 サイバーパンク2077が素晴らしいのは、ここだ。
何をしても別にニュースにもならず、変わらない世界の中でそれでも少しずつ変わっていくものが確かにある。殺し屋でこそ泥の主人公が走ったからこそ、繋がったものが確かにある。あくまでサイドクエストに過ぎない「過去の因縁を巡る話」の最後、ジョニーの墓の前でジョニーはこう言った。

入ったのがお前の頭の中で、良かった。

 

 サイバーパンク2077がオープンワールドである必要はここにあった。文字通り街中を走り回り、様々な物を見て、自分で選んできたからこそ、その物語は終わりを迎えることが出来る。最短10時間で遊べたけど短かった?冗談じゃない。ビーコンに導かれてパパっと終わらせただけでこのゲームを語れるものか。

 

 

 NEVER FADE AWAY/ほんとうにうつくしいもの

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 アラサカのお偉い方にすがりつき、ジョニーに小言を言われようが無視し、脳に巣食うチップを取り外した。世界の色彩は狂い、簡単なパズルを解くことも出来ない。そこで主人公に言い渡されたのは「デジタルゴーストとして人格を保存しそれが復元できる時を待つか、短い余生をまた街で生きるか」の2つ。生き延びられるならとデジタルゴーストになる契約書にサインをし、その手術室へ向かう時――このゲームは選択を迫る。

 いいや、選択はもう終わっている。
 だからその手術室へのドアに表示される選択肢は一つだけだ。

 >アラサカに魂を売る

 

 私の一周目のVは、こうやって消えていった。手術室に入ると、カメラは最早一人称視点ですら無くなった。もう、Vと私は一つではない。これから確かに彼は死ぬのだから。

 ドアの前に立つまで、私は何を選んだのか分かっていなかった。魂を売るのだと突きつけられるまで、私は自分が選んだ道の意味すら分かっていなかったのだ。

 

 だから、二週目の選択肢は間違えなかった。
アラサカタワーに正面から乗り込み、50年前からの因縁にケリを付けた。ジョニーはオルトと共に、ネットワークの果てへと旅立っていった。ジョニーと自分を切り離したとは言え、一度脳天をブチ抜かれた身。残り短い命なのは分かっている。だからVは次は宇宙でまた大博打をしかける。次の大仕事は宇宙ステーションが舞台だ。眼下に地球を望みながらVは前を見据え、飛び立っていった。

 

 サイバーパンク2077に、最高にハッピーなエンドはない。アラサカに魂を売り渡すか、ジョニーの代わりに自分が死ぬか、短い余命を惚れた女と過ごすために使うか、それともナイトシティの伝説となるための大博打につかうか。この4つだけだ。私は、それでいいと思う。人殺しとコソ泥が仕事の主人公が、何かを繋げられただけでも本望だ。それがきっと夢の街、ナイトシティが観せた消え失せない夢だろうから。

 長期化した開発の中で取りこぼしたものは沢山あったろう。ほとんど一度ずつしか出てこない各陣営は「派閥」だとか「コンパニオン」の名残だろうし、バトル周りは一見回っているように見えるが一部の武器の種類が少なかったりする。「暮らし」と言っておきながらハウジングは無いし、飲食物こそあれどサバイバル要素は無い。今となっては若干陳腐な「ルートシューター」要素も、「クラフト」要素もきっと別の使いみちがあったのだろう。人によっては20時間も遊べば、恐らくゲームの底を叩く感触を覚えるはずだ。

 だから改めて言うが、サイバーパンク2077は、別に「全く新しい」「壮大な」「自由度のある」「画期的な」ゲームではない。オープンワールドとしても、RPGとしてもだ。しかし、「圧倒的な密度のロケーション」「膨大なテキスト」「優れたストーリーテリング」でもって、ある種懐かしさすら覚えるほどの「ずっとやってみたかったゲーム」だと断言する。こんなにずっと面白かったのは、それこそFallout3以来だった。

 

youtu.be

 1998年になってもパトレイバーは出来ず、2003年になっても鉄腕アトムは出来ず、来年にソードアート・オンラインは遊べそうになく、数年後に笑い男事件なんてのも起きそうにない。今となってはサイバーパンク自体も、有る種の「レトロフューチャー」の側面を帯びようとしている。開発の長期化も相まって、サイバーパンク2077は正に「伝統的な傑作」として記憶されていくことだろう。

 サイバーパンク2077はまだ人が完全にデジタル化出来ず、人として生きるために人たる身体を少しずつ機械に置き換えながら生き延びる時代の人々の美しい物語である。

 

 

【PS4】サイバーパンク2077

【PS4】サイバーパンク2077

  • 発売日: 2020/12/10
  • メディア: Video Game
 

 

www.gog.com

 

 なあ、ヴィク。俺が死んだら何を忘れらんねえって言ってくれるのかな。

 俺は死ぬ気は無いけど、誰かが覚えてくれてたら嬉しく思うよ。

*1:体組織に埋め込んだり体組織そのものを入れ替える人工臓器を指す作中の俗語。

*2:サイバーウェアの付け過ぎで狂人となってしまった人、という作中の造語

ゼノブレイド2と過ごした二ヶ月。あるいは僕がこのゲームに「出会えてよかった」と口にするまで。

 ゼノブレイド2をクリアした。

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 ゼノブレイド2任天堂が2017年12月にリリースしたSwitchのRPGだ。ゼノブレイドシリーズ自体は2010年の作品だが、元々1998年にスクウェア(現・スクウェアエニックス)でゼノギアスを制作していたスタッフ達が独立した「モノリスソフト」のゼノシリーズという系譜の1作品である。

 が、僕の人生にこのゼノシリーズはサッパリ絡んでこなかった。ゼノギアスだけは遊んだけれど、ゼノサーガシリーズもKOS-MOSがエロいことしか知らない。ゼノブレイドゼノブレイドクロスも触ってこなかった。

  この度、ゼノブレイド1のリマスター版がリリースされた。

遊んでくれー!とファン達がひしめく中、ふと思った。「いきなり2から遊んでみたら、ちゃんと面白いんだろうか?僕はどう感じるんだろうか?

 

 これは、レビューでも考察でも何でもない。
 僕がゼノブレイド2という「戦」と戦い抜いた日々の記録である。

 

わからん。

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 主人公であるレックスがアヴァリティア商会についた。そこから怒涛の勢いでチュートリアルが飛び込んでくる。ゼノブレイド2のチュートリアルは端的に言って最悪で、「ところでこういう要素があるんだけど今から20ページぐらいめちゃめちゃこの小さいウインドウで喋りまくるね!!!はい分かったね!!!じゃあ楽しんでね!!!!!!!!!!!!!!」という事をやってくる。

 いや、わからん。物凄い勢いで喋られた事はわかるが、わからん。第一、戦闘も分からん。黙ってると攻撃を自動でデュクシデュクシして、なんかゲージが溜まって技っぽい事が出来るけどわからん。分からなさ過ぎてサルベージで連れてきた敵に速攻でボコボコにされた。いや、回復とか回避とかどうするんだ。わからん。分からなさ過ぎてTwitterに愚痴ったら「いいから先に進め」と言われた。じゃあ一体何で戦わせたんです?どうして…

 

  

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 なにはともあれ、伝説の爆乳古代兵器ちゃんが主人公専用になっちゃった事はわかった。カットシーンの殺陣の出来がすこぶる良い。良いだけにその後の戦いが棒立ちで剣をペチペチする戦闘がやっぱりよくわからない。

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 そう、ただ1つ分かったこと。それはゼノブレイド2が濃厚なおねショタゲーだという事だけだった。

 

 

 

 

グーラに辿り着き、少しだけ「理解」して発狂する。

   グーラの町に命からがら辿り着いた。グーラの町は商店が散らばっておらずコンパクトな作りで、ここでようやく「コアチップ」が町を訪れて買ったり敵から拾ったりするブレイド強化用アイテムである事、「アシストコア」がブレイド用のアクセサリである事、アシストコアの作成の為に道端の収集アイテムやサルベージだとかモンスター撃破が必要な事がわかった。ポーチアイテムは高いが、要するに効果時間の限られた強化アイテムである事も。

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 しかしこれが分からない。ブレイドの入手がガチャだった。

 属性を三段積み重ねてコンボを組むゲームなのは分かったが、その加入がチラホラと入手出来るコアクリスタルを「何が出るか分からないまま」「取り敢えず誰がペアになるかを選択肢し」ガチャを引くというのが、分からなかった。絵作りは最新、話やキャラはどこか懐かしい、マップはオープンワールド最盛期のよう、戦い方はMMOに似ている。しかしてここで「ソシャゲ」が出てきた。

 わからない。「様々な要素を組み合わせて戦うゲーム」なのに、いつ必要なパーツが誰についてしまうのかをこんなガチャにしてしまった意味が。

 

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 だってホムラは言ったじゃないか。ブレイドとの出会いは神秘的だって…

 

 ここまでプレイ時間は10時間。グーラを抜けインヴィディアの腹の中に入った所。10時間遊んでも「どういうゲームなのか」は分かっても「遊ぶにしたって遊ぶ上で強烈に阻害された上でどうするんだよ…」という感覚はずっと抜けなかった。

  ここまでのゼノブレイド2に対しての印象を一言でいうと、こう。

 

僕の「戦」をインヴィディアで見つけた。

  巨大生物の内部の木々、豊かな水、そして広大な空間。つまりさっぱり進み方が分からない。ここから「フィールドスキル」と言って、ペアになっている仲間の能力や数で突破できる要素が強烈に出てきた。ただこれをクソと言うのはかんたんだが、それより僕が感じたのは勿体なさだった。「この仲間のおかげで進める!」「この仲間のおかげで入手アイテムが増えた!」というのは本来喜びに成り得たし、プレイヤー毎の物語に成り得た筈だった。それが「○○の為にこれを外してこれを組み込んで…」という煩雑さに塗り固められていく。僕はそれが嫌だった。

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 そしてヨシツネ戦。ついにシステムと戦う時が来た。
3話のボスは2人の強敵。しかも「ドライバー封鎖」…つまり、行動を封じてくる。もう漠然と遊んでは居られない。ヴァンダムがドライバーとしての心得をレックスに教え、そしてボスがシステムを活用し「倒してみろ」と向かってきた。

 もう悪態をついては居られない。

 まずアクセサリを揃える。ドライバー封鎖への抵抗をアップ。これで幾分か楽になる。レックス、ニア、ハナの手持ちブレイドを確認し、ロールを揃える。

 

  そして複雑だがこの「地属性」でのブレイドコンボを意識する。地→火→地、もしくは風→風→地が手持ちではやりやすかった。仲間がブレイクを打ち込んだらすかさずダウン、これで「高ダメージ」と「敵の行動を封印」どちらも整った。ライジングも出来るが速度が遅くて繋がりにくい…この先が在るような気がするが仕方ない。

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 お前の”戦”を戦え。ヴァンダムはそう言い残して帰らぬ人となった。

 

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 このゲームの真の意味での「チュートリアル」がやっと終わった。そんな気がした。

 

「いいよね、ヴァンダムさん」

 物語はヴァンダムのブレイド、スザクの入手まで進んだ。

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「フィールドスキルが無くては進めないマップ」「死んでいった人の残したブレイドが受け継がれる時」であると同時に、もう一つ。最後のドライバーコンボが解除された。

 

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 ニアかトラによる「ブレイク」、レックスのアンカーショットでの「ダウン」、再びニアによる「ライジング」、この先が分からなかった。しかしここで遂にフィニッシュ技である「スマッシュ」が現れた。

 

書き起こすと以下の通りだ。

  • 攻撃、回復、タンクの3ロールが存在する。基本的にタンク役が敵にタコ殴りされている所で回復がアーツで回復ポットを撒き、攻撃がフリーな状態でゲージを稼ぐ。このうち一番倒れて良いのは攻撃役で、故に主人公のレックスが担当する。
  • 何も入力しなければ通常攻撃が行われる。通常攻撃のヒットで「アーツ」のゲージが溜まる。
  • 「アーツ」のヒットで必殺技ゲージが溜まる。
  • 必殺技を特定のルートで積み重ねるとブレイドコンボが発生する。
  • ブレイドコンボを完走すると大ダメージと共に敵の行動が封印される。
  • ブレイドの必殺技には単体・範囲の効果種別や全体回復等のサブ効果が設定されているので、与えるダメージだけが重要ではない。
  • 基本的に敵の行動阻害は「ブロー」等のアーツ効果(リアクションと言う)で行うが、この中でブレイク→ダウン→ライジング→スマッシュはこの順で行わねばならず、初手のブレイクが敵に入るかが何より重要。これがドライバーコンボ。
  • ブレイドコンボの持続時間は数十秒と長いが、ドライバーコンボの持続時間は5秒と短い。
  • ブレイドコンボとドライバーコンボは両立する。

つまり

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 こうだったのだ。

ようやく、24時間かけてゼノブレイド2を理解した。最早レベル差によりブレイクが入ったり入らなかったりする事以外怖いことは無くなった。

 

 と、思っていた。

 

リベラルタスの戦いとフルバースト

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 おかしい。何分戦ってもレベル差のある相手なのになかなか死なない。ブレイドコンボで付与した玉を1つ2つ割っても大したダメージにならない。そんな相手が新天地「アーケディア」へ向かう道中に現れた。

 このゲームは各種行動で溜まる「パーティゲージ」を消費し、ブレイドコンボ完走で付与した玉を反属性で割って延々と攻撃する「チェインアタック」が最終形だと勝手に思っていた。ガチャによって手持ちのブレイドとその属性が決まってしまうなら、やりやすいコンボだけ繰り出しておけばいい。そうすると付与出来る玉の数はおのずと限られる。

 ここで一つ考えてみる。「ブレイドコンボの完走ルート」を多彩に増やし、出来る限りの属性で完走して属性玉を付けてチェインアタックに突入し、割りに割りまくってやればこの敵に「届く」のではないか、と。

 

 

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 そしてその攻撃は、届いた。

 

つまり

  • ブレイドコンボの完走ルートを揃える(出来れば全属性)
  • 当然、ブレイドのロール及び武器種は固有であるためドライバー側の固定ブレイドの武器やロールを考える必要がある
  • ドライバーによって武器種毎のリアクションが全て異なる為、貴重なアイテムを使って同調者を変更するにしても何が必要かを考える必要がある

という事が分かった。

 

 分かったわけだが、このゲームブレイドの入手はガチャだし「編成の面白さ」を突き詰めれば突き詰めるほど「自由でない各種入れ替え」がそれらを阻害してくる。なんと勿体ないゲームだろう。

 先に書いておくが、クリアまでジークを使うことはまったくなかった。

 

時間のかかる要素たち

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 このゲームには「傭兵団」というシステムがある。ブレイドを派遣し、指定された時間が過ぎればクエスト報酬が受け取れるというものだ。

 ゼノブレイド2の悪評については「フィールドスキル」「傭兵団」「ガチャ」の3点を事前に聞いていたのだが、遊び込むほどにそれらは有機的にゲーム内に結びつき、そして如実な悪影響を及ぼしている事が分かってきた。

 ブレイドがガチャである以上、戦闘面でのブレイドコンボや移動面でのフィールドスキル等で代替の効かない極めて重要な役目を負うことになる。

 しかし傭兵団がある以上、進めないと街の発展やブレイドの強化クエストが進まず、ゲーム進行が停滞してしまう。

 そしてフィールドスキルがある以上、ブレイドの育成が行われていなかったり育成のために傭兵団に出していたりすると道を通ったりジャンプして上に行くことすらままならない。

 

 ゼノブレイド2は「大ボリューム」の作品だが、その実情は確率・回数と拘束時間による「阻害」や「遅延」が大きく割合を占めている。1回10分のクエストに数百回派遣させられるのもそうだし、十分に育ったブレイドを1時間も2時間も出させられるのもそうだ。このゲームは「艦隊」だの「編成」だのをワンボタンで出すわけでなく、クエストの度に編成させられるのも煩雑だった。クリア条件を自動で満たすオート編成があるわけでも無いのがもっと悪かった。

  そしてブレイドには戦闘と傭兵団など、条件で解除される育成キャップが存在している。平たく言えば使い込まないと他のブレイドと比較して弱い。そしてもっと言えば体力の非常に多いモンスター相手にドライバーコンボを叩き込みコアクリスタルを大量に獲得し、ひたすらガチャを引かないとそもそも来ない

 

 一応、育成キャップについてはホレルゲンというアイテムがDLCで作成可能であり、アドバンスドニューゲームで固定ブレイドの取り外しや更なるブレイドの追加等で緩和は図られているがよりによってクエストが引き継ぎされないため、根気強く「傭兵団」で進めていたものは崩されてしまう。

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「ナナコオリフラジオレット、がんばります♪」

 ナナコオリは上記のシステムに殺された、かわいそうなブレイドだ。ニアに装備させて氷属性ナックルとして使おうと思ったが、彼女は終始パーティに不在のままだった。

 極端な事を言うと、いつか倍速機能が搭載された「ドードリオのSwitch」のようなものの上でゼノブレイド2を遊んだなら多くの不満点は一気に解消されるだろう。システム自体に改修がされなかったとしても、「戦闘そのものが爆速」「傭兵団に出しても数秒で戻ってくる」のならこの手のちまちました物はあっという間に済むはずだ。

 

 ゼノブレイド2は「ドライバー」と「ブレイド」のキズナの物語のはずだし、一緒にいれば信頼度が上がって強力な攻撃が出来るようになったりするのも話としては美しいし、ドライバーとブレイドは一心同体という話は本編の屋台骨ですらある。しかしシステム面ではそれらを悉く潰してしまう奇妙な構成となってしまっている。本当に残念だ。

 

ともあれ、「何かの役目」があって僕らはそこにいる

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 画像はきりもみ回転している所に必殺技を撃たれる櫻井孝宏

 

 ゼノブレイド2はシステム面でも、フレーバー面でも、何らかの「ロール」に縛られたキャラクター達の物語だ。アーケディアを超えテンペランティアに至った頃、僕はそんな事を考えていた。天の聖杯であるホムラ、そのドライバーとなってしまったレックス。自らの居場所を求めるニア、それに付き従うビャッコ… 

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 画像は銀髪で刀持った櫻井孝宏が仮面外して何か格好良くなるシーン。

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 物語も終盤にさしかかった頃、ホムラは敵の秘密結社「イーラ」に連れ去られ、パーティから抜けてしまう。

 前述の通り、このゲームは属性と武器でコンボを繋ぐゲームだ。そこでホムラ・ヒカリが持っていたのは

  • アンカーショットによるダウン、回復ポット
  • ローリングスマッシュによるヘイト減少
  • 側面・背面特攻によるダメージ
  • 炎属性・光属性
  • ヒカリの固有スキルによるアーツリキャスト(技の再使用間隔)加速

どれも強い。強いだけじゃなく「不可欠」な要素も含まれている。それが失われて、作中のレックスだけじゃなく僕もどこが居心地の悪さを感じていた。戦いが何故かうまく回らない。そう、「ダウン」だ。仲間が「ブレイク」を入れてくれても、即座にドライバーコンボが始まらない。

 そうだ、そうやって「天の聖杯」と「レックス」で戦ってきた。「天の聖杯」が失われ、レックスの役割が一つ消える。物語の中でレックスがただの少年になったように、システムの上でレックスも一つ大きな物を失った。

 

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 新たな剣を求める中、ニアはついに自分の役割を見つける。

アタシはもう縛られない。過去にも、シンにも、ブレイドである自分にも。
自由でいいんだ。わがままでいいんだよね、レックス。
そうじゃなきゃ…きっと生きてる意味なんてない

  目の前の命を見過ごさない、トップクラスの回復ブレイド。そしてレックスのブレイドとしてのニアが加入し、少しだけレックスはパーティの中での役割を取り戻す。500年前から封印された剣は朽ちていたとしても、きっとそんな事は問題じゃない。

 ニアの加入を経て、パーティを組み直す。メレフのブレイク、トラのダウン。あとはレックスのライジングとスマッシュ。レックスは回復も兼ねた状態で動かす。行ける。

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俺は君のために楽園に行く
君一人だけのために楽園に行ってみせる
だから行こう
そして確かめよう
君が何のために生まれてきたのかを
俺達と君の未来が
どこに向かおうとしているのかを
俺を信じて欲しい
俺は君のために、二度と世界なんて灼かせない。
だから、君の全てを俺に…

 

この俺にくれーーーッ!

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 新たなる剣。
 新たなるブレイド

 もうそこからのゼノブレイド2は、一直線だった。俺たちは、楽園に行く。

 

これが「僕」のゼノブレイド2だ。

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勝てねえ。

 

いや、マジで勝てないのだ。なんかブレイクが入らんし、全体攻撃が痛い。あと雑魚が湧いてくる。そしてなにより…

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このプロメテウスって技が即死でどうにも突破できない。

 ぱっと考えうる避け方は3つ。

  • 回避アーツを使う
    -しかし回避できるのは操作キャラだけ
  • Lv4必殺技を使う
    -しかし使用にはタイミング及びケージ確保、何より撃てる位置が重要
  • チェインアタックを使う
    -当然ながらチェインアタックゲージが必要

 しかしどーーーにも勝てない。ならばこのプロメテウスを発動させないよう立ち回るしかない。戦っては負け、戦っては負けを繰り返し、様々な事を考えた。

  • ブレイドニアによる回復
    -ヒカリによる各種リキャストの加速、アーツの高速回転に回復を組み合わせる。
  • 各種スイッチ加速
    -残っているアーツ量でブレイドのスイッチを加速するアイテムがあるのでそちらを装備。
  • リキャスト加速
    -ポーチアイテムも更にリキャストを加速させる。
  • トラ&メレフによるタンク2構成
    -何より「仲間に死なれる」のが問題なので、タンクを2人にして盤石の体制とする。トラはトラJDのブレイク性能が高いのでブレイドコンボ面でもおまかせ。
  • キズナ命中やバリア類
    -「ミス」が出るということはアーツゲージの伸びに直結する。長時間戦闘であればあるほどキズナ関係のアクセサリ強い気がする。強い…よね?
  • ベータスコープ+ハナJDでのブレイク加速
    -このぎゅんぎゅんソードが凄い2020
  • 全属性用意と反属性一撃コア
    -俺は割るぞお前

 これでもまだ届かなかった。

 

 

 

 最後の鍵はプネウマだった。
 正直、プネウマの仕様はよく分かっていなかった。攻撃力が高いのは分かっていたが、そのシステムの起動にはパーティゲージが不可欠で、しかも一定時間しか使用できず戻ってしまう。ラストバトルに至るまでほとんど僕は彼女に頼ることがなかった。

 ゲージを溜める。アイオーンの体力を半分まで削った。

 ウォーオブサーヴァント。幾度と叩きのめされたザコ敵が湧く。

 R+X、プネウマへ変身。

 そして+ボタン。
 いつか「STARTボタン」と呼ばれたものを押す。
 チェインアタック、スタート…!

 

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 属性玉が一気に割れ、フルバーストアタックへと移行する。見てるか、メツ。この攻撃が全てだ。積み重ねてきた戦術。共に生きたブレイド達。獲得してきたアイテム。この世界そのもの。誰かから繋がれて、誰かに繋いでいく物語そのものだったんだよ。

 このゲームで、レックスと仲間達が歩いてきた彼方だったんだよ。

 

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 ゼノブレイド2は、本当に不器用なゲームだ。

 こうやって遊んでねって説明も、こうするのが面白いよって誘導も、本当に下手くそで、広大なフィールドとそれ相応の「打ち倒すべき敵」がいる。バラバラな要素達が寄り集まって世界を構成している。時間ばっかりかかるし、超かっこいいカットシーンの後でもやることと言えばオートアタックでペチペチ戦う戦闘だ。物凄くとっつきにくいし、どう歩いていったら最初、僕は分からなかった。

 

 でも、クリアした今、僕は胸を張って言える。

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ありがとう、ゼノブレイド2。
本当に、出会えてよかった。

 

Xenoblade2 (ゼノブレイド2) - Switch

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  • 発売日: 2017/12/01
  • メディア: Video Game
 

 




 

君は「赤い衝撃」こと「全ブロ砲2」を知っているか


【スパロボOGs】 アルトアイゼン全武装

第二次OGのSwitch移植とか無いですかね。そうですか。まあムーン・デュエラーズとか言い出した時点で無理ですよね。って書いたけど本当に音沙汰が無かった。

 

 さて、今回は快適なTwitterライフを過ごすのに便利な

天上天下あのアカウントのフォロワー全員ブロック砲」

が使えなくなったのでその代替アドオン。

名付けて

「全ブロ砲2」

 の使い方についての記事をお送りします。

 

用意するもの

Google Chrome

chrome.google.com

上記のアドオンを使います。

 

 そもそも私が何故全ブロ砲を使うに至ったか、そして何故これをオススメするかをお話しましょう。
 Twitterで政治的発言をするアカウントや迷惑サイトをフォローし拡散するアカウント、デマを振りまくアカウント、転載bot、その他もろもろが私は大嫌いで目に入れるのもうんざりしています。
 そこで思い至ったのは「こんな事をしているアカウントをフォローしている輩を全員ブロックすれば、特定の”界隈”とはもう付き合わなくても良いんじゃないだろうか。そういうサービスを利用しよう」ということでした。
 これは例えば所謂「ファンコミュニティ」でうるさい「信者」と「アンチ」で筆頭のようなアカウントのフォロワーを全部ブロックすれば、少なくともそういう”界隈”が目に入ることは今後少なくなります。また「愚痴アカウント」「裏アカウント」のようなものを作る人々は往々にして相互フォローでのグループを作っているため、それらのフォロワー全てブロックすることで更に快適なTwitter生活をエンジョイすることが出来るでしょう。

 というわけで使い方のご紹介です。

 

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まず、対象とするアカウントのフォロワー欄をChromeで開きます。

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フォロワー欄を右クリックし、「Run Chainblock」のボタンを押します。

上から

  • こいつのフォロワー全ブロ砲
  • こいつがフォローしてるの全ブロ砲
  • こいつと相互フォロワーなアカウント全ブロ砲

と以前の全ブロ砲から機能が向上しています。

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「ククク…お前がフォローしている奴ら以外全員ブロックしてやろうか…」と悪魔の囁きが聞こえるので、OKを押して地獄まで相乗りします。

 あとは放置するだけでモリモリブロックが進みます。どうやらTwitterの仕様上85000アカウントまでが射程距離のようですが、大概の場合はこれでブロックし切れるでしょう。もしこの至福の時をタイムラインを見て過ごしたい場合は別のタブを立ち上げてください。もしくはタブをドラッグして別窓にして何もかも忘れましょう。

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こんな感じで通知が来たら動作完了です。

 

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たっぷりブロック出来ました。

 

youtu.be

実験は成功だ!

 

 

 さて、全ブロ砲によるブロックが完了した後、ChromeからのWeb閲覧がバグって「問題が発生しました」のような画面が出ることがあります。というか私の環境では毎度出ます。だいたいTwitterCookieを全消去すれば直るので、サイト毎のCookie消去アドオンも紹介しておきます。

 

chrome.google.com

 

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 EditThisCookieをTwitterが開いてるタブ上でクリックし、メニューを表示します。とりあえず左上のゴミ箱を押して全消去してからリロードすれば自動でログアウトしますので、再度ログインすれば大体は復旧します。

 お疲れさまでした。これからも界隈をどんどんブロックして快適なTwitter生活を送ってください。

 

以下Q&A

  • 公式アカウントとかブロックすることになるんじゃ…
    A.今時SNS研修等で「反社会的なアカウントや政治的主張の強いアカウントをフォローしたりすると社の見解と捉えられ炎上する恐れがあります」など当然教わっているでしょうし、企業が事業の一環で運営しているアカウントがその程度な訳が無いでしょうから大丈夫ですよアッハッハ。

    ちなみに結構ソシャゲの公式アカウントとかも巻き添えになります。
    どうしても気になるんなら先にフォローしておいてください。

  • 将来的に気の合う人もブロックすることになるんじゃ…
    A.でも今そいつ他人に迷惑かけてる奴をフォローしてんだぞ。

  • 神絵師のイラストが見られなくなるかも…
    A.なので先にフォローしておいてください。全て無慈悲にブロックします。

  • 特定のアカウントをフォローしてる人が全員肯定的って訳では…
    A.ヲチしてる奴も”界隈”に変わりなし。ブロックしておいたほうが良いと思う。

  • 巻き添えがヤバそう…
    A.ちょっとお待ち下さい?あのですね、寧ろそれが主目的ですらあるんですよ。良く考えもせずにそういう”界隈”のアカウントをフォローし、楽しみ、あまつさえ広める事すらやってしまうアカウントから嫌なものが流れてくるからブロックしようとしてるんでしょ?
    「全ブロ砲に巻き添えは存在しない」
    はい、復唱。

  • どういう所で撃つとより効果的ですか?
    A.政治家、活動家、なんかの企業の看板背負ってるのにインターネットレスバトラーとして人気の人、なりきりbot、動物の動画転載bot、サザエbotみたいなの、迷惑サイトのアカウント、メモ帳スクショ4枚でお気持ち表明する人、新聞社やニュースのPostにリプライ飛ばしてる人、ソシャゲの公式アカウントにリプライ飛ばしてる人、特定作品の登場キャラに有名コピペ喋らせてるbot、トゥギャッターのコメント欄でレスバトルしてる人、政権への恨みか陰謀論ばかりつぶやく壊れてしまったフォロワー、自転車でご飯運んでイキってる人、わざわざアカウント名に愚痴とか入れてる人、なんかもうプロフィール欄から愛国心や特定個人への憎しみが溢れている人、〇〇警察っぽい人、未だに「ACの新作が出る」でシメたら面白いと思ってる人、等のフォロワー欄から全ブロ砲を撃つと効果的です。

  • なんで今度はアルトアイゼンなんですか?
    A.アドオン名がRed Blockだし分の悪い賭けは嫌いじゃないから。

  • ブロックしていいですか?
    A.ブロって良いのはブロられる覚悟のある奴だけだってルルーシュが言ってた。

 

当ブログは全ブロ砲を利用するすべての人を応援しています。

 

一緒に使いたいサービス:

twblocker.herokuapp.com

💬114514 とかなってるツイット見たら使いましょう。

pakurimustdie.de0.biz

パクツイしてるキッズをブロるのに有効です。

 

 

第2次スーパーロボット大戦OG COMPLETE BD BOX - PS3

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 おもしろいからジ・インスペクターも観て。